彼女はやわらかな声で言った。「司馬さん。少しだけですが、自分でお料理を作ってきたんです。召し上がっていただけたら……すぐに帰りますから」怜央は淡々と答えた。「さっきもう食べた。今はあまり食欲もない。持って帰ってくれ。それと――これからは用事がないなら、見舞いに来なくていい。俺たちは、そこまで親しい関係じゃないだろ」その言葉に、明日香の顔から少しずつ笑みが消えていく。怜央は一切、容赦しなかった。ここで食い下がれば、さらにきつい言葉をぶつけられるかもしれない。――そうなれば、本当に取り返しがつかなくなる。明日香は静かに言った。「司馬さんがお休みになりたいのでしたら……これ以上はお邪魔しません」そう言うと、そのまま部屋を後にした。だが――自分で作ってきた料理だけは、持ち帰らなかった。それに気づいた怜央は、秘書に短く言い放つ。「明日香が持ってきたもの、お前が食え」秘書は彼の顔色をうかがいながら、逆らうこともできず、黙ってそれを持ち下がった。怜央は再び、窓の外へ視線を向ける。ただぼんやりと、何かを考えるでもなく――……彩香が仁志の見舞いに訪れたとき、はっきりと感じた。――星と仁志の間に流れる空気が、以前とはどこか違う。思わず、心の中で感心する。――仁志、やるじゃない仁志は、本当に頭の回転も速く、人の心を読む力も優れている。雅臣なんかとは比べものにならない。今の様子を見る限り――美人を手に入れるのも、もう時間の問題だろう。仁志の傷は深かったが、幸い骨には達していなかった。ようやく皆、レイル家の話をする余裕も出てきた。彩香が口を開く。「D国の王宮で起きたあの火事、どうやら怜央の仕業らしいわ。レイル国王、今は明日香を相当恨んでるみたいで……とんでもない額の懸賞金までかけて、捕まえようとしてるらしい」星はここ最近ずっと病院に付き添っていて、外の状況にまで気を回す余裕はなかった。その話を聞き、少し驚いた様子で言う。「レイル国王が狙ってるのって、明日香なの?てっきり私と仁志だと思ってた」彩香も首をかしげる。「そうなのよ。狙われてるのは明日香」一度言葉を区切り、続けた。「聞いた話だとね、もうすでにレイル側は明日香を捕まえるために人を送り込んでたらしいの。でも明日香って、運がいいのよね。空港でちょ
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