「せ、千夜……」「どうして……あなたが……?」 登場したモノに俺と伊織は言葉を失う。正体を知っているが故の怖れと、前にこいつに会った時の事が思いだされて何とも言えない心情が湧いてきた。『何故って……司織《しおり》さんに……あ、いや真司君のお母さんにお願いされたのですよ。……無理やりね』 千夜が言葉尻を小さくしながらここに来た理由を話し始めた。因みにだが司織というのが母さんの名前だ。『ちょっと!! ちゃんとお願いしたでしょ!! 失礼なこと言わないでよ!!』 ぷりぷりと千夜に詰め寄っていく母さん。そしてどうにか押しとどめようとする千夜。まるで何かのコントを見せられている気分だ。――何だこれ? どうやら伊織も同じような感想を持ったようで、俺の方に顔を向けて明らかに呆れた顔をしていた。「そ、それで? 千夜は話があるんだろ?」『そ、そうなんですよ!! あ、ちょっと司織さん放して!! 消えちゃうから放してください!!』 母さんから掴まれていた腕を振り払うようにして側まで寄ってきて、俺たちの前にちょこんと座る。もちろん床に座っているわけではなく、正座の姿勢で浮いているのだが。 そんな俺たちの事を呆気にとられた顔をしながらカレンが見つめる。視線を感じてカレンの方へ顔を向けると、アゴをくいっとしただけで「話して」というリアクションをされたんだと悟る。 「あぁ~っと……カレン。今、母さんが千夜を連れてここに来てる」「違うわよ!! シンジ君のお母さんの名前って司織さんていうのね!?」――え!? そこ!? カレンの言葉は予想外で、母さんの名前の事が気になったらしい。そういえば千夜の声はカレンとかみんなにも聞こえるんだったな。「あれ? そういえば言ってなかった…&h
Última atualização : 2025-09-17 Ler mais