「はい」……二日後、影斗は怜を連れて、星と仁志のもとを訪ねた。怜は翔太と同じく、仁志のことを心から尊敬している。会うたびに「仁志さん、仁志さん」と甘えるように呼び、すっかり懐いていた。その様子を見ながら、星は、怜の話をじっと辛抱強く聞いている仁志をちらりと見た。なぜだか、言葉にしがたい巡り合わせの気配が胸の奥をかすめる。怜と仁志に、まさか血縁があるなんて。だが溝口家は枝が多い。仮に関係があったとしても、きっと近い間柄ではないのだろう。縁もゆかりもない遠い親戚――そういう可能性だってある。……いや、そうでなければおかしい。溝口家の人間が、由紀の存在すら知らないはずがないのだから。「星ちゃん、聞いてる?」耳元で、低く艶のある男の声がした。星が振り向くと、影斗が心配そうにこちらを見つめている。「今日、ずっと上の空だ。何か悩み事でもあるのか?」星は、仁志が溝口家の人間だという話を影斗にするつもりはなかった。榊おばあさんの溝口家に対する態度を見れば明らかだ。彼女は溝口家の人間を心底嫌っている。恭平に至っては、名前すら口にしたがらなかった。それに影斗の姉は、あれほど才色兼備だったのに、連れ去られて監禁され、最後は心を病んで亡くなった。三歳の子どもだけを残して。姉への思いが深い影斗が、溝口家を好きになれるはずがない。仁志が溝口家の人間なのは事実だ。だが、彼のような端の存在まで巻き添えにするのは違う。星はさらりと話をすり替えた。「ううん。さっき展覧会に行くって話をしてたでしょ。それで、ある人のことを思い出しただけ」影斗が眉を上げる。「ある人?」星は少しだけ笑って続けた。「大学の頃、私の作品を買ってくれた女の子。絵が本当に好きで、見る目も鋭くて……でも、事情があって描くのをやめざるを得なかったみたい。それでも話してると分かるの。言葉の端々から、絵への愛が溢れてた」それを聞いて、影斗はようやく納得したように頷いた。「なるほど。星ちゃんと似た経験をしてるんだな」ちょうどlinの話をしたそのとき、星の携帯が震えた。メッセージを確認した星は、ふっと表情を和らげる。「今日、私が展覧会に行くの知ってて、写真を何枚か撮って送ってほしいって」影斗が画面をちらりと覗くと、たしかに相手の文面があった。【今日、
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