35話 明るすぎる人種 外の空間は悍ましいと植え付けられた僕は、今日もずっと外を眺めている。眺めているだけで、出る事は無理だ。窓から手を出すだけで震えてしまう。 「やっほー。庵くんだっけ?」 「誰?」 聞いた事のない声に驚きながら、振り返ると陽気な男の人が佇んでいる。見るからにして僕の知る普通とはかけ離れている人だった。ここは僕とタミキしか知らないはずなのに、どうして知らない人がいるのだろう。 僕の不安を読んでいたように、男の肩からヒョイと顔を出すタミキがいた。タミキの顔を見ると、落ち着く事が出来た僕は、男の存在なんて頭から抜けていく。 「おいおい。二人の世界に入らないでくれ。俺どうしたらいいのか、わかんねぇよ」 二人の視線の間に割り込むと、僕の肩を掴みながら、泣き真似をする。変にテンションが高くて、どうやって関わったらいいのか分からなくなってしまう。 「庵、そんなに怯えなくてもいいよ。俺の幼馴染のキヨだ。ほら自己紹介」 「へーい。初めまして紹介された通りタミキの幼馴染のキヨだ、よろしくな。趣味は口説く事」 「……よろしくです」 「敬語いらないからな。ほらテンション上げていこうぜ」 見た目と違って、フランクすぎるキヨを見ている。悪い人ではないんだけど、関わりにくい。困ったようにタミキを見ると、助け舟を出してくれた。 「庵には手を出すなよ。面倒くさいならスルーしたらいいから、一人で勝手に劇場でも始まるし、観賞用に楽しめばいいよ」 「扱い酷くない? 純粋なのに傷つくわー」 ゲラゲラと笑いながら、そう言うと、パッと手を差し出してくる。 「握手ー」 「は、はぁ」 とりあえず言われた通り握手をすると、満面の笑みで繋がれた手をブンブンと振り回す。余程、嬉しかったみたいだった。
Huling Na-update : 2025-06-24 Magbasa pa