毎日同じ事の繰り返しだ。バイト漬けになっている自分を鏡で見ると、ゲッソリしていて格好悪い。まだ21歳の自分の顔が10歳以上老けて見えていた事に驚きと失望を感じながら、私服に着替える。 同じ年の奴らはここまで変わり果てた僕を見て、ドン引きするかもしれない。時間がないから趣味なんて作れないし、この現状から抜け出す術なんてなかった。 「疲れた……もう嫌だ」 就活に失敗し友人の借金の連帯保証人になり、その結果飛ばれた。見た目がよかったら夜職でもしていただろうが、そんな外見持ち合わせてない。 電車に乗るとボフッと全身の力が抜け、イスに寄りかかった。眠気はいつの間にか覚醒し、その日はいつもと違う景色に見える。なんだかソワソワして落ち着かない。 鞄の中に入れていたスマホを取り出すと通知が大量に届いていた。SNSフゥイで流れてきた広告を見てなんとなく入れてみたミラクルと言う配信アプリからの通知だった。 (多すぎだろ……通知うぜー) そう思いながら開いてみると、顔出ししているタミキと言う配信者に目が止まった。赤髪が似合っていて、引き込まれてしまいそうな笑い声と表情。正直男性に興味なかった俺でも見惚れてしまいそうだ。女性のファンばかりだろうと思っていたが、3割ぐらい男性ファンもいるみたいだ。 イヤフォンをセットするとセクシーな声が耳を刺激し、少しムラムラしてしまう。 (やべー) 配信者は自分にとって遠い存在だった。見る事も聴くこともないはずだと思い込んでいた自分の中の価値観が壊れていく。 第2話 正反対 「初見さん、いらっしゃい」 人が多いイメージがあったが、聞き専が多いようで反応をしてくれた。キリッとした目元が冷たい印象を与えたが、思ったよりフランクに接しているみたいだ。 「思ったより見やすいな」 ゆるっとコメントが流れていく。まだ昼間だと言うのにリスナーは眠たいようだった。夜職が多いのかもしれないと思いながら、初めてのコメントを打ち込んだ。 <気になったんで来ちゃいました。 どうせ流れるからいいだろうと、思った事をそのまま送信した。コメントに気づいたのか口元を緩めながら嬉しそうに微笑んだ。 柔らかい雰囲気と甘ったるさが合わさり独特の空間を醸し出していく。笑うと優しさが全面に出てきて、皆の心をかっさらっていった。
Last Updated : 2025-05-19 Read more