All Chapters of 幽霊が見えるからって慣れてるわけじゃない!!: Chapter 111 - Chapter 120

185 Chapters

第100話 もしかして俺の所為かな?

  『あなたは誰? あなたたちは何?』「え?」 自分の間近から声が聞こえたと同時に寒気が襲ってきた。音がしそうなほどにゆっくりと顔を声が聞こえた方へ向けた。『答えてよ……』 ますます寒さが増すと同時に体中から汗が吹き出し、鳥肌が全身にたつ。それでも確認したモノは少年のような恰好をしていた。「お義兄ちゃん!?」 何かを感じたのか、カレン達と話をしていた伊織が走ってきて、俺と|霊《かれ》の間に割って入った。そしてソレと二人で睨みあう形になって沈黙が下りる。『何をしに来たの? ちょっと前にも何人か来たみたいだけど、結局は見つけられなかったし……。ねぇ何をしに来たの?』 霊は俺と伊織を見つめたまま冷たい声色のままで訊ねてくる。 俺と伊織の異変に気付いた三人も近づいてきたが、何も見えていないようでおろおろとするばかり。ただ少し寒気を感じているのか水野さんだけが震えていた。「真司!! 伊織!!」「父さん……」「なんだ!? 来たのか!? 何か言ってるのか!?」 見えていないながらも俺と伊織をかばうようにして背中に隠してくれようとする父さん。「子供が視えるよ。少年みたいだけど……。このコが村上さんが言っていたモノ……」 俺が父さんに視えているモノについて説明しようとすると、「ごう」という音と共に俺たちの周囲の寒気が落ちた。霊《かれ》が圧力を増したのだ。こうなると普通の人ではなかなか動く事は出来なくなる。伊織は動けるだろうが俺たちのさらに後ろに居る二人は無理だろう。特に水野さんは最初に霊が現れた時点で震えていた。寒気を感じるという事は波長が合ってしまう恐れがある。なんとか水野さんの方に影響を行かせないようにと、俺は気づかれないように後ろに下がった。「ごう!!」という音が再び襲い、数歩下がったところまでで足止めを受けた。先ほどよりも更に増した寒気で今度こそ俺の足は停まった。
last updateLast Updated : 2025-08-28
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第101話 あの霊《こ》の名前

  「え~っと……、水野さんもしかしてさっきの……?」 水野さんが小さな声で言った名前らしき単語と、何かを見ていたと思われる表現で先程まで圧をかけていた霊を、彼女は視えていたのではないかという思いが生まれる。伊織もそのことに気付いたのか水野さんの横へと自然と移動した。水野さんの声が小さかった事で、聞き逃さない様にとの思いもあるのだろうけど、非日常を体験したのだからそんな風になってしまうのは仕方ない。「えと……はい。見えました」「やっぱりそうですか」――あの体が震えていたのは視えていたから?「お辛いでしょうな。まぁいつもは見えないものが目の前にいるなんて経験は、そうそうあることじゃないでうすからね。まずは車まで戻りましょう。話はそれから聞くという事で。いいよな真司」 父さんが水野さんを気遣うように俺に反応をうかがう。「勿論だよ。今のままじゃ……水野さんだって混乱しているでしょうし」「す、すいません……」 力ない返事が水野さんから洩れる。「カレン少し水野さんに力を貸してあげてくれ」「オッケー」  素早く伊織とは反対側の水野さんの横まで戻ってきたカレンは、力なく歩こうとする、水野さんに肩を貸すようにして一緒に歩き出した。伊織はそのままの位置で手を取りゆっくりと先に進んでいく。それからはみんなが何も言わず、ただただ足だけを動かしていた。数十分を使い行きとは違う意味で時間がかかりつつも、何とか車までの道を戻ってくることに成功した。水野さんは明らかに疲れが見えるようだが、それでも俺たちに心配をかけまいと無理をして明るく振る舞おうとしていた。「あの……無理はしなくていいんですが……大丈夫ですか?」 車に乗り込んですぐに体調を確認する。「今は……少しは落ち着
last updateLast Updated : 2025-08-29
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第102話 女の子

   そのまま放っておくこともできず、水野さんをカレンの事務所まで送り、そのままカレンも一緒にいるというので二人とはその場で分かれた。次の日はカレンにとっても大事なリハがある。水野さんの状態も心配だが彼女もプロとしての役割もしなければならないので、明日はとても忙しいことになりそうだな。などと広くなった後部座席にて一人考え込む。「ありました。先ほどの話」「うん?」 ずっとケータイで何かを探していた伊織が、ケータイを俺に向けて見せてくる。「清水光ちゃん《・》失踪事件? んん? ちゃん?」「そうだね。光ちゃんは女の子みたいだよ?」 首をかしげる伊織。――はい可愛いのきた!! いや!! そうじゃなくて!! 女の子?「あぁ……思い出した。その事件まだ未解決のやつだったな」 運転しながら父さんが会話に混ざる。「うん、そうみたい。行方が分からなくなってからすぐに捜索したんだけど見付からず、その日のうちに捜索願が出されたんだって。捜査員もかなり出たみたいだけど、結局は今現在も安否は不明の未解決事件になってる」 ケータイに出ている情報を読んでくれる伊織。「どうした真司?」「え?」 父さんがバックミラーから不思議そうな顔で俺の事を覗き込んでいる。その質問を俺は返すことなく、伊織の方に顔を向けた。「伊織は女の子が視えていたのか?」「え?」 俺と伊織はお互いに顔を見合わせた。  次の日の俺は家でゴロゴロしているという予定が壊れ、何故かとある部屋の一室で待たされていた。 本日呼び出され指定された待合場所は、いつものお店ではなくカレンの事務所。バイトの話であり、集ってもらって説明したいとカレンの事務所から連絡が入ったのだ。しかも俺にではなく伊織にである。 何故俺にではないのかというと――。「はいでは、今日からバイトとして働いてもらう方たちの顔合わせと、注意事項などを――」 など
last updateLast Updated : 2025-08-30
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第103話 思いがけない質問

    俺の質問に対してのカレンの返答は、渋い顔だけだった。 自分も詳しくは知らないが、昨日事務所には間違いなく二人で入ったらしい。その後も数時間は姿を確認できたが、次の日、つまり今日になってどこにも見当たらなかったと言っていた。 リハをするにあたって顔合わせと説明という大事な日に、本来であれば仕切る方の人間がいない。事務所側でも近くを探したり、自宅を訪れて確認したようだが、本人の姿は確認できなかったと、セカストの別のメンバーについているマネージャーさんから話が入ったとカレン自体も困惑していた。仕方がないので急遽、自分たちの周りについてもらう人たちだけを集め、カレン達自らが説明する運びにしたそうだ。 こうなってしまうと俺たちにできることは限られてくる。水野さんの行方は事務所の方なり大人の方々に任せ、俺たちはバイトでの事に集中するほかない。ただ,出来うる限りの事はしておきたいので、俺は顔を知っていて動けそうな父さんにだけは一方を入れておいた。警察のチカラを使うのか個人的に捜索してくれるかは分からないが、使える物は親でも使う精神で任せる事にする。  そんな俺の行動を見ていた伊織が、首をかしげて俺の方へと向かってきた。周りではまだ説明を聞き、動きの確認をするための会話が聞こえているが、俺に与えられた仕事はいつものメンバーも大体同じで、聞いていなかった俺が言うのも変だけど理解はした。後はリハに実際に入って確認するだけの状態なので俺と俺の知り合いメンバーだけが手持無沙汰な人として、部屋の隅に移動していた。 それでも動き自体が分からなくなったら聞いて、同様に動けばいい。なんて考えていると声をかけられる。「お義兄ちゃん……」「ん? 伊織か、どうした?」 なにかを言いよどむ伊織。「バイトの件に関しては何とかする。けど、伊織が聞きたいのはその事じゃないんだろ?」「うん……」 伊織の頭にポンと手を置く。払いのけられるかとも思ったが、そのまま視線は俺の顔に向いて
last updateLast Updated : 2025-08-31
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第104話 本人なのか?

    リハに関していうと順調に進んだ。リハは二日間行うという事で本日は、会場内での動きについての確認を行っていた。歌や音響に合わせる事、危機についての調整など細かいことについては次の日に行うので、本日の内容に関しては終了となる。 俺たちバイト組はここで解散となるのだが、俺とメンバーは別室へと連れてこられ、その他のバイトの人たちは各々帰途に就いたリハが終わった事でとりあえずはゆっくりと休みたい思いは無きにしも非ずだが、こうして連れられてきてしまっては、何かあるまで待っているしかない。 と、連れられてきた部屋にある椅子を引き、腰を下ろした。俺に倣えとでもいうように。メンバーは次々に椅子を引き腰を下ろしていく。 連れてきた張本人であるカレンは、俺たちを一室へと誘導するとそのままどこかへと歩いて行った。 俺が心の中でため息をついていると、メンバーが少しずつ話し出した。内容はもちろん今日のリハの事。市川姉妹は何度かライブに足を運んでいるらしく、ライブ的な雰囲気は知っているがこういう裏方になって働くという事は新鮮なようで、普段冷静な理央さんの|饒舌《じょうぜつ》に語っていることに少し驚く。  こうして改めて俺と共に行動を共にするようになったメンバーを見ていると、個性的な性格であることが見て取れる。 理央さんと共に響子さんもライブの良さを相馬さんと日暮さんに布教しているし、日暮さんは話を聞きながら部屋に続く廊下を通る人を気にしている。相馬さんは聞きながらも髪の毛をいじっているのでちょっと飽きているかもだし、伊織は部屋に入ってからカバンからケータイを取り出して何やらポチポチとしている。俺は俺でそんな皆を見ているわけだが。――なんというか……女子率の高さよ……。 いつの間にか女子に囲まれるという現状になっているわけだが、自分から何かをしたわけではないので首をかしげる事しかできない。伊織とカレンがいるのは既に諦めるにしても、いつの間に? という疑問が湧いてくる。――まぁ今はいいか。
last updateLast Updated : 2025-09-01
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第105話 自由人だな

   その人は静かに現れた――。 前日のリハでの注意点などをおさらい的に一通りこなした俺たちは、セカストが歌うステージ横でその姿を静かに見ていた。今は音響機器のセッティングをして調整に入っている。 この後は、セカストの歌う位置やパフォーマンスの出来、MCの内容やタイミングなどを細かに話合いながら詰めていく作業になるらしい。 あらかた組みあがっているセットは、未だにどこかでカンカンなどと音を上げている。作業がまだ残っている部分の仕上げや、微調整をするための人たちが、俺たちの側を行ったり来たり忙しなく動き回っていた。  その中で俺たちは手を出す事は出来ない。周りにいる方々はプロの集団。下手な事すれば大事故につながりかねないのだから当たり前のことではあるが。ステージの横に居るのは、俺と一緒にバイトに入っているメンバーと、このバイトに一緒に着くことになっている人達。SPの代わりにセカストの周りに着くことが仕事の面々だけ。「ご苦労様です……」 その人はそんなセリフと共に俺たちの横にスッと現れた。「水野さん……」 声のした方に顔を向けるとその人物の名前を呼ぶ声が聞こえた。「ご無事だったんですね」 今度は声の主がわかった。響子さんだ。「良かった……」 と理央。 姿を現した水野さんに顔を見たことのある人々は、水野さんを囲うように静かに集まってきた。そしてそのまま昨日の事や体調の事などを話し始めている。その囲いの中には響子さんと理央さんのほかに相馬さんが混ざっている。 一方で俺と伊織はその様子を少し離れたところから眺めていた。「……」「…………」 二人とも何も言わず話す水野さんだけを見つめている。「ねぇ……二人とも行かなくていいの?」 俺た
last updateLast Updated : 2025-09-02
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第106話 生きていて欲しい

  「どうしたいのですか?」 いつも間にか俺の隣に来ていた伊織が彼女に聞いた。『どうしたい……か。もうわかってるでしょ? わたしがこうしてここに来た理由が』」 彼女は怒りの含めた暗い顔をして俺たち二人を見ている。ただ俺にはその顔が寂しそうにも見えた。「やめよう。いや止めてくれ」どうするか考え、ようやく口が動いた。「『なぜ? こうして香ちゃんが会いに来てくれた。そして体を貸してくれたの。こんなチャンスは二度も無いかもしれない!! 今を逃したら……あの子達も』」「「だめ(だ)!!」」 ここ最近はないであろう大きな声を上げた。伊織と声が重なったが。伊織は俺の顔を見る。ここから先は俺が話せという事だろう。 部屋につながる廊下からはバタバタと走って近づいてくる音が聞こえる。  足音は部屋の入り口で止まった。そちらに視線を向けると父さんの姿を確認できた。その後ろには事務所のスタッフと思わしき人と共に、もう一人の顔なじみである村上さんの姿も確認できた。視線が合った父さんが無言でうなずく。俺もうなずき返した。――わかったよ……。「やめてくれ。君がすることに水野さんを巻き込むな」「『なぜ? 香ちゃんなら……』」「いやダメだ。今の君がしたことの責任を水野さんに押しつけるのか?」「『ッ!?』」「そして逃げるのか? 君を……いや、君達の人生を奪った犯人の様に」 俺の話を聞いた彼女はビクッと身体を震わせる。「『で、でも……』」「そして君は……君たちは向こうに行ってしまう。自分たちのやったことの責任を……まだ長く人生が続く水野さんに押しつけたままで」「『………&helli
last updateLast Updated : 2025-09-03
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第107話 笑ってんのかよ!!

   待ちに待ったライブの当日。朝早くからファンが列を作り、会場入り口にてものすごい雰囲気を作り出していた。 バイトの本番当日になっても気にしていなかった事柄の一つが、ファンの数という暴力だった。事務所からの送迎にて会場入りした俺たちメンバーは、その凄さに「うっ」っと息をのんだ。――やばいなこれは。あいつらって思っていた以上に人気なんだな……。 バスが通るたびにこちらに向けて声を上げるファン、セカストメンバーではないと分かっては落胆するファンという、道を通るたびに繰り返されて行く風景は、俺の見る眼を少しだけ改めさせるには十分なものだった。「カレンさん達ってやっぱりすごいね!!」 俺の隣であり、窓際に座っていた伊織は、ファンの行動を見るたびに興奮していて、そんな言葉を発していた。――そのことに関して否定しないよ。これを見ちゃったらな。  隣ではしゃぐ伊織は年相応に可愛らしかった。  時を同じくして、場所は父さん達が居る場所での事――。「本当にここに……?」 俺は冗談だよな? という感情を隠せないまま彼女へ質問した。「『そうよ? やっぱり大人って信じてくれないのね』」 ちょっとすねたような言葉で返ってくる声は重なっている。「慎吾、清水さん……いや、水野さんが言うんだから疑うな」 背中をバンバン叩きながら声をかける村上。「いや、それを疑っているわけじゃないんだ。わかるだろ?」 俺は目の前に生えている、一本の大きなモミジの木を見上げていた。俺につられるように、一緒にいた村上と同僚が同じ木を見上げる。「『さぁ、切っちゃって!!』」 あどけなさと、おとなしそうな声がまたも重なった。彼女に視線を送ると俺たちに向けてとても無邪気な笑顔を向けていた。  場所は戻ってライブ会場の○○アリー
last updateLast Updated : 2025-09-04
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第108話 そのままでいてね

   セカストのメンバーが息を切らせつつ戻ってくる姿が見える。みんなで顔を見合わせそちらに向かう。最後の仕事が待っているから――。「さぁ!! これがほんとに……ほんとう~に最後の曲になるよぉ~!!」 ステージ上での元気な声マイクを通して会場中に木霊する。声の主はカレンだ。その言葉を合図にセカストメンバーは所定の位置に着く。静かにベースラインが流れ、ピアノがその後を追い、ギターが旋律を奏で始め、ドラムがテンポを刻む。この日最後の楽曲が幕を開けた。 そのステージ横では慌ただしく次に向けた忙しなさにみんなが忙殺されていた。ライブはこれで終わりになるが、セカストメンバーのアフターケアなどの仕事はまだ残っている。そこまでが俺たちの仕事。だから最後の曲が流れているからと言って気を抜いているわけにはいかない。その合間にチラッとステージをうかがう。 ステージ上のカレンは、いつも側に居る日比野カレンではなく、ちゃんとアイドルしたカレンがそこにいた。さすがだと思える程にその姿は輝いていた。  結果的な事を言うとライブは無事何事もなく終わった。 終ったのだから、俺たちは帰途についているのだろうと思われるかもしれないが、なぜか俺たちいつものメンバーはライブ会場である○○アリーナの、窓が大きくはめられている一室へと連れてこられている。 理由は分からないが、もしかしたら水野さんの件かもしれない、と思いつつバイトのお土産としてもらったセカストグッズを皆でシェアしていた。事務所の人が誰もいない一室は、この日まで少しピリッとしていた空気を、俺たちだけの柔らかな空気感で満たしていた。「お待たせ!!」 その後数十分の間を開けて、バーン!! という勢いのいた音と共にドアを開け、セカストメンバー全員が入ってきた。しかも先程衣装を着替えるために控室に戻ったはずの姿は、また新たなステージ衣装を纏っていた。――なんだ? 何が始まる? カレンに視線を向けると、こくんと一つ頷くだけ。そして――。 窓の外にドドーン!! という大きな音
last updateLast Updated : 2025-09-05
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第109話 部長になってるわよ?

   一年前――。  誰も住む事の無くなってから久しい一つの村に、若者たちのグループが立ち寄った。もちろん彼らは道に迷ってたどり着いたわけではなく、その村に行くことが目的。 俗に言われるところの廃墟を好む者たち。そしてこの村はいわくつきの場所で有名なところ。好奇心をくすぐるには充分だった。メンバーは村にたどり着いた時は当初八人だった。これは後にこのグループの子が証言している。 最初は好奇心により家屋などを見て回ったり、入って確認したりしていた。事態は二日目から変わり始める。 グループ内で病気が発生し、二人が倒れその日のうちに病院へと運ばれたが後に亡くなった。三日目今度はグループ内でもリーダーとして管理。運営・指揮していた子が原因不明の頭痛に襲われ、三日後にその村の中で息を引き取った。 残った五人は気味が悪くなりその村から脱出を決意する。それが入村から一週間後の事。 初めは確かに五人で一緒に出たはずだった。 気が付くと一人が消え、もう一人が見当たらなくなり、隣の村にたどり着いた時には意識の混濁《こんだく》した少女と、衣服がボロボロになった少年の二人だけになっていた。 この事はすぐに知らせが入り、消息の立った他のメンバーと村で亡くなたリーダーの遺体を回収するための組織が結成され、大人数での捜索になった。 後にニュースでも流れたこの事件。結局ご遺体も見つからず、消息もつかめないまま今まで時間だけが経過していた。 今でも続けられている捜索でも見付かってはいない――    じりりりりりり!! ベッドの横で騒音をまき散らしてるやつの頭をゴスッと叩いてもう一度布団にくるまる。この時間が至福の時。 こんこん 時計でも見てるんじゃないかってくらい正確に俺の起床セット時間に叩かれる部屋のドア。「お義兄《にい》ちゃん!! もう起きないと遅刻するよ!!」 聞きなれた義妹《いもうと》の伊織の声も今日は少し本気モ
last updateLast Updated : 2025-09-06
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