レイに好きと言われたから、と言うのもある。だがきっと前からそんな兆候はあった気がする。自分の想いに気付いてしまえば早かった。レイの言う通りあんなにエクラに嫉妬した理由がすんなりと腑に落ちてしまう。 我ながら自分の鈍さに辟易としてしまう。いつの間にか、もうとっくに自分はレイ・シュタインと言う男を異性として好きになってしまっていたのだ。 ぶっきらぼうなようで、お人好しで人の頼みを断れない彼が好きだ。 時々ミオには意地悪で、夢中になると周りの声が聞こえなくなるほど集中してしまう彼が好きだ。 いつも助けてくれる優しくて頼もしい彼が好きだ。 漆黒の瞳と肩まで伸びた黒い髪も綺麗で好きだ。 レイの笑った顔も怒った顔も泣いた顔も、全部全部ミオは大好きだ。(ずっとこんな時間が続けば良いのに) 楽しげに話すレイに相槌を打ちながらミオはそんなことを思う。 いつの間にかこんな他愛もない時間を慈しんでしまえるほど彼を好きになってしまっていたのだ。こんな風に語り合う二人きりの時間が楽しくて嬉しくて時間が過ぎてしまうことがあまりにも惜しかった。 しかし、無情にも時は過ぎる。レイの元の世界の話はひとしきり終わってしまった。 そろそろ戻ろうかとレイが言い出す頃合いである。だがレイはこんなことを言い出した。「あとさ、二人きりの時はレイ様じゃなくて、怜士って呼んでほしい」 レイの意外な申し出にミオは首を傾げながらも鸚鵡返しする。「レイジ様?」「怜士」 どうやらイントネーションが違ったようだ。ミオはゆっくりとレイが言った音を反芻する。「怜士……様」「様もいらない」 そう言って唇を尖らせるレイにミオも困ってしまう。「怜士…………さん?」 流石に呼び捨ては厳しい。ミオの申し訳なさそうな顔にレイは不満そうに眉間に皺を寄せて更にぎゅっと唇を尖らせた。「……大いに不服だけど……まあいっか」 しかし譲歩はしてくれたらしい。レイは渋々と了承してくれる。 それから二人でどちらともなく笑い合う。「ミオ、これからもよろしく」「こちらこそ怜士さん」 そう言うとどちらが合図した訳でもなく、自然に二人で体を近づけ合うとそっと抱き合った。そして二人はゆっくりと目を閉じ、唇を重ね合う。ふにりと柔らかくて熱を帯びた唇の感触にミオの心臓が静かに、だがトクンと確かに跳ね上がる。 静
Last Updated : 2025-06-25 Read more