理玖が報告書をしまうと、間もなくトイレのドアが開いた。未央は青白い顔をしていたが、吐いた後はだいぶ楽になったようで、壁に手をつきながらゆっくりと座り込んだ。「ママ、大丈夫?」息子の心配そうな声に、彼女の目には温かな光が浮かび、その小さな頭をそっと撫でた。「もう大丈夫よ、早く寝なさい」理玖はおとなしく頷き、彼女に問題がないことを確認してから振り返って部屋を出た。出て行く前にドアを閉めることも忘れなかった。未央は彼の気遣いのある小さな行動に、胸が感動でいっぱいになった。何かを思いつくと、彼女は俯いてお腹を撫で、眉間に優しさと慈愛を浮かべた。たとえ父親のケアがなくても、彼女の子供はきっと世界で一番幸せな宝物になるだろう。夜が更けた。未央はベッドに横たわった瞬間、疲労感がすぐに押し寄せてきて、深い眠りに落ちた。翌朝、空がようやく白み始めた頃。理玖は目を覚ますと、少しも眠気がなく、むしろ興奮してそわそわした様子だった。今日することを考えると、彼は母親を起こさず、自分で身支度して服をきちんと着替えた。まだ幼いが、成長は早かった。高級なブルー色のスーツを着た彼のその整った顔立ちには、誰が見ても好意を抱かずにはいられない。理玖は目をくるっと動かし、昨夜の報告書を手に握りしめ、ぴょんぴょんステップしながら下へ向かった。運転手の川島が入口で待っており、彼を見て驚きの色を浮かべた。「理玖坊ちゃん?今日はどうしてこんなに早いのですか?」「とっても大事な用事があってパパに会いに行くの。パパが市中心医院にいるって高橋さんから聞いたから、直接そこに行けばいいんだよ」 川島は頷いた。昨夜、未央からすでに聞いていたので、車のドアを開けてやった。「承知いたしました。坊ちゃんどうぞお乗りください。お送り致します」その頃。もう一方の、ある病室では。雪乃はまだ点滴を受けていて、昨夜の出来事で驚いたため、博人の服を握りしめて放さなかった。「うう……、博人、ごめんなさい、私ってすごく迷惑かけてるよね?でも本当に怖くて……」彼女は目を赤くし、涙が目の中で揺れていたが、頑強に唇を噛んで涙が零れ落ちるのをこらえた。他の男なら、おそらく思わず抱きしめて慰めていただろう。しかし。博人はまるで見ていないかのよ
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