「それから菜乃花、すごく頑張ってました。でも、いざ実行委員になったら、誰も彼女に協力しなかったんです。その癖、『今年の実行委員は使えないなぁ』って、わざと聞こえるように言ったりして……だから私、菜乃花に協力しようとしたんです。でも、彼女たちに呼び出されて、『菜乃花に協力するんだったら、あんたも覚悟しないとね』って脅されて……私、そう言われて何も出来なかったんです……自分も菜乃花みたいにされてしまう、そう思ったら怖くなって……私、菜乃花を見捨ててしまったんです……」 そう言って、美咲が肩を震わせた。「……川合さん。今、川合さんは、いじめに加わらなくても、止めようとしなければ加担したのと同じ。そう思ってるよね」 美咲にハンカチを差し出し、直希が言った。「はい……結局私は、菜乃花を見捨てたんです。自分を守る為、そんな風に理由をつけて」「最近の風潮で、よくそういう風に言うよね。でもね、それは少し違うと思うんだ。 誰だって、自分がいじめられたくないって思ってる。悪いことだと分かっていても、そのことに勇気をもって立ち向かうこと……勿論、それが出来ればいいのかもしれない。でもね、言葉で言うほど、その行為は簡単なことじゃない。君たちのことを馬鹿にする訳じゃないけど、君たちはまだ思春期の子供なんだ。その勇気が出なかったからと言って、そこまで自分を責めることはないと思う」「新藤さん……」「そうですよ美咲さん。誰だって、一人になるのは怖いと思いますです。それに美咲さんは、こうして菜乃花さんのことを心配して、ここまで来てくれましたです」「……」「その闇は、とんでもなく深くて濃い闇なんだ。その闇に一人で立ち向かえるほど、君も、それに俺たちも強くない。だからそんなに自分を責めないでほしいな。 それで、菜乃花ちゃんに対する
Last Updated : 2025-07-24 Read more