誠一が尋ねた。「正道は?あの人は何て言ってる。星に株をだまし取られたまま、放っておくのか?」明日香は答える。「星が忠兄さんの持ち株を手に入れてから、雲井グループの支持者と、父を支持する派の株主が……ほぼ互角になったの。今さら星が返そうとしても、株主たちが返させない。星は何も言わなくていいし、何もしなくていい。あの子を支持する株主が、勝手に全部片づけるわ」株主が見るのは情じゃない。利益だ。忠は能力に不安がある。会社は買いたたかれ、駆け引きも陰謀も星に敵わなかった。そんな人間に肩入れするのは、愚か者だけだ。勝てば官軍、負ければ賊軍。周囲にとっては、勝ち続けられるなら手段は問わない。かつての正道だって、どこまで潔白だった?――それでも支持を得た。いま起きていることも、結局は因果応報に過ぎない。正道が星に株を吐き出させたいなら、まず株主という関門を越えなければならない。利益第一の老獪な連中だ。黒を白と言いくるめることさえできる。忠の配信は、むしろ忠に不利な証拠として扱われた。明日香はさらに言う。「株主たちは言い切ったわ。父が追及を続けるなら、忠が公衆の面前で仁志を拉致して、刃物まで出した件を外に公表する。証拠を提出して、裁判官にも渡すって」綾羽が息をのむ。「それって……脅してるの?忠を刑務所に入れるってこと……?」明日香は無力に頷いた。今回は、ひっくり返すのが難しい。忠のことも放っておけない。一度見捨てれば、忠は必ず暴走する。家族と決裂し、矛先をこちらに向けてくる可能性すらある。だから、忠を切り捨てる選択肢はない。朝陽もそこは読んでいた。「忠への補償は、もう決めたのか?」明日香は言う。「父と靖兄、翔兄、それから私が、それぞれ1%ずつ忠に渡す。残りは……忠兄さんが自分で払うしかないわね」雲井家として忠の件を無視はできない。だが持ち株を元どおり10%補填するなんて、あり得ない。何より、罠を見抜けなかった責任の大半は忠本人にある。朝陽が確認する。「忠は受け入れたのか?」明日香は薄く笑った。「受け入れたわ。受け入れれば4%は残る。受け入れなければ1%もない。選ぶのは簡単でしょう」そもそも忠は、原株を得たとき、誰かに分けようとはしなかった。それでも家族が持ち株をかき集めて渡すのは、情けとして十
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