言い終えるや否や、星が反応する間もなく、ノールは通話を切った。切れた音が耳に残る。星は誰にも何も言わず、その場で別の番号へかけ直した。「……位置、出た?」凌駕の恭しい声がすぐ返る。「割り出せました。すでに人を向かわせ、救出に動いております」「分かった。動きがあったらすぐ報告して」――だが、十分後。「星野さん。発信源として出た地点には、手配は何もありません。ノール側の囮かと」星の顔に意外さも落胆も浮かばなかった。最初から、その可能性が高いと分かっていた。「……了解」短く数言やり取りして、星は通話を切る。その瞬間、航平が堪えきれないように聞いた。「星……本当に、ノール家の仕業なのか?」星の眉間に薄い影が落ちる。「十中八九ね」航平は手元のカップを強く握りしめ、平静を装って言った。「翔太はまだ小さい。今頃、相当怖がってるはずだ。ノールは息子を失った……復讐のために、翔太をどう扱うか――」言いかけて、彼はずっと黙っていた仁志へ冷えた視線を投げた。「……仁志。お前のせいだ。お前がいなければ、翔太がノールに攫われることもなかった。全部、お前が招いたんだ!」――だが今回、仁志は珍しく黙ったままだった。航平の言葉に反論しない。それが逆に、航平の目つきをさらに冷やす。「いいか。翔太に万一があったら――絶対にお前を許さない」星が淡々と遮った。「……やめて。今は責任追及してる場合じゃない。どう助け出すかを考える時よ」雅臣の深い視線が星に落ちた。「ノールは言っただろ。仁志と交換だ……まさか、渡すつもりじゃないか?」星は即答した。「たとえ仁志を渡しても、ノールが素直に解放するはずがない」雅臣は、その含意を読み取る。「つまり……渡さない、と」星は雅臣を一瞥した。「雅臣。要求通りに動けば、助け出せないどころか主導権を握られて不利になる。まだ詰んでない。交換の話をする前に、救出の段取りを詰めるべきよ」雅臣は唇をきゅっと結び、瞳の奥に不快を滲ませた。「結局……お前の中では、翔太より仁志の方が大事なんだな?」星の目に、疲れとやるせなさが浮かぶ。「あなたの頭なら分かるでしょ。雅臣、今は翔太が最優先。子どもみたいに意地を張らないで。このタイミングで争いたくないの」雅
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