「はい、着きましたよぉ」 こちらを振り向いてにっこりとする市川夫人。近くで見ていると確かに響子・理央姉妹のお母さんだなぁって感じる。姉妹に表情がそっくりなのだ。 日暮邸から、きゃぴきゃぴ声が響き渡る車で走る事一時間。途中で一回だけ大きな道に出たけど、それからまたすぐ小道に入り直して林の中を走る事十分。目の前に大きな洋館のような建物が見えてきた。「ここって……」「わぁ……おっきぃ」「お城?」 車を降りながらそれぞれが感想を述べる。それほど大きくてとても日本にいるとは思えない家……ではないな、欧米にでもある様な屋敷が建っている。中世のヨーロッパ風な佇《たたず》まいを持つこの建物は、とても個人で所有できそうなものには見えなかった。――そして気になる事がある……。「この感じは……」「お義兄《にい》ちゃんこれって……」 伊織も感じるようになったみたいだけど、この俺の体が重くなる感覚はこの街に降り立った時から感じてるモノ。それが、ここにきて急に強くなった。近くに影響してるモノがあるのかもしれない。ただ今はそれを探したりするよりも考えなきゃいけないことがある。――そう……。「え~っと、すいません。今日からここに泊まるってことですけど、ご主人はどちらに?」「いないわよぉ」 何ともあっさりに言い放った市川夫人。「いないって……男は俺だけって事ですか!?」「そうですよぉ。あら? あららぁ? なにかまずいことでもあるのかしらぁ?」 荷物運びしてる俺の近くに、市川夫人が凄く楽しそうで面白がっているような表情をしながら体を近づけてきた。「いや、べ、別にないですけど。ちょ、ちょっと近いです!!」「あら、照れちゃってかわいいわねぇ」
Terakhir Diperbarui : 2025-08-08 Baca selengkapnya