Tous les chapitres de : Chapitre 1701 - Chapitre 1703

1703

第1701話

あちらの件が片付いたのか、それとも怜央の異変に気づいたのか――いずれにせよ、彩香が様子を見に来た。星は怜央に目をやると、数歩後ろに下がり、個室のドアを開けた。今度は、怜央は止めなかった。ただ静かに、星の去っていく背中を見つめていた。ドアがゆっくり閉まり、視界から完全に消えるまで。怜央は頭を垂れ、肩に刺さったナイフへ視線を落とす。――心臓は狙っていなかった。つまり、彼女はもうそこまで自分を憎んでいないのかもしれない。本当は、死んでほしいとは思っていないのかもしれない。……星が無事に個室から出てくるのを見て、彩香は明らかに安堵の息を漏らした。「星、無事で本当によかった……」星の瞳がわずかに揺れる。「彩香、どうして私に何かあったって分かったの?」彩香は驚いた表情を見せた。「えっ、星、本当に何かあったの?」星は歩きながら言った。「大したことじゃないよ。ただ……怜央に会っただけ」彩香の顔に、尊敬の色が浮かぶ。「やっぱり仁志、すごいよね。あなたに電話したけど繋がらなくて、それで私に連絡してきたの。私はちょっと用事があって一緒にいないって伝えたら……あなたを探して、何かあったか確認してくれって。あ、そうだ、星。もう向かってきてるよ」星は言った。「彩香、怜央に会ったことは、絶対に仁志には言わないで」彩香は一瞬呆然としたが、すぐに意味を理解した。仁志は神谷グループを潰し、イーサン王子を殺し、数日前には公の場で怜央に発砲までしている。彼は溝口家の当主で、誰も簡単には止められない存在だが、その影響は決して小さくない。もし今回のことを知れば――彼の性格なら、間違いなく怜央を殺しに行く。これ以上、仁志の手を血で汚させるわけにはいかない。彩香は頷いた。「分かった」星は続ける。「あとで侑吾と拓海にも伝えて……いや、やっぱりやめて。あなた、隠し事苦手でしょ。しばらく仁志の前には出ないで。拓海と一緒に、あの御曹司の件を処理して」彩香は普段こそ仁志に情報を流しているが、大事な場面ではちゃんと分別がつく。まして星に頼まれたことを、他人に漏らすことなど絶対にない。「うん、任せて」それから好奇心を抑えきれずに尋ねた。「でも星、怜央がまた来たのって何?もしかして、明日香を私たちが拉致したって疑って、人を出せって迫ってき
Read More

第1702話

その頃には、すっかり日も落ちていた。きらびやかな灯りが夜の闇を照らし、まばゆい光の帯を揺らめかせている。仁志は黒のスーツに身を包み、濃密な夜景の中でもひときわ鮮烈な存在感を放っていた。背後に広がる漆黒の夜ですら、まるで彼を引き立てる背景のようだ。端正な眉目には、わずかに陰りが差している。だが星の姿を目にした瞬間、その表情はわずかに和らいだ。向かってくる途中で、星が無事だという知らせは受けていた。それでも自分の目で確かめるまでは、どうしても安心できなかったのだ。仁志は星の前に立つと、彼女に怪我がないこと、顔色にも異変がないことを確認し、ようやく少し胸をなで下ろした。星は自分から仁志の手を握る。「商談のとき、携帯をマナーモードにしてただけ。だから電話に気づかなかったの。仁志、心配しすぎだよ」星は会議や商談の際、相手への礼儀として普段から携帯を消音にする癖がある。その習慣は、仁志がまだ彼女のボディーガードだった頃から変わっていない。彼女の説明に、不自然なところは何ひとつなかった。仁志はそっと星を抱きしめる。そうして初めて、宙ぶらりんだった心が元の場所に戻った気がした。「お前を想ってる人間が多すぎる。誰かに奪われるんじゃないかって、心配になる」言った本人に他意はなくても、聞く側には刺さる。星の瞳の奥を、かすかな揺らぎがよぎった。幸い、そのとき仁志は抱きしめたままで、表情までは見えない。もし見られていたら、きっと気づかれていただろう。本当に、怜央は厄介なことをしてくれた。怜央の告白を星は信じたわけではない。けれど心のどこかに、ほんのわずかな疑念が芽生えてしまったのも事実だった。その割合は決して大きくない。だが、星の心を揺らすには十分だった。この話題を続ければ、仁志に何か悟られるかもしれない。そう思い、星は話を変えた。「仁志、今日すごくきっちりした格好してるね。さっきまで仕事だったの?」「うん。少し商談をしていた」「前にずっと私のそばでボディーガードしてたから、仕事ってあまりしてないのかと思ってた」仁志は星を抱いたまま、なかなか手を離そうとしない。「普段、お前は大半の時間を自分のオフィスで過ごしてるだろ。その合間とか、夜に戻ってから、重要な案件を片づけてたんだ。それに以前の溝口家は、外との提携が
Read More

第1703話

仁志の黒い瞳が、じっと星の目を射抜いた。「星。お前を助けることと、一緒になることは別の話だ。そんなに負担に思わなくていい」星が何か言おうとしたその瞬間、仁志はすらりと長く白い指を彼女の唇に軽く当て、言葉を遮った。「たとえ俺たちが結ばれなかったとしても、お前を助けたことを後悔することはない……もう、この話はやめよう。まだ夕食も食べてないだろ?先に食事に行こう」星は小さく頷いた。「うん」二階の一室では、怜央が青白い顔で窓辺に立ち、二人が去っていく後ろ姿を見つめていた。……レストランで注文を済ませたあと、星は仁志に今後の方針を尋ねた。「仁志、本当に溝口家の事業の中心をM国に移すつもり?」仁志は星に水を注ぎながら答える。「ああ。M国は世界経済の中心だ。大手一族や企業の多くが根を張っている。溝口家も試す価値はあるだろう。でも、溝口家はM国に地盤がないよね。事業の中心を移すなら、ゼロからのスタートになるじゃない」ゼロからの出発は、そう簡単なことではない。だが仁志は既に腹を括っているようだった。「構わない。俺はもともと、挑戦があるほうが好きだ。ただ……」その瞳は深く静かで、唇の端に微かな笑みが浮かんでいる。どこか含みのある色気が滲んでいた。「ゼロから積み上げるのは確かに面倒だ。俺がお前を支えられるまでに育てる頃には、もう手遅れかもしれない。だから、多少は近道を使う必要があるな」星はまぶたをぴくりと動かす――また誰かが痛い目を見る気がしてならなかった。夕食を終えた後、星にはまだ雲井グループで片づける仕事が残っていた。仁志は彼女に付き添い、雲井グループへ戻ることにした。ビルに入ると、ちょうど雲井グループから出てきた翔と鉢合わせた。二人の姿を見て、翔の足が一瞬止まる。彼は冷ややかに言い放った。「星。明日香の失踪にお前たちが関わっていると分かったら――俺は絶対に許さない」そう言い残すと、彼は足を止めることなく大股で去っていった。それに対し、星も仁志も特に反応は示さなかった。もう慣れきっていたのだ。オフィスに戻った後、仁志が口を開いた。「雲井家はまだ、明日香の居場所を掴めていないのか?」星は首を振る。「うん。まだ何も。前に忠が騒いだけど、怜央にミスリードされて、明日香を探す絶好のタイミングを逃したらしい
Read More
Dernier
1
...
166167168169170171
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status