朝陽のいとこの中の一人が頷いた。「姉さんの言う通りね。溝口家は昔から目立たないし、どの一族の争いにも関わらない。うちは溝口家とほとんど接点がないのに、理由もなく葛西グループを狙うなんて不自然よ」皆であれこれ議論しても、結局これといった解決策は出なかった。株価を支えるために一定の資金は入れた。だが溝口家と札束の殴り合いをする気は誰にもない。冗談じゃない。溝口家と張り合うなど、自殺行為だ。一時の意地で金をドブに捨てるくらいなら、損を飲むほうがまだマシ。そんな判断に、会議は傾いていた。朝陽の甥の一人が言った。「いっそ代表を立てて、溝口家と話をしてみませんか。向こうに要求があるなら、言わせればいい。このままじゃ両方が傷つくだけで、損しかない」賛同が広がる。こちらから交渉に行くことを、恥だとは誰も思わない。彼らはもう血気盛んに意地を張る年齢ではない。金と喧嘩するのは、愚か者のすることだ。その時、誰かが黙り込んだ朝陽に気づいた。「朝陽。さっきから何も言わないな。まさか……溝口家と揉めたのは、お前なのか?」朝陽は疲れたこめかみを揉み、眉間に憔悴が滲む。隠す気もなく、淡々と答えた。「……そうだ。俺は溝口家の当主を怒らせた」一同が凍りついた。朝陽の兄が机を叩いて立ち上がり、指を突きつけて怒鳴る。「朝陽!よりによって、なんで溝口家を敵に回す!あいつら一族がどんな連中か知らないのか。偏執の狂人ばかりだぞ!お前はいつも冷静で分別があるだろう。どうしてこんな馬鹿な真似を!」他の兄が何かを思い当たり、顔を曇らせた。「朝陽……まさかこれも、明日香のためか?怜央の件も妙だった。家主があんな末路を迎えるなんて、誰かの逆鱗に触れたとしか思えない。だが普通の人間に、怜央みたいな男を落とせるはずがない。対抗できるのは――同格の家主だけだ」思い当たったように、兄の顔色が変わる。「まさか……怜央が敵に回したのも、溝口家の当主だったのか?」その一言で、会議室はざわついた。ひそひそ声が交錯し、次々に言葉が飛ぶ。「だから言っただろ。明日香は厄介者だ、疫病神だって。お前らが信じないからだ。あいつと近い人間で、まともな結末を迎えた奴がいるか?朝陽、明日香は絶対に嫁に取るな。これからは関わるのもやめろ」「明日香は持ち上げられてるだけで
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