プロのボディーガードである侑吾は、並外れて鋭い直感と、人並み以上の感受性を持っていた。だがこれまで何度か顔を合わせた怜央からは、あの男が危険人物だという気配を、一切感じ取ることができなかった。そして今――目の前の仁志を見て、侑吾が驚いたのは別の点だった。星の彼に対する態度が、どこか他の人間とは違って見えるのだ。ぱっと見では、特に変わった様子はない。だが言葉の選び方や立ち振る舞い、表情や視線の端々に、はっきりとした違いが滲んでいる。侑吾の姿を認めると、仁志はわずかに眉を上げた。そして視線を星へと移す。漆黒の瞳が彼女を射抜く。口元には笑みが浮かんでいるが、どこか無言の圧を感じさせる。「星野さん、そちらは……?」星は反射的に答えた。「彼は浅野侑吾。彩香が紹介してくれたボディーガードよ」星のボディーガードに選ばれる以上、侑吾は腕が立つだけでなく頭の回転も速い。すぐに柔らかい笑みを浮かべる。「仁志さん、浅野侑吾です。星さんと同じように、侑吾で構いません」その言葉に、仁志の瞳がわずかに揺れた。「……俺のことを知っているのか?」「ええ。星さんや彩香さんから、よくお話は聞いています」実際のところ、彩香はよく彼の話をしていたが、星自身が話題に出すことはほとんどなかった。仁志は一目で見抜く。侑吾が気を利かせて当たり障りのないことを言っているだけだと。だがそれを指摘することはなく、微笑んだまま続けた。「会ったことはないはずだろう?どうして俺だと分かった?」侑吾は照れくさそうに頭をかき、少しはにかむ。「いやぁ……仁志さんみたいな雰囲気の人、なかなかいませんから。一目で分かりました」仁志はしばらく彼を見つめ、それから口を開いた。「ちょうど星野さんと飯に行くところだ。一緒にどうだ?」ボディーガードとして、侑吾は当然、星の安全を確保する必要がある。返事をしようとした、その瞬間――「いいえ。侑吾は来ないわ」星が先に口を挟んだ。侑吾は一瞬で意図を察し、すぐに言い直す。「そうなんです。ちょっと用事がありまして。今回は遠慮しておきます」そう言って軽く頭を下げ、空気を読んでその場を離れた。侑吾が去ると、星はなぜかふっと肩の力を抜いた。二人の関係は、あくまで上司と部下。
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