憎いと思ったことがある。 でも手を出すほどの勇気はない。 だから他人《ひと》からみたら、私はただの弱虫でしかない。力の無いモノは何もできない世界。失う自我と失う自信。それが続くと人間《ひと》は簡単に壊れてしまう。 私は今日も耐えている。たとえ何を言われても。たとえ体に傷ができても。たとえ助けが来なくても。 今までも、これからも、私は私一人しかいない。 でもやられたことは覚えてる。言われたことは覚えてる。この感情が無くなったとき、私は深い闇の中に囚われる……。 場所は変わってカレンの所属事務所の中――「えぇ~っと、初めまして……いいのかな?」「いいんじゃない? この体でこの姿の時に会うのは初めてなんだから」 小さな音楽レーベルの入るとある雑居ビル、その会議室にこの付近ではお嬢様学校として知られている有名な高校の制服を着た、いかにもお嬢様してますって感じの娘《こ》が俺とテーブルをはさんで向かい合うように座っている。 とりあえず、説明だけしちゃうと、俺はある能力を持っていたおかげで本来なら関わることがないであろう世界のこの娘と出会い、事件に巻き込まれ何とか大人の協力のもと解決することができた。その事件において被害者になってしまったのが目の前に座っている娘なんだけど、この娘を形式的には俺が助けた感じになっている。 それからは高校進学とかいろいろあって会えなかったんだけど、この娘が突然やってきてここに来いって呼び出されたわけ。なんだけど……。 ――なんか、機嫌悪くないすっかね? あれ? 俺が助けられたんだっけ?「えと、日比野さん?」「いまさらでしょ? カレンでいいわよ!!」「あ、はい」 ていうかさ、さっきから壁の方ばかり向いてるけど、俺って何かしたっけ? それにさっきから反対の壁際の方でドアからチラチラと見られてんのも気になるしさ。ちょっと以前に見かけた娘とかもいるけど&
Terakhir Diperbarui : 2025-05-20 Baca selengkapnya