星は、linの無力さと迷いに気づき、少しだけ時間を割いて彼女を慰めた。自分もかつて同じような無力感を味わったことがある。だからこそ、linの気持ちが痛いほど分かった。何気ない一言の励ましが、相手を深淵から引き上げる一本の綱になることもある――星はそれを知っている。こんなにも純粋に絵を愛する人に出会うのは珍しい。だから星は、いつもより少しだけ根気よくlinに向き合った。linが深い闇から抜け出したように見えて、星も心から安堵した。返信を書こうとした、そのとき。オフィスのドアが軽くノックされた。凌駕が数枚の書類を手に、足早に入ってくる。「星野さん、重要な契約書です。山本マネージャーたちのところでトラブルが起きて……たぶん、あなたが直接行って交渉する必要があります」星は書類を受け取り、数ページめくってから静かに頷いた。「分かった。手配して。私と仁志ですぐ行くわ」凌駕は「承知しました」と短く答え、すぐ部屋を出ていった。ちょうどその瞬間、画面に未読メールが一通増えた通知が出る。だが緊急事態で、星には確認する余裕がなかった。ノートパソコンを無造作に閉じ、仁志を探しに行く。この契約は星にとって重要だった。遅らせるわけにはいかない。三時間後。星と仁志は、プライベートジェットで飛び立った。一方、パソコンの前で待ち続けていた怜央は、長く待ってもsummerから返信を受け取れなかった。送信済みフォルダに残る、短い文面を見つめる。【聞いてもいい?あの後ろ姿の絵、あなたは誰を描いたんですか?】時間を見ると、もう夜十時を回っていた。summerは寝ているかもしれない。そう思い、怜央はそれ以上は追わなかった。しかし、それから三日間。怜央のメールボックスは、静まり返ったままだった。こんなことは今まで一度もない。summerが返信をくれないなんて。どんな内容を送っても、summerは遅くともその日のうちに返してくれる。怜央の胸に、不安がじわじわと広がっていく。――自分の質問が踏み込みすぎたのか。――summerを不快にさせてしまって、返信したくなくなったのか。考えた末、怜央はもう一通メールを送った。【ごめんなさい。あなたのプライバシーに踏み込むつもりはありません。ただ、あの絵の後ろ姿が妙に見覚えがあって、つい聞いてしまったん
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