それから数日が経過した、ある日の夕刻── セラフィナたちは、本来の進路から少し外れた位置にある廃村に立ち寄っていた。立ち寄った理由は決して、調査のためなどではない。それには、やむにやまれぬ事情があった。 「……しっかりしろ、セラフィナ」 ぐったりとした様子のセラフィナを抱きかかえ、他の家々と比較すると状態の良い民家の中へと、シェイドは足を踏み入れた。 そのまま彼女をベッド上に横たえると、シェイドは彼女の履いているブーツを脱がし、厚手の白いストッキングに包まれた足裏を軽く手で払いながら、 「身を起こせるか、セラフィナ?」 「……うん。まだ、何とか」 緩慢な動作で身を起こしたのを確認すると、シェイドは外にある馬そりへと急ぎ、包帯と血止め草を鞄に入れ、井戸の水を汲んで、再びセラフィナの待つ民家へと戻った。 鞄から取り出した血止め草の葉を絞り、傷口に塗るための生汁を抽出する。粗方、血止め草の生汁を抽出し終えると、シェイドはベッドへと素早く歩み寄り、努めて穏やかな口調でセラフィナに優しく声を掛けた。 「すまない……上衣を脱いでくれないか、セラフィナ」 「…………」 セラフィナは苦悶の表情を浮かべながら、覚束ない手付きでマントと上衣、そして胸部を覆っている下着を脱ぐ。 上衣の下から露わになったのは、彫像を思わせる美しい身体だった。小振りながらも形の整った乳房、くっきりとした腰のくびれ、やや肉付きが悪かったものの、それでも十二分に魅力的と言えた。白磁を思わせる肌の上を、透き通った冷汗が音もなく伝う様は耽美的でさえあった。 そして、左の乳房の少し上にそれはあった。 ──"聖痕(スティグマータ)"。セラフィナの小さな身体を傷付け、蝕み、呪い、そして苦しめる元凶。正五芒星の形状をした大きな傷が。 夕刻ということもあり、仄かに光を放ちながらスティグマータはその傷口を容赦なく開こうとしていた。 「……塗るぞ、セラフィナ」 やむを得ないとはいえ、彼女の半裸を見てしまったことを心の中で詫びつつ、シェイドは絞りたての血止め草の生汁を慎重な手付きで、彼女の左胸にあるスティグマータにゆっくりと塗り付ける。 「んっ……!!」 セラフィナの顔が、瞬く間に苦痛に歪む。必死に悲鳴を押し殺してはいるものの、かなりの激痛が全身を
Last Updated : 2025-05-11 Read more