「ガネーシャの妹への虐待は目に余るものがある。私はここに、ガネーシャ・ダント・フォクステリアとの婚約を破棄し、ダリア・ダント・フォクステリアと婚約する事を宣言する!」 国王や王族も出席しているパーティーで衆目が集まる中、王太子のウィリード殿下による宣言は雷のように轟いた。 「そのような事実はございませんし、わたくしは潔白ですわ。──つまり、王太子殿下は国を背負う身でありながら、私欲を優先なさると仰るのですね。わたくしが王太子妃教育を受けている間、逢瀬を重ねて享楽にふけっていた事実は皆さまご存知でしょうに」 私は悠然と構えて言い返した。この日の為に全て準備してきたのよ。 「なっ……何を愚かな!己の身の程も弁えず私を貶めて保身に走るつもりか!」 反撃は予想していなかったようだわ。でも、自分の置かれた立ち位置が分かっていないようね。ウィリード殿下の傲慢な発言に、周りにいる貴族達は囁きを交わし合っている。 「王太子殿下は婚約者がありながら、しかもその婚約者の妹君と頻繁に会っていらしたとか……」 「その妹君も、果たして王太子妃に相応しいのでしょうか?私は彼女がガネーシャ嬢を貶めているというお話をサロンで聞いてまいりましたわ」 「しかも未婚の身ですのに王太子殿下といかがわしい事をなされたとか」 「私も聞き及んでいます。貴族の令嬢にあるまじき振る舞いをされて、姉君のガネーシャ嬢がなされたかのように吹聴したと」 「ガネーシャ嬢は王太子妃教育と慈善事業に励まれておいででしたのに、ダリア嬢は姉君の婚約者である王太子殿下に、はしたない態度で迫られておいでだったと聞いていますわ」 「貴族の義務も果たさず、あろう事か姉君の婚約者を略奪しようなどと……しかも毒を盛ろうとした噂もあるではないですか」 「何て恐ろしいんだ。到底信じられん事だな」 「フォクステリア家から流れてきたメイドが話していたから信憑性がありましてよ」 聞こえてくる言葉は全て、私の味方をする声ね。根回しは成功したようだわ。ダリアがうろたえて色を無くしているわね。 ダリア。あなたの手足となっていた存在はもういないわ。あなたの唯一無二だった手駒は私達によって葬られたのだもの。 「失礼致します。よろしいかしら?」 私は淑女らしく純心を装って一歩前に出た。 ──来た。ついに迎えたわ、この時を。 私
Terakhir Diperbarui : 2025-05-15 Baca selengkapnya