番外編 パラレルワールドの使者① 時空を飛び越え、この世界にやってきた。俺が生きてきた場所は、この世界からしたら、パラレルワールドと言われている。同じ人物達が、複数の世界で生きていき、違う選択肢を選んだ世界から来たのだ。 俺の祖父の名前は庵と言う。俺の知る庵は年齢を重ねる事なく、生きていた。八十年経っても、変わらずの姿に驚きを隠せない自分がいた。 そして数日前、祖父が何者かに狙われ、意識不明の重傷を負っている。余談も許されない状況にいても経ってもいられず、祖父を狙った犯人の目星をつける為に、ここに来た。 世界は違っていても、そこに出てくる重要人物達は変わらない。この世界でも、俺の居場所で存在している人達が、別の人生を歩んでいる。「僕には忘れられない人がいるんだ。彼は僕の事を忘れているかもしれないけどね」 悲しそうに言いながら、遠くを見ていた祖父の瞳が忘れられない。 この世界では男性同士が子供を授かる事が出来ない事実を知った俺は、驚愕した。自分の世界では、男性同士じゃないと子供を作る事が出来ないからだ。人口の殆どは男性になっている。この世界からしたら、不思議な世界なのかもしれない。「とりあえず、調べるか」 何から調べたらいいのかを考えていると、ふと画面に一人の男が出ていた。彼はある組織が作ったある人をモチーフにした人造人間らしい。見ただけでは区別もつかない姿に、何故だか心臓の音が加速し始める。「ザング、お前は僕と同じDNAで作られている。だから彼と出会った時に、僕の指し示す人物が、誰だか分かるだろう」 襲われる一週間前にそんな話をされた事を思い出した。自分の中で感じた事のない感情の違和感が直感に結びつき、教えてくれている。そんな気がしたんだ。「……タミキ、か」 彼の映像の下に紹介文が書かれている。簡潔に書かれている内容を見つめながら、自分の世界から持ち込んだ人物データーバンクをパソコンにインストールしていく。一つのUSBに保存されていた二つの世界の人物のドッキングを始めた。
Last Updated : 2025-07-24 Read more