忠と翔がいくら慰めても、「怜央がわざとやったのかもしれない」――その疑いが頭から離れないのだろう。明日香の顔色は、相変わらず最悪だった。仁志は窓際に立ったまま、裏庭を眺めていた。執事と並んでのんびり散歩する怜央。時折携帯を取り出しては、写真まで撮っている。……機嫌がいい。取り繕っている感じもない。むしろ、本当に楽しそうだ。雲井家の人間が彼の腹を読めないのも無理はない――いや、仁志自身ですら、怜央の底が見えなくなっていた。三十分も議論したが、結論は出ない。この調子じゃ、あと二時間延長したところで何も変わらないだろう。同じ話をぐるぐる回して、「怜央には裏がある」「口実にしてるだけだ」だの。聞いているだけでうんざりだ。仁志は淡々と言った。「そこまで可能性を並べるなら、怜央さんが本気で距離を置きたいだけって線も考えるべきです」忠が鼻で笑う。「怜央が明日香と完全に縁を切りたいなら、なんで明日香に株を3%も渡す?罪悪感を煽って、明日香から口を開かせたいだけだろ。俺には分かる。あいつはただの面倒くさい男なんだよ」仁志は横目で忠を見る。「逆に言えば、こういう可能性もあります。怜央さんは、こちらが何かを差し出さなければ、あなた方が簡単に引かないことをよく分かっています。だから、こちらから先に手を切ることにしました。たとえ痛みを呑もうとも、それで決着がつくならば……そういう判断です」星は、その言葉にわずかに意識が揺れた。彼女も雲井家と同じく、「怜央には狙いがある」と決めつけていたからだ。だが仁志の言い方は、別の角度を突きつけてくる。――怜央は、本当に明日香を手放すつもりなのか?けれど、手放すなら、なぜここまでの株を補償として出す?二人は付き合っていたわけでもない。怜央は、明日香の手すら握ったことがない。優芽利の件の償いだとしても、正直やりすぎに見える。忠はまるで聞く耳を持たない。「仁志、適当なこと言うな。怜央は司馬家の当主だぞ。そんな都合よく、食い物にできる相手だと思ってるのか?」仁志は即座に返す。「食い物にしづらい相手です。でも、この何年も怜央の存在で一番得をしてきたのは雲井家でしょう。今のあなた方を見れば分かる。怜央さんが手を引きたいと言えば、あなた方は簡単に放しますか?」言葉を区切り、冷たく続ける。「放しません。むしろ、
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