空港の国際線出発ロビーは、人波が絶えなかった。未央は突然現れた旭と、彼の後ろにいる明らかに訓練され凄まじいオーラを放っている黒服のボディガードたちを見て、心の中には警戒と困惑の感情が込み上げてきた。「三条さん」彼女は一歩前に出て、旭と震え上がる本田の間に立ち、冷たい口調で言った。「これはどういう意味ですか?本田は罪を犯した容疑者ですよ。私はもう警察に通報するところなんです」「警察?」旭は眉をつり上げ、口元にからかいを含んだ笑みを浮かべた。「白鳥さんは、警察が到着するまで、彼が本当のことを話すチャンスがまだあると思いますか?それとも、あなた一人で彼を止められる、あるいは知りたい真実を聞き出せると思ってるんですか」彼の言葉は直接に的を射ていて、未央の懸念もついていた。空港は人混みで雑然としており、彼女には確かに本田を一人で止める自信はなく、ましてや彼に事実を自白させることなどなおさらだった。万が一、彼が窮鼠猫を噛むように反撃してきたり、後ろ盾の関係者が知らせを得て口封じでもしようとしたら……結果はどうなるか見え見えなのだ。「あなたは結局どうしたいんですか」未央は眉をひそめ、鋭い目つきで旭を見た。彼女はこの男が理由もなくここに現れるとは信じられず、ましてや彼が単に「話がしたい」だけだとも信じていなかった。「簡単なことですよ」旭は手を広げ、気軽な口調で言った。「私と本田さんの間にも、解決すべき『個人的な因縁』があるんです。私たち協力しませんか。彼の知っていることを全て吐かせると保証しますよ。スクレラがどうやって彼を買収して、どうやって天見製薬を陥れたのかも含めてね。そうすると、あなたの知りたい真実も自然と明らかになるでしょう」彼は少し間を置き、続けて言った。「もちろん、交換条件として、彼が自白した後は、本人は私に渡してもらいますがね」未央は少し呆気に取られた。旭の笑顔は温和だったが、その瞳の奥には疑いようのない強引さと危険が滲んでいた。彼女は知っていた。この男は決して善良な人間ではないと。彼と協力することは、わざと危険な道へ進んで行くことになるかもしれない。しかし……彼女には他の選択肢がまだ残っているだろうか。時が迫っていて、本田が一度飛行機に搭乗して去ってしまえば、再び彼を見つけるのは難しくなるのだ。「どうやってあなたを信じれば
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