【二〇二五年 杏】「おまえに何がわかる! 父さんが、私たちがいったい何をしたーっ!」 怒りに突き動かされるまま、私は雅也に飛びかかった。 そのままベッドへ押し倒し、馬乗りになって首へ手を伸ばす。「ははっ、それがおまえのしたかったことか? 本当にバカだな」 雅也は笑った。 嘲るような声。 まるで私の感情そのものを玩具にしているかのように。「おまえの親父も、おまえも、みーんなバカ。 俺に勝てるわけないだろ」 そう言った次の瞬間、雅也が勢いよく体を起こし、今度は私をベッドに押し倒した。「やめて! 何するの!」 必死に抵抗するけれど、彼の力は強くて、びくともしない。「さて、どうなると思う? 馬鹿なおまえでもわかるんじゃないか?」 顔を歪めてにやつく雅也の目が、いやらしく私の身体を這う。 ――怖い。 初めて、本当の意味で恐怖を感じた。 今更ながら、自分の行動を悔やむ。 なんで、私はこいつの誘いに乗ってしまったのだろう。 こんな男と、密室で、二人きり……。「こんなことして、今度こそ訴えてやる!」 震える声で叫ぶ。 それだけが、今の私にできる精一杯だった。「ははっ、まだそんなこと言えるのか。いいねえ、俺好みだよ」 雅也の表情が、これまでにないほどの恍惚に染まり、静かに歪んだ。「ほんと、おしいよなあ……おまえ。 ま、いいや、最後に楽しませてもらうわ」 覆いかぶさってくる雅也。「やめて! こんなことして、ただで済むと思ってるの!? 今度こそ、おまえを――」「やってみろよ。できるもんならな」 顔を近づけてくる雅也の目が、嘲りと支配に満ちていた。「おまえの父親と一緒だよ。 どんなに抗っても、俺と親父の前じゃ誰も敵わない。 皆、俺たちの思い通り。……それに、訴えられると思ってるの?」
Last Updated : 2025-08-15 Read more