心音の顔に、不安の色がよぎった。「男たちが話してるのを聞いたの……私たち、移されたら……本格的に客を取らされるって……」客を取らされる――その言葉を思い浮かべるだけで、全身が冷たくなる。「ええ」明日香の眉がわずかに動いた。だが、その表情に動揺はない。「やっとここを出られるのね」心音は驚いたように彼女を見た。「やっとって……明日香、それがどういう意味かわかってるの?」明日香は静かに言った。「つまり――やっとここから逃げるチャンスが来たってことよ」「逃げる……?」明日香の瞳に、深い光が宿る。彼女は心音のほうへ顔を向けた。「ここは守りが固すぎる。翼があったって逃げられないわ。もし一生ここに閉じ込められたら、誰かに助けてもらう以外、外へ出る方法はない」そして、ひと息置いて続ける。「でも、場所が変われば――その時に、逃げ出せる可能性が生まれる」……雲井家の人間は、相変わらず大規模な捜索を続けていた。一方で、星は普段通り仕事に出ていた。レイル国王がいったいどこに明日香を隠したのか。雲井家も朝陽も手を尽くしているが、手がかりはひとつも掴めていない。明日香の失踪によって、靖と澄玲の婚約も延期になった。妹の生死すらわからない状況で、兄が盛大に婚約する。そんなことは、世間体の上でも到底通らない。そして最近、急激に勢いを増している星。支持率はすでに靖と肩を並べ、彼もついに動かざるを得なくなっていた。星の予想通り、靖は人脈とコネを使って、彼女のプロジェクトや提携先に妨害を仕掛け始めていた。昼食の時間。星と彩香は、レストランで食事をしながら話していた。彩香が言う。「てっきり、あの人たち頭の中ぜんぶ明日香のことでいっぱいで、こっちに構ってる余裕なんてないと思ってたのに」星は落ち着いた声で答えた。「明日香の捜索には全力を尽くすでしょう。でも――彼女のために全部を投げ出すことはないわ」彩香は皮肉っぽく笑う。「なんだ。そんなに深い絆ってわけでもないのね」「家族としての情はある。でも、それだけよ」彩香は頬杖をつきながら尋ねた。「ねえ星、明日香って今どこにいると思う?D国かな?」星は首を横に振る。「M国にはいない。D国の可能性も高くないわ」彼女は淡々と続けた。「
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