このタイミングで正雄が出てきて、ちょうど史弥が不妊だと知った瞬間だった。思わず足元がふらつく。全身が震え、声までわずかに掠れていた。「お、お前たち......今、なんと?」その場にいた誰も口を開かない。年齢を考えれば、この衝撃に耐えられるかどうか分からないからだ。正雄はそのまま史弥の前まで歩み寄ると、両手で彼の胸ぐらを掴んだ。「史弥......言え。さっきの話はどういう意味だ。子どもを作れないって、どういうことだ。今までずっと彼女のせいだと言ってたじゃないか!」史弥はうつむいたまま、恥ずかしさと動揺で顔を上げられない。「お、俺にも......よく分からないんだ」正雄は天を仰ぎ、苦痛に満ちた叫びをあげる。「どうしてこんなことが、お前に......これが白川家への天罰だというのか!」そう言い終わるや否や、彼の目が見開かれ、全身が硬直したようにその場で崩れ落ちた。あまりに突然の出来事で、その場の誰もすぐには動けなかった。最初に反応したのは伶だった。すぐさま悠良に叫ぶ。「救急車を呼べ!」その声でようやく我に返った悠良は、慌てて電話をかける。救急車はすぐに到着し、正雄は運び出された。玉巳と史弥も後を追ったが、ふたりとも魂の抜けたような顔で、正直ついて行っても役に立ちそうにない。悠良はふと、これは逆に二人の関係を和らげるチャンスかもしれないと思った。彼女は伶の背中を軽く叩く。「何ぼさっとしてるの、早く行って」「俺が?白川と石川がいるだろ」「あの二人の有様見てよ。それに、人の命が関わってるんだから、寒河江さんも行きなさい」そう言って、悠良は伶の背中を押して出口へ向かわせる。それでも彼は悠良のほうを気にした。「君はどうする」そのとき、葉がすっと横から出てきて、自信ありげに胸を叩いた。「寒河江社長、こっちは任せて。あとで律樹も来るし、今日やることはほぼ終わってる。葬儀は明日で、今日は弔問客の対応だけだから」伶はそれでようやく納得する。「じゃあ様子見てくる。問題なければすぐ戻るから」「はいはい、早く行って。村雨さんも一緒に。道中なにかあっても二人なら安心でしょ」悠良は、彼が道中も正雄のことで気を揉むのではと気遣ってそう言った。光紀とともに伶は出て行き、
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