悠良は話を聞きながら、前に葉がずっと「自分は平気だ、もう吹っ切れた」と慰めてくれていたことを思い出した。だが病気や生死の問題に、本当の意味で「吹っ切れる」なんてものはない。今できる唯一の方法は、この問題を一刻も早く解決すること。葉が回復して、病が治ることだけが望みだ。「あとでもう一度なだめてみる。でも葉のほうは、やっぱり寒河江さんにもっと気を配ってもらうしかないよ。私が両方を見るのは無理だから」悠良は、基本的に自分ひとりで物事を処理する能力はあると思っていた。特に問題が積み重なっている時こそ、その力が発揮できると信じていた。けれど今回ばかりは、全部の問題が自分ひとりにのしかかってきている。「こっちは俺に任せて、君はそっちの問題に専念しろ」伶が彼女側の問題さえ片付ければ、悠良もあちらに集中でき、余計な心配をせずに済む。もっと話を続けたかったが、腕時計をちらりと見れば、もうかなり遅い時間だった。「そろそろ休め。イライの件にも執着しすぎるな。どうにもならなかったら人を向かわせる」悠良が自分に過剰なプレッシャーをかけるのではと、伶は気にかけていた。彼女は何事も完璧を目指す性格だからだ。ふたりはそこでようやく安心して電話を切った。悠良は横になってからも、どうやって葉の件を解決するかで頭がいっぱいだった。そのまま考えに沈みつつ、いつの間にか眠りに落ちた。翌日、7時半にアラームをセットしていた。半分ぼんやりしたまま時間を確認し、軽く身支度をして、本社へ向かうつもりで起き上がる。光紀や律樹にも何も言わなかった。これは自分で片付けるべきことで、人を増やしても意味はないと思っていたから。ホテルを出て、入口まで来たところで、見覚えのある車が目に入った。窓が下がり、弓月の端正で整った顔が現れた――ただ、その口元にはどこかひょうひょうとした笑みが浮かんでいる。弓月は助手席をぽんぽんと叩いた。「ユラ~オレの新車の助手席、じっくり堪能させてやるよ」悠良は意外そうに首を傾げた。「なんでここにいるの?」弓月は眉を上げ、車のキーをひらひらさせながら言った。朝の日差しが窓越しに髪に落ち、どこか気だるげな不良じみた雰囲気をまとっている。「どうせ誰かさんは本社に出頭しに行くんだろ?だから専
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