Beranda / BL / 僕の推し様 / Bab 41 - Bab 50

Semua Bab 僕の推し様: Bab 41 - Bab 50

72 Bab

邪魔者の企み

 45話 邪魔者の企み  ここまでくるのにどれだけの年月をかけてきただろう。タミキが人を愛する姿を見てきたキヨは歯がゆい思いばかりをしていた。結局最後は自分の元へと戻ってきたが、それでも誑かした奴らを許す事は出来なかった。初めは知らなかった誰かの影を重ねて、似ている人を恋愛対象として選んでいた事も。自分を選んでくれていたと錯覚していた自分が恥ずかしくて、情けなかった。「どうして俺を選んでくれないんだ」 タミキの前でそう言えたなら楽になったのかもしれない。それでも答えはきっと決まっている。それならその影の人物からタミキを奪うしかなかった。 キヨは僕と出会うと、憔悴しきった様子を見て、怒りと共に好気だと感じた。普段の僕に対してなら通用しないかもしれない。影響が行く前にきっとタミキに相談をするから、阻止出来ただろう。しかし今は違う。体を動かす事を止めた僕は新しい風を欲しがっているように見えたのかもしれない。「外は広い、きっと庵も羽ばたけるよ」 その言葉に惹きつけられたのかもしれない。本心から吐いた言葉ではなく、目的があって言った事なのに、前向きな言葉達を目の前にして、輝きを与えられいるような感覚を感じながら、いつの間にか僕とタミキの間に、キヨの存在が浮き彫りになっていった。「俺は二人を応援してる。何かあったら俺に相談して、力になるから」 僕はどこにも逃げないとタミキが理解出来たのもキヨの言葉があったからだった。僕よりも長い年月生きてきた二人には絆がある。だからこそ、僕もそこに入りたかったのかもしれない。 今思うと、安易で幼稚でどれだけ自分が弱かったかを思い知る。「ちゃんと俺らは庵の事も考えているよ、なぁタミキ」「ああ」 僕の言葉はタミキに向けられていたはずなのに、二人を指す言葉へと変えられてしまった。どこにいても、何をしても、キヨの存在が側にいる。自分のいた居場所なのに、いつの間にか自分が蚊帳の外に追いやられた感覚がする。「僕はタミキに言ってるんだ。キヨには言ってない」「ごめん、そんなつもりはないんだ」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-29
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彼は僕を道具として扱う

 46話 彼は僕を道具として扱う  遠くから声が聞こえる。近くに感じていたはずなのに、ぐらりと回る宙の中に取り残されていく度に、全てが自分の出来事じゃない感覚に思えていく。揺さぶられる体と心配そうな声も、揺れている肩も、全てが幻のように隠れていった。意識を手放した僕は、ガクガクと痙攣を起こしている。自分の体なのに、別人の体を操作している。「どうして急に」 異変に満ち溢れた目の前の出来事に順応しようと答えを探すが、なかなか見つける事が出来ない。病院に連れていくべきなのだけど、それをしてしまうと今度こそ僕と離れ離れになってしまう。今まで計画していたものが総崩れになっていく。「多分アレルギーじゃないかな。合わないものを食べたのかもしれない」 キヨはタミキの折れそうな心を支えようとする。全ての理解者は自分だと言わんばかりに。その事に気づく事なく、僕に集中しているタミキがいた。 キヨのポケットから微かに顔を出しているカプセルの箱がこちらを見続けながら、ニヤリと笑い続けている。 僕がこうなった理由を知っているのはキヨだけだった。僕の病歴を利用して、その火種を付けた。これはパニック障害の発作だったんだ。トラウマに近づけることにより、擬似体験をさせる。そして外に対して恐怖を感じる流れに変わっていった。キヨが側にいるようになってから不安と安定へと変える為に、薬を摂取させていた。その事に気づく事が出来なかった僕は、いつしかこの環境に慣れて、恐怖が悦楽へと変化したと錯覚してしまった。思い込みが招いた結果だったのかもしれない。僕の病歴を調べたのだろう。そして副作用を起こす為に、薬に慣れている体から離脱症状を起こす為に、薬を投与する事をやめたんだ。 真実を知っているのは、この状況を作り上げたキヨだ。僕は勿論、タミキも把握する事は出来なかったんだ。「俺に任せて。大丈夫」 そうタミキの不安を抜き取るように笑顔を見せると、注射針を取り出した。中にはこの出来事を予測していたかのように、液体が沈んでいる。プスリと血管目掛けて針を刺すと、心臓の鼓動に合わせて、体の内部へと混ざっていく。
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弱さの裏返し

 47話 弱さの裏返し  人は理不尽な理由で簡単に人を陥れようとする。光に魅入られるように、隠れている闇に支配されていくのに気づく事もなく。 ハプニングが起こる事で、ギクシャクしていた空間は忘れ去られ、居心地が悪くなっていくキヨは、二人が寄り添う光景を見ながら、その場に自分が入り込む隙間はないと感じた。「今日はもう帰るよ。無理しないようにな」 これ以上、二人が仲良くする所を見ていると、自分が余計惨めに思えてくる。計画が崩れ去りながら、その場を後にした。 いつもなら反応するタミキだが、今の彼はなんだか様子が違った。ずっと見てきたから分かる。何かが引っかかっているような感情を抱きながら、ぼんやりと天井を見ている。「帰ったか。俺は庵だけだから、他には興味がないから、安心して」 甘ったるい声が脳を刺激して、痛みを和らげていく。少し前まで言い合いをしていたのが嘘のように、過去のページに記されていった。「ごめんなさい、色々と言いすぎた」 意地を張っていても仕方がない。タミキは僕に気を遣いながらも、安心させてくれようとしている。今まで喧嘩なんてした事なかったのに、今日の自分はタガが外れたように暴走しかけていた気がする。何がきっかけなのか自分でも分からない。「俺もだよ、ごめんな」 壊れそうなものを触るように、髪を撫でてくる手の温もりが心地いい。僕の安定剤はタミキだけだ。勿論、僕を壊す事が出来るのも、彼しかいない。 まるで永遠の別れがくる恋人のように、お互いの存在を噛み締めながら、抱きしめ合うと吐息が耳にかかって、ぞくりと体を震わした。僕の全てを受け止めたタミキは、表情を隠しながら、ギラリと目を光らせていく。「俺だけのものだ」 いつものタミキとは違う低音が響くと、まるで別人に抱きしめられている感覚に陥ると、何も考えないように、彼の背中に爪を食い込ませていく。  ムチだけを与えていると 壊れてしまいそうになる僕に 気づいた彼は違う仮面を被りながら
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僕の推し様

 48話 僕の推し様  言葉は刃のように僕達を傷つけていく。彼の口にする言葉が現実に残っていた香りの一つだとしても、受け入れる事は出来なかった。僕の知らない所で、タミキは苦しんでいたのかもしれないと思うと、心臓が死神に捕まれたようにひりつく。二人の命の元を刈り取ろうとする幻影に飲み込まれていく。 全ての話を聞いてしまった僕は、見たくない現実に直面している。逃げる事も出来ない、言葉によってタミキに阻まれているからだ。 一つの言葉が過去の事件と繋がっていく。彼は真っ直ぐな瞳で僕を見続けている。 愛情を中心に複雑な感情が絡みついてくると、自分の中で何かが壊れていく。何も聞かない方が良かったと後悔してみるが、今更、遅い。キスをしていたはずの僕達は、お互いが交わる事の出来ない立ち位置で生きている事を知らされていく。タミキは否定していた事を僕と関わる事によって、肯定する選択肢を選んだようだった。「俺はお前に恨まれても仕方ない存在だ。それでも俺は、お前と生きていきたい」 記憶の中で振り返りながら、回想を続けていた僕は現実に引き戻され、溺れていく。モゴモゴと見えない沼にハマっていきながら。 急に突きつける訳にはいかなかったタミキは何度も譫言のように僕にヒントを与えていた。その事に本当は気づいていたけど、全てを受け入れる程、強くもない、自分の都合の悪い内容を書き換えて、記憶から抹消しようとしていた。僕の心が壊れないように、じっくり時間をかけるつもりだったのだろう。焦る事のなかった彼が真正面から向き合おうとするなんて、彼の何かを変えたきっかけが潜んでいる。「受け入れる事が出来るのかどうかなのは庵次第だよ。俺は覚悟を決めて君を選んだんだ……でも世間はそう見てはくれない」 タミキは悲しそうに話すと、彼の背中に背負っている苦しみが見え隠れしている。なかなか正体を明かさない存在は、いつまでも彼にしがみつくように、首元に巻き付いているように見えた。その姿は、どこかキヨに似ている。「僕はタミキの事が好きだよ。だけど……だけど」 タミキの言う事を受け入れてしまうと僕は被害者でタ
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裏の物語

 49話 裏の物語  僕と同じ空間を共有していたタミキは、自分の考えを整理する為に、久しぶりに自宅に戻った。久しぶりに戻ると、あの時の事が現在進行形で進んでいるように感じてしまい永田、苦虫を噛んだ。自分の側から離れないように、大人達を使い、僕を地獄に突き落とした事実が、今になって彼を襲っていた。人が住んでいるはずの家は、まるで闇を吸い込んでしまったガラクタのように、動くことはない。そこには人の愛も温もりも、美しさも何もない。ただ廃墟に近い存在感と孤独が充満していて、苦しくなっていく。「そうだよな、拒否られて当然か」 庵が借金を肩代わりしたのも、全ては自分が招いてしまった種から生まれた事だった。BARで働くようになって少しずつ返せていたみたいだが、キリがない。「あいつが出てくるなんて聞いてないな」 キヨは自分に振り向きもしないタミキの弱みを探していた。例え自分を愛してくれなくても、どんなやり方でもいいから自由に羽ばたこうとする彼の羽根を捥いで、自分の闇に落とそうとしていたんだ。「ちょこちょこしか返してきてねぇじゃん。そんなんじゃ、いつまでも回収出来ないよ」 椅子に座りながら足を組んでいる男がいる。サングラスをかけている男は、右手に龍の刺青をしていた。普段は長袖を着ているようで、隠れているが、その時は腕まくりをしていた。赤い椿に囲まれた龍は心臓目掛けて登ろうとしている。躍動感溢れる芸術品だった。「しゃーない。俺が接触するから、お前らは留守番な」 下っ端の三人は青ざめた様子で彼の言葉に返事をした。少しでもタイミングを遅れて仕舞えば、何をされるか分かったもんじゃない。 バタンとドアを閉めると、プルプル震えている子鹿のように、その場で固まり続けていた。  そこからがもう一つの物語の 始まりだったのかもしれない 僕の知らない所で 動いている彼達の関係性が 隠れている  タミキは杉田と待ち合わせをしているBARに向かっていた。いつもよりもお洒落をして、なるべく自分の印象
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-30
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無を受け入れる者

 50話 無を受け入れる者  キヨは僕の現状をタミキに吹き込むと、ニヤリと笑った。彼がどう動くのかを試すように、観察している。「彼の環境には同情するよ。でもね、それとこれは話が別だからさ。全てを失ってどん底でも、俺らには関係ねぇっての」 吐き捨てるように言うと、タミキの中でドス暗い感情が蠢き始める。ずっと抑え続けていた存在は、キヨの言葉に引き寄せられるように、姿を現そうとしていた。「俺が立て替える」 我慢の限界だったタミキは僕に降り掛かろうとしている苦しみを排除しようと考えてしまう。それが彼の弱みであり、背景に隠されていた過去の事件へと繋がっていくとは思っていなかったのだろう。 脳内に響き渡る鐘の音は、彼が毒牙にかかる前触れのように、鳴り続ける。動いていた背景も、そこに生きている人達も、色を失いながら、二人の静寂の時間へと切り替わっていく。「何のメリットもないのに、見ず知らずの奴を助けるのか?」 言葉から動揺が見え隠れすると、全てを諦めたように、一言、伝えた。「俺が助けたい、ただそれだけだ」 質問に答える素振りもなかった人間が、ここまで断然する。タミキ自身も理解しているはずだ。僕の代わりにキヨへ返済する事がどんな事か……「俺からしたらどっちが払おうといいのよ。お前の名前を出してもいいか?」 一度決めると、簡単には諦めない性格を知っているキヨは、ため息を吐きながら、問いかける。言葉のパスを渡しながら、彼の様子から見える情報を読み取ろうとしていた。完璧な人間などいない。感情を隠そうとすればする程、滲み出てくるものだ。それを一番分かっているキヨは、浅く息を吸う。「出さないでいい。俺が勝手に言い出した事だから。その代わり、彼にはこれ以上、手を出さないでくれ」 キヨが運ぼうとしていた言葉達が、タミキの所有物となり、彼の内部へと吸収されていく。同列にいたはずの二人は、そうやってどちらかが有利に動けるように異質な空間へと足を踏み入れた瞬間だった。  不安定な感情は言葉に
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帽子の青年

 51話 帽子の青年  全てを見ている男達はこの光景を見ながら楽しそうに談笑している。愛し合ってでも、結ばれる事の出来なかった二人の男性の行く末を見守りながら、スクリーンに映し出されている映像を鑑賞している。それはまるで映画そのもののように、重要なシーンを上手く切り分けながら演じているようだった。「人間と言うものはこれだから面白い。しかし、結局はこうなるのだな。二人自身がその道筋を選んでいるのかもしれないな」 考察をしながら持論を語り出すと、ため息を吐きながら、現実に引き戻されていく。彼らにとって退屈で面白みのない世界が背中に存在していたんだ。  複数の視線に晒されている事を 知らない僕達は ただ一生懸命に生きていた 彼らはそれを眺めているのだ  床に倒れ込んでいるキヨは、息をするのもままならない状態へと悪化の道を辿っている。ゼェゼェと痛みを紛らわそうと呼吸を意識づけようとするが、タミキはそれを許してはくれない。もう少しで自分のものになったはずだったタミキは、全く正反対から眺めている。「庵以外は興味がない。お前なんかが俺の心を掴めると思い上がるな」 今まで我慢してきた、飲み込んでは消化していた言葉達が表面化すると、悪魔の呪文のように吐き出していく。無に落ちたはずのタミキは自分の主導権をもう一人の自分へと託してしまった。「俺はずっと見てきた。こうやって関われる事は嬉しいよ、純粋に……でもね」 コロコロと切り替わる表情は、まるで複数人の魂を背負っているように、別人へと変化していく。薄れゆく意識の中で、その光景を目の当たりにしているキヨは、ただただ唸るしか出来なかったんだ。「あの二人を痛みつける存在はいらないんだ。研究の邪魔になる」 彼には彼の世界がある。ドッキングした意識み入り込んだ住人は、ここぞとばかりに物語の主要人物のように、振り翳していく。「君は、ここまでだよ。凄く楽しい映画をありがとう、さようなら」 何度も何度も繰り返してきた彼等は、キヨの存在を悪だと
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二つの現実

 52話 二つの現実  脳と脳は繋がっている。記憶を共有しながら、現実を生き抜こうとする僕達の背後には確実に影がある。自分が何故、ここにいるのかを理解する事なく、僕の推し様はここで生きている。 ピピピピピピピ 目覚ましのような音が鳴り始めると、彼等は僕達の元へ急ぎ、全ての伝達システムを確認し始めた。異常を知らせるベルは、周囲の人間達を惑わせながら、警告を放っていた。「どうだ、異常はあるか?」「いいえ、見当たりません。誤作動の可能性はないんですか?」 スクリーンに映し出されている僕達の姿は煙に巻かれたまま消息不明になっている。彼等はその行方を探し出そうと、何度も試みたが、成功する事はなかった。「何が起こっているんだ……」 不足の事態に備え、準備は万端だった研究者達は、己の実力をどこかで過信していたのかもしれない。続きの映像を知りたくて、ガヤガヤし始めた観客達は、ため息を吐きながら、復旧するのを待っている。  走り続ける謎の人物は 僕達の未来を変える力を持っている 離れ離れになった僕達は その瞬間を待ちながら夢見ている  二人の住処はあっと言う間に炎に包まれた。タミキもそこにいるはずなのに、自分の力で探しに行く事も出来ない。その人物はぐったりと意識を手放している僕を抱き寄せながら、頬を撫でた。その温もりは父親にあやされているような感覚に近い。「君達は私にとって子供のような存在なんだよ。これ以上、見せ物にしたくないんだ」 風が帽子を撫でると、月明かりに照らされながらその人の顔が見えてくる。「ゆっくり休みなさい。きっと大丈夫」 長い前髪からきらりと光る瞳が、悲しそうに微笑んでいる。うるりと膜が張ったように、憂に満ちている。僕が体調を崩さないように、自分の着ているコートを敷布団の代わりに敷くと、そっと寝かしていく。この手は何故だか、懐かしく、あんな事があったのに、夢の中で現実と同じ光景を見ている僕は、安心感を知っていった。 彼
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真実

 53話 真実  帽子の彼は本来なら、僕達との接触してはいけない。記憶の渦に現実の光を灯してしまうと、二人の体に影響がいくからだった。機械の中で何百年も生き続ける僕達恋人は、愛する事を教える為に、機械により動かされている。一つのプログラムを物質として体の一部に挿入する事で、体を死なないように、書き換えているらしい。 人に希望を与えようと活動をしていたタミキは僕と出会い、過去を掘り返す度に、おかしくなっていった。そんな彼を失う訳にはいかないと、当時の支持者達が、僕達二人を違う世界に分け、擬似空間の中で別々の生きる場所を与えてきた。「会いたい……」 僕の言葉は全ての秩序を壊し、タミキと繋がる為に、全ての機械を吸収していく。その隙間から彼の世界へと繋がっている、一つの糸を見つけてしまった。 そこは過去へと繋がるもう一つの世界。自分が過去をやり直す事で未来を変えようとしたのかもしれない。  世界渡りは大きな代償を与えてしまう。僕の場合は記憶の改竄だった。最初からタミキの世界に存在するはずのなかった僕が存在する事になってしまう。そう、世界は違う過去を作り出した。 ずっと追いかけてきたタミキを身近に感じれる事を経験すると、沢山の楽しみと苦しみが交互していく。二つの擬似空間はいつしか混ざり合いながら、対立していく事になる。「俺達はタミキとは違う世界の住人だ。これ以上は関わらないでくれ」 杉田はいつでも僕の傍にいようとしてくれた。タミキに干渉すればする程、自我が暴走する可能性が高くなっていたからだった。人間の殻を破って、色々なキャラクターが生まれていく。そうやって複雑に構成されながら、破滅へと進んでいたのだろう。「……二人はやっと会えたんだね。自由にしてあげたいけど、今のままじゃ厳しい。本当は介入してはいけないけど、今回だけは……」 帽子の彼は、部屋の中に入ると帽子を脱ぐ。すると前髪が顔にかかって見にくいが、杉田と同じ顔をしていた。彼は僕達二人を守ろうとしてくれた記憶保管部の所長だ。研究者の一人でもある彼は皆から南さんと呼ばれていた。本名は杉田南。名
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境目に咲く金木犀

 54話 境目に咲く金木犀  ずっと側にいられたら、どれだけ幸せなのだろう。自分の気持ちに素直になりつつある僕は、姿の見えないタミキの姿を探し始める。彼と繋がるものは、もう何もないのかもしれない。途方に暮れていると、ふんわりと懐かしい匂いが僕を抱きしめていく。「誰……」 まるで透明人間になっているような感じだ。自分の姿は相手に見えていないように、相手の姿も僕からしたら存在しない。まるで世界が危険分子を除外しようとしているみたいに。 心と心で会話する事は普通なら出来ないはずだ。しかし、今僕の目の前で起こっている現象は感情のリンクだった。誰かの気持ちが自分の中へ流れ込んでくると同時に、何かが僕の中から抜けていく感覚を感じている。声に出しても反応しないその人は、ある景色を共有しながら導こうとしている。「ここは」 さっきまで草むらをかぎ分けながら歩いていたはずなのに、何故だか沢山の金木犀が咲き狂っている場所に辿り着いた。キョロキョロと周囲を見渡してみるが、誰の気配も感じられない。ここは現実なのか、はたまた違うのか、疑問が僕を満ちていく。「もう少しで出れるよ。もう君は自由になるんだ」 聞き覚えのある声が脳裏に響く。耳で聞いた声じゃない。まるで直接脳みそに語りかけているようだった。金木犀の匂いが充満していくと、匂いが形になり、一つの影を作り出す。最初はただのもやでしかなかった存在は、人の形に変化しながら、僕の期待に応えようとしている。 おいでおいでと手招きをし始める影を見ていると、大人の背丈から子供の身長へと縮んでいく。モノクロ写真のようだった影は、パッと光を発すると、色を取り戻していく。 遠目から目を凝らしながら確認すると、その姿は幼少期のタミキそのものだった。何の闇も知らない純粋な世界の中で生きている彼のもう一つの世界線が、僕の前で展開されていく。 そこには僕がずっと願って止まなかった彼の幸せそうな表情が浮かんでいる。その姿を見ていると、自分の知らない彼を見ているようで、胸がキリキリと痛み出した。「君自身が彼を幸せにしたかったんだね
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