「珍しいな藤堂。お前が俺に頼み事してくるなんて」「ああ。本当言うと頼みたくはねぇんだが……ウチの署員じゃ信用できんから仕方なくだ」「ほう……。では俺は信用していると」「仕方なくだって言ってんだろ!! 耳ついてねぇのか!!」 車の後部座席でお互い前を向きつつ俺と言いあっているこいつは結城哲平《ゆうきてっぺい》。 なんと警視庁の捜査員である。大学の同期ってだけで仲良くはないんだが、こういう時は何かと動いてくれたりとなかなか頼れるやつで助かっている。しかもなぜか所轄の俺や村上の事を気にかけてくれているようで、今まで頼んだことは断られたことを数える方が早い。 それに今回の頼み事は内容が内容なだけに、ウチの所轄内はもちろん近くの所轄の人間でさえ頼み込めるだけの適合者がいないのが実情。――背に腹は代えられないってとこかな。「で、要するにお前のところの課長を探ればいいのか?」「そうだ。頼めるか?」「……上げてもいいのか?」「……時と場合によってはな」 少し長い沈黙が車内に落ちる。「いいだろう」「本当か!?」「条件がある」 こいつに頼みごとをするといつもこうなのである。だから頼み事はあまりしたくないのだが、こいつが見返りに求めて来るもののほとんどは、ちょっと苦労するくらいで達成できるものばかり。だからと言って好き好んでやりたいやけではない。「なんだよ……めんどくさいのは無しだぞ。それと所轄の俺達に出来る範囲の事なら聞いてやるよ」「この一件がかたずいたら……お前結婚しろ」 コイツから発せられるとは予想していなかった言葉を聞いて固まる。改めて説明することもないだろうけど、俺はこいつに何も話してはいない。もちろん何もと言う件は柏木さん親娘の事だが、こいつがその事を指して結婚しろとか言ってるならとてつ
Terakhir Diperbarui : 2025-07-19 Baca selengkapnya