「すまない。この件は俺にも責任がある」間違いは間違いとして認めるべきだ。伶は頑なに非を認めないような人間ではない。だが、その一言が若菜の最も脆い部分を直撃したのか、彼女は勢いよく立ち上がり、怒りを隠そうともせず顔にあらわした。「ひどいわ。心を踏みにじってまで、相手を試すなんて......ずっと伶と一緒に仕事をしてきたけど、まさか伶がこんな人間だなんて思いもしなかった。今日でやっとわかった」言い終えた瞬間、若菜の胸にあった罪悪感は少し和らいだ。彼女は冷たい目を伏せ、伶を見据えた。「さっきまでは小林のことを、自分のせいだと思っていたの。もし私が飛び出さなければ、彼女を巻き込むこともなかったはずだから。でも、よく考えれば――伶にも責任はあるわ。あの酒場で私にあんなこと言ったせいで、こんなことになったのよ!」そう吐き捨てると、若菜は立ち上がり、そのまま隣の診察室へ向かって歩き出した。彼女の声は大きくはなかったが、病院の廊下に響き渡り、通りすがりの患者や看護師たちの耳に鮮明に届いた。人々は次々と彼に奇異な視線を投げかける。「イケメンなのに、やってることが最低」「さっきの女性の話だとね、彼が好きなのは今手術室にいる女の子らしいんだけど、その子の気持ちが分からないからって、今の子を利用して試したってことみたいよ」「どうやら、その試しは成功したっぽいね」近くで聞いていた新人看護師は、思わず舌打ちした。「えっ?そんなことする?ひどすぎない?」年配の看護師は、対照的に落ち着いた顔で答えた。「別にそこまで酷いことでもないよ。言い方は悪いけど、結局みんな自分のために動いているだけなんだから。さっき走り出した子だって、本当はあの男と一緒になりたいって思ってただけでしょ?」「でもだからって、人の心を踏みにじるなんて、許されることじゃないよ」そう新人看護師が言うと、年配の看護師は皮肉っぽく笑った。「じゃあ逆に考えてごらん。もし自分に好意を持っているかどうか確かめたい相手がいて、すぐ目の前に真実を知るチャンスがあったとしたら......あなたたちは本当に同じことをしないと言い切れる?」さっきまで勢いよく話していた二人の若い看護師は、途端に黙り込んだ。口で言うのは簡単だが、実際に自分の身に降りかかれば
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