広場の方角からガランガランと朝を告げる鐘の音が響く。 その聞き慣れた鐘の音にミオがゆっくりと眠りから覚めた。 まだ重たい瞼をゆっくりと開けると、まず初めにレイの漆黒の瞳がこちらを見つめて柔らかく微笑んでいるのが視界に飛び込んできた。 「おはよう、ミオ」「おはよう」 お互い寝ぼけ眼のまま挨拶をして微笑み合う。 たったそれだけのことでこんなにも幸福感が胸を温かく満たしていく。 窓の外は洞窟都市の巨大シャンデリアが夜明けの黄金の光を放ち始めていた。 朝の眩さに目を顰めながらレイは窓の方を見やり、その黄金の輝きを眺める。 「夜明けの色ってミオの瞳の色と同じだよね」「そう、かな」「うん。ずっとそう思ってた」 ミオはずっと自分の瞳は黄昏の色だと思っていた。一日の終わり、沈みゆく陽の色だとそう思っていたのである。 だが、レイは真逆の一日の始まりの色だと言う。 黄昏の色は夜明けの色と同じ色をしているのだ。「この赤い髪も好き」「私は怜士さんのその黒い髪も目も好きだな。優しい夜の色みたいで」 ミオがそう言うとはにかみ合って二人は顔を寄せ合う。 これから自分はレイの嫁として彼とこの島で生きていくのだ。 今日も幽霊島いやユメノ島に、黄金に輝く夢のような一日が始まる。 終わり
Last Updated : 2025-07-05 Read more