All Chapters of 幽霊が見えるからって慣れてるわけじゃない!!: Chapter 121 - Chapter 130

210 Chapters

第110話 オッケー出たよ

    キーンコーンカーンコーン―― なり始めた予鈴と同時に生徒が廊下に出始める。 体育館にて始まる始業式に向かうためだ。クラスの違う日暮さんに、今日の放課後話し合う事を確認して自分のクラスに合流するため、用紙を折りたたんでポケットにしまって足早に歩き出した。――なんだか始業初日からめんどくさいことに巻き込まれる感じ。「はぁぁ~」 大きなため息が自然と漏れていた。 何という事はないただ長いだけの始業式の間に俺は考えていた。 朝の出来事の事だけど、正直に言うとメンドクサイという気持ちとやってみたいという気持ちの半々なのだ。今までの学生生活の中で部活というものに入ったことが無い。心が惹かれてしまっていることも事実。でも入ったら入ったでメンバーと上手くやって行けるのかって事が気がかりでもある。でも迷ってる原因の一つは部活名にある。 ポケットの中に入ってる紙を取り出して目を通すと[心霊研究部]と書いてある。間違いなく自分のチカラを見越したものになっている。何より驚くのはそのメンバーの名前だ。自分と相馬・日暮というこの学校の人物なのは当たり前だけど、そこにはカレンと響子・理央の名前まである。――これで通そうとする相馬さんが凄いと思う。 なんてことを考えてたら式はあっという間に終わっていた。教室に戻る俺の足取りは重いまま体育館を後にした。 「で!? どういう事か説明してもらおうかな?」 その言葉と共に始まった小さな会議。と、言ってもその場にいるのは俺と相馬さんと日暮さんとカレンだけなんだけ。学校の先生に名前を使用した紙を提出した事で、まったく無関係という訳にもいかずとりあえずカレンにだけ来てもらって話をすることになった。場所はもちろんいつものファーストフード店である。「それで? 夢乃どういうことなの? 部活創るなんて聞いてなかったけど?」「あはははは!! ごめんね!! 夏休み前のこともあったし、考えてたんだよねぇ……。私た
last updateLast Updated : 2025-09-07
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第111話 カレンちゃん凄い!!

  「それで? この部活は何をするわけ?」 部活動を開始した俺達はようやく学校の隅にある暗い部室として提供してもらえるようになったわけだけど、やらなきゃいけない事がある。部活の顧問の先生を見つける事と、これからの活動をどうして行くかを決める事。つまりは何も決まっていないのだ。「それにしても何もない部屋ねぇ」「いいんじゃない? 無いもない所から作って行くって初めてだからドキドキしてきた!!」「ちょっと!! あんた達聞いてる!? せっかく集まったんだから考えようよ!!」 今日から活動を開始するにあたって前もって連絡をしておいたカレンと市川姉妹は、初めて入る学校の中で少し浮かれているようだ。その中でもカレンが真面目に姉妹をこちら側に引き戻そうとしていることに驚く。「はいはぁ~い!! これから説明するね!! まずこの部は幽霊を初めとする心霊現象や怪奇現象、不思議な話なんかをみんなで解決したり考えたり情報持ち寄ったりする部だよ!!」「「「おおう!!」」」 元気にピースしながら宣言する相馬さんと拍手する日暮さん及び市川姉妹。「心霊研究部かぁ……」「気が重いわね」 狭いながら、長机が一つとみんなが座れるだけの椅子はある部屋で俺は一人机に伏せたままため息をついた。 カレンもその隣で足を組み腕を組みながら大きくため息をついている。「でね!! もう一番初めにやろうかなぁって思ってる事があるんだ!!」「もう!?」「そうだよ!! もうやるんだよ!!」「それってもちろん……」「もちろん幽霊関係かな!?」「はぁ~」――俺はそういう類は好きじゃないって言ってるんだけどなぁ。「それで? それってどんなことなの?」「ちょっと待ってね……あ、あったあった!!」 日暮さんからの質問に顔をぱぁっと明るくして相馬さんが自分のカバンへと走って向かい、中をガサゴソとかき
last updateLast Updated : 2025-09-08
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第112話 変わったわよ

    二日後―― 授業が終わった放課後、部室に集まったメンバー。なんとこの日はフルメンバーが顔を合わせている。 学校が違うので毎回カレンと市川姉妹はキョロキョロしながら座ってる。学校が違うと言えば、見覚えのある顔が二人見えるんだけど……。「伊織ちゃん今日はカレシもいっしょなんだねぇ」「か!! カレシじゃありませんよ!!」「またまたぁ」「いい加減覚えてください!! ただの同級生ですぅ!!」 すでに響子さんと理央さんに構われて取り乱す我が義妹と――「お、お兄さん!! 今回はどんな事件ですか!? ぼ、僕、今回は絶対に役に立って見せますから!!」「まぁ……程々にな……」 俺にくっついて離れない伊織の同級生の大野君。男が俺しか居なかったから参加は嬉しいんだけど、ちょっとめんどくさい。「あの……みんな盛り上がってるところ悪いけど……そろそろ調べた事話してくれないかな?」「おっけー!!」「私からね」「ちょっと私達も調べてきたんだよ!!」「やれやれ……」――部活ってこんなものなのかなぁ。どこにも所属した事の無い俺には分かんないけど……。「とりあえず……時計回りで順番に話してくれるかな?」「ソレいいわね!」「りょうーかい」「えと……じゃぁ……日暮さんからお願いするよ」「え!? 私から!?」 名前を呼ばれてビクッと身体を震わせて驚いている。部屋の中の視線が一斉に彼女に集まる。ワタワタしながらも隣に座る相馬と共にノートを出したりペンを出したりと準備が進む。「え~っと……夢乃と調べてきたんだけど&hell
last updateLast Updated : 2025-09-09
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第113話 先生と対面で

  俺は今職員室に来ている――。 前日決まった俺の担当、勝手に決まったようなものだけど、話を聞いておきたいという事は思っていたし、ちょうどいい。しかし職員室っていうのがどうも慣れない。 用事があって自ら足を運んだとはいえ、一人で座っていると何か悪いことをして、怒られているような感じがする。今回は決して怒られに来たわけでは無い。ないけど、横を通ったりする先生方に見られるとなぜか縮こまってしまうのは何故だろう?「藤堂君お待たせして悪いわね」「いえいえ。こちらから突然お伺いしているんですから気にしないでください」 心細くなり始めた時、前から現れた女性の先生が声をかけてくれた。それが自分の待っている平先生だ。「う~ん。ここじゃアレだから会議室にいこうか……」「あ、そうですね……」 ようやく自分の席に戻ってきたはずの先生は座ることなく、その場を離れ壁に掛けられたカギを握ると俺に「行くわよ」っていうような顔を向けるとそのまま職員室の出入り口へ向かって歩き出した。 自分も慌ててその後を追いかける。出入り口で中を向いて一礼して廊下に向き直った時にはすでに平先生は結構先を歩いていた。走って追いかけたいところだけどそこは職員室の前。「走るな!!」って怒られたくないのでなるべく速足で追いかける。  ようやく追いついたと思った時には先に歩いていた先生が止まって振り返るところだった。掛かっているプレートには第一会議室と書いてある。職員室から校長室を挟んで二クラス分くらい離れた場所にその会議室はある。小さいもので主に面談に使われていると先に入った先生から説明された。 面談用の部屋ってだけあって机は長机一つ。椅子も折りたたまれて壁に立てかけられてるけどそんなに多くはない。  その中から二つを先生が持ってきて、机に向かい合うように開いて置いた。そのまま平先生は一つに腰を下ろして何やら持ってきていた書類に目を落とす。 会議室の入り口に立ったままそれまでの流れるような行動を見ていた俺に顔を向けて微笑むと、向かい
last updateLast Updated : 2025-09-10
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第114話 藤堂?

   「……」「先生……あの、ノックされてますけど……」 話しかけても返事がない。仕方なくドアのところに行こうかと腰を上げようとした時、先生が立ち上がった。そのまま何も言わずにドアへと向かいその前で立ち止まる。「はい……」「あ、あの、一年の相馬夢乃です。職員室に行ったらここじゃないかと言われまして」  ガチャ  無言で先生がドアを開けると、そこに相馬さんが立っているのが見えた。その横にも誰か経っているようだけど、自分の場所からは良く見えなかった。「相馬さん。何か用ですか?」 声を出した先生は、先ほどまでの先生の声とは明らかに別人のようにひどく暗く、冷たいような感じがした。「すいませんお話し中に。えと、もう一人お話を聞きたいって人かいるのでお連れしたんですけど」 先生の声に少し驚いたように相馬さんが返す。「もう一人?」「は、初めまして。私は藤堂伊織と申します」「藤堂……?」 ドアの向こうから聞こえる小さいながら聞きなれた声。座ていた椅子から飛び上るように腰を上げる。  ガタタッ 勢いがつきすぎて机にぶつけてしまう。「いてて!」 その音に驚いたのか先生が振り向いた。その顔は先ほどの暗い表情ではなくいつもの先生のように見えた。――良かった。さっきとは違う。「藤堂君大丈夫? 藤堂……?」 俺の顔と廊下の声の主の方へと交互に見比べる先生。「あ、はい大丈夫です。それにそこに居るのは……」「妹です」 相馬さんと入れ替わったのかドアの向こう側にはいつも見ている姿が見えた。――何だろう。姿を見ただけなのにホッとする。「え~と&hel
last updateLast Updated : 2025-09-11
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第115話 条件があります

  「ご、ごめんなさい!! その、そういう深いことまで聞くつもりはなかったんですけどね」 下を向いたままでそんな事を言う先生の声はなんだか慌てているようで少し可笑しかった。「大丈夫ですよ……。俺も妹もすでに知っている事ですし。あれ? でも確か家庭調査票か何かに書いてあるんじゃないんですか?」「いえいえそこまでは……妹さんがいるという事は知っていましたけど、そのような事情までは書いていないのですよ。今は先生方も深い事情がある場合以外は家庭の中にまではなかなか踏み込まないようになっていますからね……」 となりに座る伊織がソノ言葉を聞き逃さなかった。「先生……以前にも深い事情が有る家庭に関わり合ってますよね? それが鈴城さん……間違いありませんか?」――初めて会う大人の人なのにすげぇなぁ……。 先生に伊織が話を振っている間、その事に感心していた俺のわき腹に伊織が軽めに肘打ちしてきた。視線を横に振ると伊織の目線が「お義兄《にい》ちゃん今よ」って言ってるみたいで、慌ててその言葉尻を思い出しながら考える。 先生は何も言葉を発することなくただ下を向いているだけ。「俺達は……俺達は先生や鈴城さんを助けたいと思っているんです」「え!? 助け……る?」「「はい」」 少しだけ顔を上げた先生の目が大きく見開いていた。「で、出来るわけがないわ!! だって……鈴城さんはもう……」 両肩を自分で抱きしめるようにガタガタと震えだす先生。「そのためには……先生のチカラが必要なんです。協力していただけませんか?」「そ、それは……」 クチをギュッと結び険しい表情をする。――これは&
last updateLast Updated : 2025-09-12
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第116話 事件の始まり

  「条件があります!! 先生顧問になってください!!」 相馬さんの言葉で部屋中が固まっていた。一番驚いていたのは平先生だと思う。助けたいからと言っていたことら側に駆け込んできたと思ったら、かけられた言葉がそれである。――アホか!!  正直に言うとみんなそんな顔をしていた。言葉を発した本人はまったく意にも介していないみたいで、それ以上に腰に手を置き、先生の方をビシッと指さして「いい事言った!!」みたいな自慢げな雰囲気を出していた。――若干鼻息も荒そうだけど大丈夫かな……?「え……と、相馬さんその……顧問?」 入り口で戸惑っていた先生がようやく少しずつ正気になりつつあるようで、頭に思い浮かんでいるであろう疑問が口から発せられた。 バタン 背後で突然鳴った音に先生がビクッと身震いする。相馬さんとの一連のやり取りで固まって行ったみんなの中で一人冷静だった伊織が、開けっ放しになっていたドアを閉めてくれたのだ。「外に聞かせる様なお話ではないので閉めました」 皆に笑顔を見せながら元の座っていた椅子へと歩いて行く伊織。「あ、あの……それで顧問とは何の事かしら?」「あぁ……」 正気に戻った先生から再度の疑問が発する。「それはね先生!! この事を請け負う条件としてフgむm……」 勢いよく話出した相馬さんのクチを塞いだ日暮さん。それを不当だと言うような態度で逃れようとする相馬さん。――うん。日暮さんグッジョブ!!「それはですね……この件は先生とも関わりのある事なので、ウチの活動内容を直に見てもらいそのうえで現在不在の顧問の先生になって頂けないか……という事です……」 遠慮がちな小さな声で説明する俺。
last updateLast Updated : 2025-09-13
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第117話 繋がる決意

  「わ、私は……誰かしら……?」  その場にいたみんなが凍り付いた。ほんの少し前まで元気に笑っていた相馬さんが……いや、相馬さんだった人が今は別人の顔になっている。「ちょ、ちょっと夢乃何言ってるのよ!!」 日暮さんが相馬さんの目の前に立ちゆさゆさと相馬さんの体を前後に揺さぶっている。しかし相馬さんの目は何処かうつろで、焦点が合っておらず日暮さんの声に反応することが無い。その代わりに……「私は……変わる……誰にでもなれる……ふふふ……」 相馬さんは誰に言う訳でもなく独り言のようにつぶやいている。 この状況に一人だけ驚いているというよりもガタガタと身体を震わせて恐怖に顔を引きつらせ涙を流している人。「せ、先生!! 平先生!! さっきの……あの時と同じってどういうことですか!?」  俺の問いかけにも顔を左右に振っていやいやするように泣き続ける先生。その口から言葉が出てくることは無い。『あらら……夢乃ちゃん……憑《つ》かれちゃったわねぇ……』 困って固まった俺の隣で聞きなれた声がする「か、母さん!?」「え!?」 俺の声に反応したのは伊織。すぐに俺の方に視線だけを向けると目を大きく見開いた。「どういうこと? 相馬さんは何かに取り憑かれたって事なの?」『……』「母さん?」 俺の質問に応えることなく、アゴに手を乗せ考え込む母さん。『真司……とにかく電話に出なさい』「え!?」『先ほどからカレンさんが呼んでいるわよ?』 ハッとして手に
last updateLast Updated : 2025-09-14
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第118話 どうしてここに?

  「お義兄《にい》ちゃん。ちょっと見てもらえる?」「ん~?」 学校から戻った俺と伊織は夕飯を食べ、お風呂に入った後で今日学校であった出来事を二人で振り返りながら俺の部屋で調べ物をしていた。 俺がパソコンの前に座ってネットを使いながら情報を集め、伊織はクッションを敷いて床に座ってスマートホンを駆使《くし》し調べ物をしている。 因みに幽霊《ゆうれい》母さんもいるにはいるけど、伊織と同時に入って来てから言葉を発することしない。代わりに俺と向き合うように座ったままで頬《ほほ》に手を当てずっと何かを考えているようだ。 伊織の手に持たれたスマートホンにはある動画が流れていた。椅子の向きをクルっと回りながら伊織のいる方へ変える。スッと差しだされたスマートホンに向けて顔を向けた。そこに映し出された映像には一人の少女、女子高生だと思われる子が自宅で撮ったと思われる動画が流れていた。伊織が素早く再生を中断し最初に戻す。伊織の顔の横に自分の顔を近づけつつ、その画面を見始めた。 動画は自宅の居間で撮っているようで周りにはソファーやテレビ、母親のような後ろ姿も見える。仲良く話している親子の様子に不審な個所は見当たらない。「なんだ? この映像がどうした?」 俺はスマートホンから顔を上げて伊織の顔を見ながら質問する。「問題はこの先だよ……」 暗い顔をした伊織の声を訝《いぶか》し気《げ》に思いながらも、また画面をのぞき込むように下を向く。 場面は切り替わっていて、今度は録画のまま階段を静かに登って行く。聞こえてくるのは階段に足を下ろすときのかすかな音だけ。そのまま無言の動画は続きやがて自分の部屋と思わしきドアの前で立ち止まった。静かにそのドアを開ける――。『ちょっと!! 私の顔を返して!!』 部屋の奥にもう一人、同じ制服を着た女の子がいて、部屋に入るなり声を荒げて叫んだ。『シー!! その顔……見られたくないでしょ?』 バタンという音を立てながらドアが閉まる
last updateLast Updated : 2025-09-15
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第119話 再び

   母さんの言う――。『ちょっと待ってなさい』 という言葉をそのまま信頼するほど俺は出来た息子ではない。幽霊《ゆうれい》な二人と話したこの日はこのまま自分たちの部屋で調べ物をするという事で伊織《いおり》は部屋へ戻って行った。 俺と伊織はその事だけは共有できていたので、それからも自分たちでできる範囲でインターネットを駆使しながらそれらしい所に聞いたりと動き回った。しかし、そのまま何も進展がなく一週間が過ぎようとしていた。「ねぇ……」「何だよ?」 俺の部屋には、一見すると今世間を騒がせているアイドルとは見えない様に、髪を三つ編みにして両側へ流し、赤いメガネで変装《へんそう》したカレンがクッションを敷いて自分の高校の制服を着たまま座っていた。片手には注文するときにしたを噛みそうなほどトッピングした某《ぼう》チェーンのコーヒーを持っている。 一方俺はパソコンの前でコーヒーをすすりながら画面を見ていた。伊織も俺の部屋にいてベッドに腰を下ろしている。伊織は落としたりこぼしたりすることを警戒《けいかい》したのかコーヒーを床に置いている。「せっかく来たのにいつまでパソコンとにらめっこしているのよ? それに……」カレンの不満のこもった声が聞こえてくる。「それに?」 調べていたそれらしいものを見つけた俺は、まったくカレンの方を見ていない。「どうして伊織ちゃんがいるのよ……」 明らかに不満を漏らすカレン。「どうしてって……義妹《いもおうと》だし?」「だしって……」――何か問題でもあるのな?「えっと……お義兄《にい》ちゃんが変な事をしないようにです!!」力強い伊織の声が部屋に響《ひび》いた。「変な事って……伊織ちゃんはシンジ君の事信じてないんだ?」「そんな事はありませ
last updateLast Updated : 2025-09-16
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