夜なべして書き続けた英雄叙事詩二次創作が、ついにキリの良いところまで書き上がった。 まだ完成には程遠いが、『第一部・完』くらいの完成度にはなったと思う。 この原稿は要塞のメイドたちの間で何度も回し読みされている。彼女たちの意見を取り入れて改稿を何度か行った。 既に手応えはしっかりとある。 この国の女子たちにもBL文化は受け入れられると分かった。であれば、次の段階に移行しよう。 すなわち、BL小説の出版である! この世界の文化レベルは中世どころか古代ローマとかそのへんだ。 だから当然、活版印刷はない。木版印刷すらない。 出回っている書物は全て手書きの写本になる。 そして古代文化の最大の特徴として、書物は全てが巻物なのだ。 冊子ではなく巻物。 紙も羊皮紙や前世の植物紙ではなくて、パピルスになる。 まあ、古代中国などは竹簡・木簡だったというから、それに比べればだいぶマシだろう。 それに巻物は冊子よりも装丁コストが低い。 手作りで冊子の本を作るのは大変だ。ページを整え、綴じて、表表紙と背表紙を作る。その手間はかなりのものになる。 その点、巻物なら紙を継ぎ足して巻けばいいのだから。 とはいえ、パピルスはそれそのものがそこそこお高い。 ましてや人力の写本で複製するのだ。このユピテル帝国において、書物がそれなりに高級品なのはどうしようもないことだった。 普通の平民ではまず買えない。文学好きの貴族やお金持ちであれば、自宅に書庫を持っているそうだが。 私の実家は一応貴族だけど、あいつら本を読むような教養も頭も持っていない。当然、書庫などなかった。あるのはせいぜい、所有農園の帳簿くらいだ。それも使用人に任せっきりで、自分たちは文句を言ってばかりだったっけ。 あの様子じゃたぶん不正な裏帳簿とかがある。まぁそれは私の知ったことじゃない。 とにかく、そういう事情もあって、この国の本屋は前世の感覚で言えば少ない。 けれど存在しないわけではない。帝都まで行けばたくさんの本屋があるし、この辺境の
Last Updated : 2025-05-14 Read more