時間が経つのは次早いもので、夏休みに入って初めての金曜日。 俺と伊織は一足先に〇〇市へと来ていた。ほとんど外出することのない俺にとってはかなりの長旅に感じた。待ち合わせの駅へと到着して頃には、暑さと少し疲れを感じて体が重く感じた。そもそもなぜ金曜日から来ることになったかというと。「あ、いたいた!!」「相馬さんお久しぶりです」「あらぁ~、相変わらず伊織ちゃんはかわいいねぇ~」「きゃぁ!」 どこに行っても伊織は人気だという事を改めて思い知らされる。抱き合う二人を見ながらしみじみ思う。「わざわざありがとう藤堂クン、伊織ちゃん」「いやいや、こちらこ日暮さんごめんね、義妹《いもうと》まで連れてきちゃって」 日暮さんは目を細めながら首を横に振る。「大丈夫です。あ、今日と明日の宿泊場所は確保しておきましたので安心してくださいね」「あ、ありがとう」「こっちよ」って手招きされてそちらに荷物を持って向かう。 相馬さんと伊織がまだじゃれあってるから伊織の分も一緒なので結構な荷物量になる。こう言っちゃなんだが、俺もそれなりに筋力はある方だけど結構プルプルと腕が震えてるのは何故だろう?――伊織さん? どうしてこんなに荷物が重いのかな? そう日暮さんの参加するお祭りが土曜日からで、土曜日はとても抜け出して迎えに行けないとのことで、俺と伊織だけが前ノリする事になったのだ。 ちなみにカレンと市川姉妹はまっすぐ別荘に土曜日から向かうらしい。そして明日合流してそのままみんなで別荘に泊まるという計画に変更された。もちろん俺の意見が採用されることなく予定は着々と進められていた。しかしこの体の重さは……。「あの車に乗ってください」 日暮さんが指したのは少し大きめの車で、運転席には男性の姿がある。 コンコン「お父さん、着いたわよ」 窓ガラスをたたきながらそう合図すると、男性が車から降りてきた。メガネをかけたすごく優しそうな眼を持った方
Last Updated : 2025-07-29 Read more