太陽が西から昇ったのか?寒河江社長が人の脚を揉んであげるなんて、しかも文句ひとつ言わずに。光紀は信じられないと言わんばかりにまばたきを繰り返した。本当にあの、高嶺の存在で、常に王者のように他人を見下ろしていた人物なのか?光紀はこれまで、恋愛というものをそこまで不思議に思ったことはなかったが、悠良を見て初めて、愛情というものが人を変えるのだと実感した。悠良は光紀の驚いた表情に気づき、慌てて伶を押し離し、気恥ずかしそうに言った。「足はもう大丈夫だから......!」伶は周囲の視線など全く気にも留めず、今この瞬間、彼の目に映っているのは悠良ただひとり。「本当に?もう少し揉めてもいいんだよ?」悠良は首をぶんぶん振る。「いいってば。もう遅いし、お風呂入って、早く休んで」「風呂」「休む」と聞いた途端、彼はぱっと元気を取り戻した。「わかった」大久保は意気揚々とした伶の様子を横目で見た。以前は帰ってきても冷え冷えとしていて、近寄るなと言わんばかりの雰囲気をまとっていたのに、今は全く違う。彼の中に人間らしい温度が戻ってきている。それを見て大久保の胸もほっと温かくなった。やはり悠良は良い人だ。以前、正雄が色々とお見合い相手を用意していた時も、どの女性からもこの感じは全く伝わってこなかった。大久保自身も悠良が好きだ。彼女は近づいて尋ねた。「小林様、お腹は空いてませんか?何か作りましょうか?」「大丈夫よ。大久保さんも早く休んで」「では、もし何か食べたくなったら言ってください、すぐ作るので」悠良にとって大久保はまるで母親のようで、その優しさと気遣いが心に染みる。そっと抱きしめながら言った。「ありがとう、大久保さん」その温もりに、大久保も思わず嬉しそうに微笑んだ。「そういえば、旦那様と小林様が留守をしている間、ワインを少し仕込んでおきました。味見してみてはどうですか?」ワインと聞いた途端、悠良の目はぱっと輝いた。「本当?私、ワインが一番好きなの。それも手作りのが一番だと思ってるんだ!」そう言うなり、うきうきと大久保と一緒にキッチンへ向かう。蓋を開けた瞬間、濃厚なワインの香りがふわりと広がり、悠良は嬉しさを抑えきれずに手を擦り合わせた。大久保はコップに一杯注いで渡し
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