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意識しないわけない 6

Author: 玄糸雨楽
last update Last Updated: 2025-07-07 16:27:03

もう、花ちゃんの全てが欲しくてたまらない。だって、こんなにも大好きだから。

セツ君の言葉の1つ1つが、痛い。

どうして、ここまで私を好きなのが正直わからない。

人って誰かを好きになったら、こんなにも激しい感情になるんだ。

私には、わからない感情がセツ君の心に宿っている。

私はセツ君に目を合わせないように、唇を見るしかなかった。

すると、セツ君が私に触れようとしてきて、大げさなくらい身体がびくっと、反応してしまった。

胸の鼓動の激しさが、身体中に染み渡るように響いている。

セツ君の骨張った男性らしい指が、私の長い髪に触れるのが感覚で伝わってきて、少しくすぐったい。

「この長い柔らかな髪も、綺麗で透き通ってる瞳も、細くてしなやかな身体も、花ちゃんのなにもかもを僕のものにしてやるって決めたんだよ」

私は恐怖のあまり、どうすることも出来ずにいた。

セツ君をおかしくさせてしまったのは、わたしのせいなのかな。

だとしたら、申し訳ないよ。

「なんで⋯⋯」

セツ君は目を大きく見開いて、驚いているような。一瞬そんなふうに思えたけど、気のせい?

「なんでちょっと泣きそうなの。花ちゃん。僕、ちょっと怖すぎたかな」

続けて「ごめんね」と言ったセツ君の声は、ひたすらに優しかった。

「セツ君ってやっぱり昔と違う」

言うつもりのなかった胸の内がふと、言葉として落ちていく。

セツ君は、そうだね、花ちゃんを好きすぎるからだよと少しだけ笑いながら言った。

「ごめんなさい、私のせいでセツ君は壊れちゃったんだよね」
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