All Chapters of 変わり者令嬢がやさぐれ勇者の嫁になりまして: Chapter 31 - Chapter 40

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第5話・二人きりでお出かけしまして 5

 そうして昼食を食べ終えて後片付けも済んだ頃である。「ちょっと休憩」「へ?」 そう言ってミオはレイに腕を引っ張られるとあっと言う間にごろりと寝転がされる。そしてレイに後ろから抱き抱えられている体勢になった。「休憩、休憩」 驚いて固まってるとレイの手がミオの胸元をまさぐるように撫でてくる。あろうことかそのまま服の下の素肌に直接触れてくるではないか。「あの……手が……っ」「うん、休憩だから」 ミオの言葉に構わず優しく胸を揉みしだいてくる。 大きくてごつごつした手に胸全体を揉まれると次第にミオの性感にもちろちろと小さな火種が付いてしまう。 休憩とは一体なんなのか。「オレの世界では休憩ってそう言う意味だよ」「えええぇ……?」 嘘は言ってない。現代日本でホテルの「ご休憩」として入って休憩してる人は確かにいない。 嘘は言っていないのだが、そんな事情を知らないミオはひたすらに困惑するしかない。「嫌?」「嫌……では……んっ!」「ミオの胸柔らかくて好き、感度もいいし」 こりこりと乳首を摘まれそのままこねくり回されると、甘い痺れが走りミオの口から同じくらいの甘い吐息が漏れてしまう。「感じてきた?」「だ、だめです……」 こんな誰が来るとも分からない草原のテントの中で、このようないやらしい真似をしている。それを思うと背徳感にぞわりと背筋が震えた。「そう?」「やっ!」 しかしそんなミオの静止を無視してレイの手はスカートを捲るとミオの白い太腿をゆっくりと撫で上げた。「だめっ、それはっ」 体を捻って逃げ出そうとする。しかしミオの太腿や下着越しの秘部を撫でている腕とは反対の腕にがっしりとホールドされていて、逃げることもままならない。「だめなのは、濡れてるから?」 そうこうしている内にも、くちゅっと下着の中に指が挿入ってくる。「ひゃんっ」 ミオの花芯が期待したように勝手にひくひくと蠢く。しかしレイの指は焦らすように花弁の周りを円を描くようにくるくると這い回ってくる。「やっ……あっ」「あんまりやらしい声出すと外に聞こえるよ」 もどかしいその快楽にうっとりと蕩けかけていたが、レイにそう揶揄うように指摘されてしまい。ミオは慌てて自身の口を塞ぐ。「それとも誰かに聞かせた方が興奮する?」 くつくつと意地悪げな声でレイがミオの耳元で囁いた。
last updateLast Updated : 2025-06-15
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第5話・二人きりでお出かけしまして 6

 優しいような甘ったるい掠れた声を直接耳に吹きかけられてミオはびくびくと全身をのけ反らせてしまう。 しかし押さえ込まれてしまってはろくに逃げ出すことはおろか満足に動くことすらできない。 「だめ……っ」「分かった。撫でるの止めるわ」「きゃうっ!」 そう言うや否や濡れ始めていた花弁の中に勢い良く指が一本挿入った。 突然の強い快楽にミオの視界がパチパチと点滅してしまう。「撫でるの無しにして指でズコズコする方にするな?」「あっあ……っ!」 ミオの花芯の中に挿入っている中指がゆっくりと抜き差しを繰り返す。 心は止めてほしいと思ってるのに体は止めてほしくない。それどころかもっと欲しいとレイの指を勝手にきゅうきゅうと締め付けてしまう。それを分かっているのにレイの指は角度を変えつつ、ミオの花芯をじっくり暴こうとくちゅくちゅとはしたない水音を立てて中を掻き回す。 優しいのに意地悪なその指の動きはレイの性格そのもののように思えた。「やっ、あっ!」 突然花芯の内側、花襞の一点を強く撫で上げられてミオは我慢できずに大きな嬌声を上げてしまう。「へぇ? ここぐりぐりされるとイイ?」 その花襞の敏感な部分を重点的にグリグリと指で擦られる。するとミオの太腿が勝手にビクビクと痙攣してしまう。「だ、だめです、本当に……ひあっ!」 挿入された指を二本に増やされ、ついに静止の声も途切れてしまう。「腰揺れてる」 レイの言葉通り、快楽を求めるようにミオの腰がゆるゆると動いてしまっている。 レイの指でもっと中を抉ってほしい。激しく奥まで貫いてほしいとねだるように花芯から透明な蜜がとろとろと溢れている感触が伝わる。「ちがっ、」 そんなはしたない自分が信じられなくて思わず首を振った。なにが違うのかはミオ自身でももう分からない。「誰か外でミオのやらしい声聞いてるよ」「うそっ……ふぅっ!」 声を堪えようとしても、ちゅくちゅくと蜜を掻き出すように花芯の中で曲げられた指に呆気なく翻弄されてしまう。「ミオはこんな草っ原でま〇こに指挿入られて、アンアンえろい声出して腰振ってる、やらしいお嬢様だね」 そんな快楽に弱過ぎるミオをレイが楽しげに揶揄った。「それはっ! レイ様が、あんっ!」 反論しようとして一番奥を突かれてのけ反った。その最奥をレイはぐりぐりと責め立てる。「
last updateLast Updated : 2025-06-16
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第6話・嫉妬してしまいまして 1

 二人がデート、のようなものをしたその数日後のことである。珍しく全員が揃った朝食の場でレイがこう告げた。「今日、仲間が二人大陸から帰ってくる予定だ。みんなで出迎えよう」「仲間……ですか?」 ミオが不思議そうに首を傾げた。一体誰なのだろうか。「聖女エクラと魔族の頭領グランツだ」 レイがミオの問いかけを待っていたとばかりに自慢げに返答する。レイが告げた名前にミオがパアッと顔を明るくした。「エクラ様とグランツ様ですね。お噂はかねがね伺っております」 エクラ・プリエールはこの世界でただ一人の奇跡を起こす稀代の魔法師だ。いや魔法の域を超えて、どんな病人でも怪我人でも治すと言われる本物の聖女と言われている。 グランツは魔族で人間と魔族の間では不可侵条約を結ばれているから詳細は不明だが、レイと共に赤竜を斃したと言うことを聞いている。そんな人たちが幽霊島にずっといてくれるなら心強い。心強いのだけれど、ミオには疑問に思っていることがあった。「しかし何故エクラ様がこの幽霊島に?」 ミオの耳にも聖女エクラの名前は届いている。そんな有能な有名人であれば大国で存分にその力を使うことが出来るのではないか。むしろそちらの方がより多くの人々を救えるのではないかとミオは思うのだ。 その疑問にレイはうんと頷く。「うん、エクラも大体オレと同じ感じで権力者に良いように利用されて、それで国元から逃げ出したんだな」 勇者レイ・シュタインもフロード王国の武力アピールのために召喚され、邪魔にされてあちこちの怪物を討伐するよう命じられたのである。 まさか聖女、エクラ・プリエールまでもがそのような無体な真似をされているのだろうか。「……」 いや、あり得る。変わり者と呼ばれるミオだって一応は貴族の娘だ。政治の世界は恐ろしいことくらい分かる。 例えば、政敵を暗殺しようとしても彼女がそれを治してしまったらどうする。 もっと言えばある国に暴君がいたとする。その暴君がある日他国に宣戦布告をし、侵略戦争を仕掛けてきた。しかし相手の国はもちろん自国の国民さえ暴君を憎んでいる。ならばもし暴君の国の兵達が他国に辿り着く前に暴君を暗殺できたとしたらどうなるだろうか。きっと犠牲者はその暴君一人だけになるだろう。しかしその暴君をもしエクラがその奇跡の力を用いて治してしまったらどうなるか。 暴君の望み通
last updateLast Updated : 2025-06-16
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第6話・嫉妬してしまいまして 2

 畑仕事での行き来でようやく慣れてきた地上へと出てみると、見慣れない船が船着場に止まっている。何故かその船の背後には今にも崩壊しそうなほどボロボロの帆船がいた。(あれは……何だろう) 不思議に思っている内に船内から桟橋へと人が降りてくる。 エクラの外見を知らなかったミオでも、その人が「聖女」であるとはっきり分かった。「わあ……」 船から降りてきたエクラ・プリエールを見た瞬間、ミオの口から自然に感嘆の声が漏れ出てしまう。 色素の薄い、まるで朝の光を集めたかのような金色の髪に神秘的な緑の湖を思わせるような透き通る瞳は宝石さえ霞むような輝きを放っていた。 小さな頭に顔に整った容姿は儚さと同時にどこか意志の強さのようなものも持ち合わせている。 エルフェとは違うタイプの繊細な彫刻のような美貌の持ち主であった。 これぞまさしく聖女と言ったふうなシンプルな白いドレスから覗く長い手足にも陶器のような美しい肌にも同性のミオでさえついうっとりと見惚れてしまう。 いやもしかしたら女性の方がエクラを美しいと思うのかも知れない。これだけ完璧に美しいと性的な目で見ることだけで罪悪感に苛まされそうである。 兎にも角にもエクラ・プリエールはまさに聖女の名にふさわしい清廉な容貌であった。 その聖女の長い睫毛が瞬き、ふとミオとレイの方に視線を向ける。 そしてその彫像めいた美貌を薔薇の蕾が綻ぶように緩めて口を開いた。「ぃよーっす! レイちゃん元気ぃー?」 パチーンッと長い睫毛を揺らしてエクラはウィンクをする。彫像とは掛け離れたやんちゃな笑みを浮かべるエクラにミオは「ん?」とうっとりと見惚れていた顔のままフリーズしてしまう。 ぃよーっすとは一体なんだろう。 フリーズしたままのミオの隣りでレイが苦笑いする。「変わんないなエクラは」「エクラお姉様とお呼びなさいって言ったでしょー?」「やだよ」 エクラの言葉にレイが苦笑する。そんなレイの目元まで伸びている黒い前髪をエクラは長く白い指先で払ってやる。「またこんなだらしなく伸ばして、どうせ切るの面倒臭がってたんでしょう」「いや忙しかったんだよ」「またそんな言い訳して。目ぇ悪くなるよ」「悪くなったら治してよ」「バカ言ってんじゃないよ、金取るぞ?」 親しげな軽口の応酬を交わすエクラとレイに何かモヤモヤしたものを感じ
last updateLast Updated : 2025-06-17
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第6話・嫉妬してしまいまして 3

「あっ全然気を遣わなくていいよ。私聖女サマだけどそう言うの全然気にしないから!とってもすっごいえっと……なんだっけ、王国?王宮認定?のナントカコントカの……とにかく百年に一度の奇跡の聖女サマなんだけど私身分とかそう言うの全然気にしないよ!でも好きな食べ物は林檎のタルトだからよろしくね?」「え……?」 それは林檎のタルトを用意しろということだろうか。 早口でまくしたててドヤっと自慢げな表情を見せるエクラにミオはもはや困惑するしかない。「エクラ、ミオが困ってる」 どうしたものかとミオが目をぱちくりさせて困っていると、やれやれとレイが助け船を出した。「何よー、いいじゃない。あれあんた痩せたんじゃない?」 ふにりとエクラがレイの頬を指で軽く摘む。「やめろ何すんの」 レイも口ではそう言っているが楽しげに笑っている。 先程から二人の距離がなんとなく近い。エクラの親しみやすさがそうさせるのだろうか、レイも柔らかく笑っている。ミオがようやく最近見ることが出来たその笑みをエクラにはこんなにも、容易く見せている。 そんな二人の親密な様子を横で見ているとミオの胸がズキリと刺すように痛んだ。(あれ……なんだろこれ……) しかしミオにはその痛みの正体が分からない。 強いて言えば、妹と両親が自分の分からない話題で笑い合っている時に感じたその痛みと、今の胸の痛みはとてもよく似ていた。ズキズキと胸が締め付けられて、チリチリと指先が痺れていくような、喉の奥がコロコロと異物に遮られているような、鼻の奥がツンと痛むようなそんな感覚である。(変なの……なんでこんな痛むんだろう) ミオを置いて隣で笑い合っている二人を見ながら、ミオは不思議そうに自身の胸元を摩る。 こんなにも胸が痛む理由はミオには分からなかった。 彼女がそう感じるのは仕方がないことである。ミオはいつも孤独だったから、寂しいと言う感情がよく分かっていないのだ。 実家では人とロクに話さない日なんてしょっちゅうあったが、幽霊島に来てからと言うものいつも誰かと一緒にいたのでその孤独を忘れていたのである。忘れかけていた久しぶりの孤独感にミオの胸ら痛んでいた。 それに加えてエクラにレイを取られてしまったような嫉妬が根底にあるのだがそれすら彼女は知覚していない。 更に、エクラの美貌は妹のエルフェの愛らしい容姿を彷
last updateLast Updated : 2025-06-17
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第6話・嫉妬してしまいまして 4

 気を取り直したミオはそれから二人と別れ、いつも通り畑で作業を始めていた。 空は相変わらずの曇天だが、見渡す限り草木一本生えなかった地上はミオのおかげで広々としたジャガイモ畑が広がっている。幾千もの畝に規則正しく青々としたジャガイモの葉が生い茂っていた。 ともすれば空と同様に心がモヤモヤと曇ってしまいそうになるのを無心で作業することでミオはなんとかやり過ごしている。しかし無心になろうとすればするほどレイとエクラの親密な様子がリフレインされて落ち着かなくなってしまう。 なんとか午前中の作業を終えた彼女はレイの屋敷には戻らずに地上で昼食を取っていた。 今日の昼食は以前レイが用意してくれたハンバーガーではない。普通のサンドイッチと蒸かし芋である。 前は一人で作業をしていたが、最近はありがたいことに畑仕事を手伝ってくれる人もちらほら現れるようになった。 それに今こうして昼食を食べるのに座っているのは地べたではなく簡易的なテーブルとベンチである。これらを作ってくれたのはピラートの父であるバンディである。 テーブルとベンチだけではない。収穫したジャガイモを入れる箱もそれを運ぶ台車もバンディが作ってくれたのだ。 ミオがフロード王国の貴族の娘と聞いて当初は苦い顔をしていたが、ピラートを助けてくれた義理とジャガイモの礼だと言って彼はこうしてミオに協力してくれている。「もうそろそろ台車じゃ追いつかねーな」 そして今日、収穫を手伝ってくれているのはアルマだ。 蒸かし芋をむしゃむしゃと頬張りながらアルマが見つめるのは幾つも積み上げられた箱である。その箱の中には全てぎっしりとジャガイモが詰め込まれて、高く積まれていた。 ミオもだんだんとコツが掴めてきたのかジャガイモの収穫量が大幅に増えたのである。例えば同じ土地でジャガイモを何回か収穫すると生育が悪くなったり枯れたりするのだ。それを連作障害ではないかと教えてくれたのはレイの屋敷で働くメイドのロージョである。彼女は元々農家の娘だったそうだ。 連作障害の解決策としては何度か収穫したら一旦休ませて土壌改良の魔法を何日か重ねがけするのである。すると再度良いジャガイモが収獲可能になるのだ。 現代日本では堆肥などを投入したり他の作物を輪作することなどで連作障害を防いでいる。それでもジャガイモは三年ほど時間を置かなければならな
last updateLast Updated : 2025-06-18
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第6話・嫉妬してしまいまして 5

「よぉエクラ」「グリモワールから二人がここにいるって聞いたから来てみたの。そういえばお昼だったわね」「昼メシまだなのか?」 アルマの言葉にエクラはこれ見よがしな溜め息を吐いた。「ええ。もうグランツのバカがいらんことしたせいで大騒ぎよ」 グランツと言う名前にそう言えばとミオが思い出す。彼も島にいるはずなのにまだ一度も会えていない。 アルマが呆れた声を出す。「何してんだよあいつ」 その問いに忌々しげにエクラが眉間に皺を寄せて船着場の方をちらりと見やる。「あの船の後ろの幽霊船よ。島の近くで遭遇したんだけど、グランツが鹵獲したら何かに使えるんじゃないかって砲撃して無理矢理ロープを巻いて連れてきたの」 鹵獲とは戦場で敵の兵器や軍用品、物資などを奪い取ることである。 しかし流石この幽霊島は災厄と呼ばれた赤竜の元棲処である。海竜に幽霊船にトラブルには事欠かない。「なんだ、やっぱあの地鳴りはグランツの砲撃だったのか」「そーよ。結局船内にはアンデット系の魔物しかいないし。まだ、船内にお宝があるに違いないってまだレイを連れて探してるけど絶対ないない」 エクラがそう強く言い切った瞬間、ぐううっと彼女の腹の音が鳴る。聖女が気まずそうにその美貌を真顔にした。「あの、召し上がりますか?こっちはまだ手をつけてないです」 おずおずとミオが蒸かし芋をエクラに差し出す。途端エクラの美貌が春の木漏れ日も霞むほど輝いた。「わあっ!ありがとう!とってもいい匂い!」 遠慮なくミオから蒸かし芋を受け取るとエクラはパクリと大きな口で食いついた。 瞬間彼女の瞳が一等星のようにパアッと煌めいた。「美味しい!なにこれ初めて食べた!」「ジャガイモです」 ミオの返答にエクラは更にキラキラと美貌を輝かせる。「へぇ、これが例の!ジャガイモ美味しい!ミオちゃんってばすごい!」 キラキラしたその緑色の瞳と春の日差しのような輝く笑顔にミオもつられて思わず笑ってしまう。 屈託のない人だ。 レイが心を許すのも分かる。(……っ) そう思うと胸がまたズキリと痛む。 そんなミオの様子には気付かずに芋を食べながらエクラはミオに話しかけてきた。「でもミオちゃんが良い子で本当よかった」「え?」「レイって、ほらすっごくチョロいでしょ?あいつ頼まれごと絶対断らないから」「そう、なんです
last updateLast Updated : 2025-06-18
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第6話・嫉妬してしまいまして 6

 エクラがやってきたその夜のことである。 ミオが自室でもう寝ようと机からベッドへ向かおうとしているとコンコンとドアをノックする音がした。「はい」「まだ起きてる?」 ドアの向こうから聞こえたのはレイの声である。「レイ様?」 こんな夜更けになんだろうと訝しみながらもミオがドアを開ける。するとレイがするりと部屋に入ってきた。「お疲れ」「どうかなさったんですか?」「ん? うん、別に用はないんだけど」 ミオの問いにそう答えながらレイは物珍しそうにミオの部屋を見渡す。そう言えば彼がミオの部屋に入るのは初めてであった。「グランツに一日中振り回されて疲れたなって思ってさ」「そう言えばグランツ様はまだお戻りになられていらっしゃらないのですか?」 夕食の席にもグランツは現れなかった。なのでまだミオは彼の姿を見ていない。レイがうんざりとした表情で肩を竦める。「まだ幽霊船のお宝探ししてるよ。ありゃミオに張り合ってるんだな」 意外な言葉にミオが黄昏色の瞳を丸くする。デスクに置かれたランプの柔らかい光に照らされているせいで彼女の瞳は黄昏と言うよりは濃い黄金のようだ。「私に?」「いきなりやって来た子があっと言う間に今まで悩んでいた食糧問題を解決しかけてるんだから、魔族の統領としては納得行かないんだろうなあ」「そ、それは……」 そんなこと張り合ってこられても困る。こっちだって必死なのだ。「とにかく、そんな奴に付き合ってクタクタになったんだ。そしたらミオの顔見たくなってさ」 ふっと微笑まれると思わずミオの胸が高鳴ってしまう。そんな風に優しく微笑まれるとどうしていいか分からなくなってしまうのだ。「そ、そうですか」「もう寝るとこだった?」「ええ、まあ……」「そっか」 そう言ってレイが徐にミオに手を伸ばす。そのままレイに密着するように抱き締められてミオは思わず固まってしまう。「……なん、ですか……?」 困惑して声を上げると少し体を離したレイがミオの顔を覗き込んだ。「いやこないだの続きをしようと思って、駄目?」 ねだるように言われてミオは俯く。 嫁なのだから求められたら応じなければならない。しかしそんな気分にはなれない。しかし断ったらレイはエクラの元へ行ってしまうかも知れない。「駄目では……ない……です……っ!」 その言葉尻ごと奪うようにレ
last updateLast Updated : 2025-06-19
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第6話・嫉妬してしまいまして 7

 そして灯りの消えた部屋で、一糸纏わぬ姿でミオとレイはベッドの上にいた。「あうっ!」 ゆっくりとしかし深々とレイの剛直に花芯を貫かれミオの細い背筋が弓形に仰け反る。「ミオ……」 自身を受け入れたミオを優しい眼差しでレイが見下ろす。その視線が恥ずかしくも、嬉しい。こうやって身体を重ねている間はレイは自分だけを見てくれるのである。 例え想い人が自分以外の誰かであったとしても、今こうして二人が繋がっている瞬間だけはレイは自分だけのものなのだ。そうミオは学んだのである。「れ、レイ様……」 手を伸ばして朝エクラがしていたようにレイの頬に指を触れる。「ん? どうした?」 優しい声と共にレイがミオのその指を優しく掴む。 指を握ってくれることだけでもこんなに嬉しい。 何故自分はこんなにもレイに執着しているのだろうか。 ミオはふと疑問に思った。 勇者の嫁としてこの島に貢献出来ればいいだけだ。そうしたらミオはこの島にずっといられる。居場所がないと嘆く必要はもうないのだ。 それなのにこの漆黒の髪と瞳を持つ男にどうしてこんなにも自分から離れてほしくないと思うのだろうか。 エクラに笑いかけてほしくないとまで思ってしまうのだろうか。 その理由はミオには分からない。「キス……してください……」 そうねだったのは甘えて媚を売ったら可愛がってくれるだろうかと言う打算だった。甘え方など妹のエルフェの真似しかミオには出来ない。それも随分と下手な演技だ。 ミオのそんな下手な甘えにレイの笑みがますます濃くなる。「お安い御用」 繋がったまま、レイの唇が寄せられて二人は口付け合う。 薄く開いたミオの唇にレイの舌が侵入ってきてミオの白い歯列をなぞり、それから彼女の舌を絡めとる。「んっんぅ……っ」 ミオの舌をチュウと音が鳴るほど強く吸う。それと同時にゆっくりとレイの腰が動き抽送が始まる。「はあ……あっ、うんっ……!」 剛直をギリギリまで引き抜かれてはズブズブとゆっくりと奥まで突き立てられる。最初はゆっくりと慎重に、だが次第にその抽送の速度はどんどん早くなる。 ジュッグジュッといやらしい濡れた音がミオの部屋に響く。「ああっ! はっ、んうあっ!」 レイと重ね合った自分の唇から信じられないくらいに甘い声が漏れ出てしまう。しかしミオは声を我慢せずに素直に出しながら
last updateLast Updated : 2025-06-19
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第7話・魔法が解けまして 1

「ミオ、部屋に戻るよ」 明け方レイはそう言ってミオの髪に優しく触れるだけのキスをする。とても甘く優しいキスだ。しかしそれをミオは寝たふりをして無視してしまう。 ミオの寝たふりに気付いていないのか、そのままレイは彼女の部屋を静かに出ていく。 あの初夜のやり直しだったはずなのに、ミオの心はずっと晴れないままであった。 廊下のレイの足音が遠ざかっていくのを確認して、ミオはゆるゆると薄く目を開ける。「ん……」 まだ洞窟都市を照らす巨大シャンデリアはようやく灯りを灯し始めた頃らしい。まだ部屋の中は少し薄暗い。 だが暗いからと言う理由だけで済まない程、視界が酷くぼやけていることに気付いた。「あれ……」 目に映る全てが不明瞭で全体的にぼんやりとした輪郭になっていることにミオは驚いて飛び起きる。 その視界の異変に何度もその目をゴシゴシと手の甲で擦った。そして机の上に置いていた手鏡を覗いてはたと思い至る。「そうだ魔法……!」 出立の時に母に治癒の呪文を掛けてもらい、視力が回復したのである。そしてきっとその魔法の効果が今切れたのだとミオは推察した。「眼鏡眼鏡!」 原因が分かれば次は処置だ。一応愛用の眼鏡は持ってきている。母には捨てろと言われたが、あの瓶底眼鏡はもう長い間自分の顔の一部であったのだ。例え用が無くなってもすぐに手放すなんてことはミオにはできなかった。 ポーチの中にしまっていた眼鏡ケースから瓶底眼鏡を取り出して装着する。途端ぼやけていた視界がくっきりと見えた。 目の病などではなく、ミオの推察通り魔法の効き目が切れただけらしい。聖女ならともかく治癒の魔法は定期的に重ね掛けしないと元に戻ってしまうのである。 手鏡に映る瓶底眼鏡の自分はまだ幾月も経っていないはずのに、随分久し振りに再会したような気がした。(でもきっと……これでいいのよね) 寝起きでボサボサの髪、グルグル眼鏡で見栄えのしない自分の顔。今までの自分、変わり者と家族から揶揄されどこにも居場所がなかったミオ・エヴェーレンの顔だ。 こんな顔を見たらレイも例え冗談でも自分を好きだとは言わなくなるだろう。こんな自分、好かれる訳がない。 本当の自分はこんな変わり者の冴えない自分なのにレイに離れて欲しくないなどなんて烏滸がましいことを願ったのだろうか。 執着なんてして良い程の顔ではないで
last updateLast Updated : 2025-06-20
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