セラフィナたちがアッカドに到着してから、早くも数日が経過しようとしていた。 セラフィナは当初の予定通り、アッカド内を歩き回っては養父たる剣聖アレスの痕跡を探していた。 尤も一度だけ、巫女長ラマシュトゥからの招待を受けて精霊教会本部へと赴き、時間の許す限り茶を啜りつつ他愛もない世間話の相手をさせられたりもしたが……。 アレスの人相書を作成し、それを載せて貰えないか地元の新聞と交渉をしてみたり、アッカドと近隣の都市国家を行き来する商人たちの協力を得るべく、商人組合の拠点に足を運ぶなどした。 人々の反応は、実に様々だった。一昨日来やがれと言って取り付く島もない者、快く協力を引き受けてくれる者。酷い者になると、異邦人だという理由で石を投げてくる者さえいた。 それでも、シェヘラザードや彼女の父親の人脈もあり、喜ばしいことに少しずつではあるがアレス捜索に協力する者は増えつつあった。 それと同時に、セラフィナは狂王とされるアッカドの統治者シャフリヤールとの接触も試みていた。こちらは聖教騎士団長レヴィが協力してくれることになり、彼女の名義で連日のように、シャフリヤールの元に面会を求める書状を送り続けている。 アッカド近郊のオアシス都市で行われた、歴史上でも非常に稀なる大虐殺。シャフリヤールはそれに関与しているのかどうか。仮に関与していたとして、その真意は何処にあるのか。直接、彼の口から確かめたいという思いがあった。 そんな、ある日のことだった。 「……ふぅ」 宿の居室へと戻ったセラフィナはブーツを脱ぐと、草臥れ果てた様子でベッドへと俯せに倒れ込み、そのまま横になった。既に陽は西の方に沈み、アッカドには夜の帳が下りつつある。 華奢な膝を抱えながら、何度も何度も小さく溜め息を吐くその姿は、見ていて何処か痛ましい。 連日のようにアッカド内を歩き回ったことで親指の付け根に血豆が生じ、それが知らぬ間に潰れたのだろう。厚手の白いストッキングに包まれた爪先には、じんわりと赤黒い血が滲んでいた。 「……あの人の手掛かりは、残念ながら今日も見つからず。シャフリヤールからの返事の手紙もなし。今日も空振りだよ、マルコシアス」 ベッドの傍に座っているマルコシアスの顎を指先で優しく撫でてやりながら、セラフィナは溜め息混じりにそう呟く。 「……何時に
Terakhir Diperbarui : 2025-06-06 Baca selengkapnya