「毎度―っ、不知火でーす」 あおい荘の玄関先で、明日香の元気な声が響き渡った。「明日香さん、お疲れ様です」 その明日香を、食堂から菜乃花が迎えた。「なのっちもお疲れ」「なのっちー、こんにちはー」「こんにちはー」「みぞれちゃんとしずくちゃんも、こんにちは。お母さんのお手伝い?」「そうー。お手伝いー」「お手伝いー」「偉いね。二人共、もう立派なお姉ちゃんだね」 そう言って二人の頭を撫で、菜乃花が笑った。「今、なのっち一人なのかな」「あ、はい。直希さんはお出かけで、あおいさんは入浴の見守り中。つぐみさんは東海林医院で、もうすぐ帰ってくるかと」「そうなんだ。いやしかし……なのっちが一人でお留守番とは、いやはや成長したもんだよね」「ええ? そうですか?」「以前のなのっちなら、残念だけど一人でお留守番、なんてのは無理だったんじゃないかな。一人でいる間に誰かが来たらどうしよう、そんなことを考えながらビクビクと……なんて絵が浮かんじゃったんだけど」 そう言って意地悪そうに笑う明日香に、菜乃花が恥ずかしそうに頬を膨らませた。「何ですかそれ。明日香さんったら」「あはははっ、ごめんごめん。それよかさ、今一人なんだよね。それじゃあちょっとだけ、お邪魔してもいいかな。久しぶりにお姉さんと、お話ししない?」 明日香の誘いに、菜乃花は嬉しそうにうなずいた。 * * *「こらこらあんたたち、あんまりはしゃがないの」「はーい」「はーい」「全く……聞いちゃいないんだから」「はい、明日香さん。お茶、置いておきますね」「ありがとう。しっかし何だね、アオちゃんたちがいないと本当、ここって静かだよね」「そうですね。私も高齢者専用住宅だってこ
Terakhir Diperbarui : 2025-08-13 Baca selengkapnya