「その上、あなたの失踪と偽装死が刺激になって、以前かけた催眠が揺らいでしまったの。今、彼を治療できる唯一の方法は、もう一度催眠を行うことなの」そこで美咲は一度言葉を切った。その声には、かすかな嘲りが混じっている。「仁志はとても頭がいいの。多分私たちよりずっと早く、自分の異変に気づいていたはずなの。だからこそ隠していたの」静かに続ける。「星。患者が自分の病気のことを何も知らないなんて思わないで。むしろ彼は、私たち以上に自分の状態を理解しているの」一拍置く。「本人にしか分からないことがあるから」美咲の声は淡々としていた。「溝口家の遺伝病は、別に秘密なんかじゃないの。歴代の当主たちはみんな、自分の病状について真剣に、体系的に学んできたわ。病の進行を遅らせる方法や、治療法を探すためにね」そして、はっきりと言った。「仁志が隠すと決めたその瞬間から、彼は分かっていたの。唯一の治療法が催眠であることを。でも、彼は催眠を受けたくなかった。あなたを忘れたくなかった。だから、周りを欺くことを選んだ」星は眉をひそめた。「でも、隠したところで仁志にいいことなんてない。むしろ悪化していくだけでしょう。仁志ほど賢い人が、それに気づかないはずない」美咲は言った。「その通り。あなたと一緒にいたいなら、病状の悪化を放置するわけにはいかない」声が少し低くなる。「だから彼は、別の治療法を見つけたの」「別の治療法?」美咲は答えず、逆に問い返した。「あなたは気づいていないか?最近の仁志のやり方が、以前とは違っていることに」星は息をのんだ。その瞬間、美咲の言いたいことを理解してしまった。続く美咲の説明は、星の考えとぴたりと重なる。「仁志は、自分がこれ以上刺激を受けてはいけないと分かっている。だから、彼を刺激する可能性のある人間や出来事を、先に排除しようとしているの。最初は航平。次に靖、朝陽」そして、美咲は静かに告げた。「悠白と明日香が婚約したと聞いた。次は、悠白でしょう」星は反射的に言った。「でも、仁志は悠白には手を出さないって……」美咲はその言葉を遮った。「星。今の仁志は、もうあなたの知っている仁志ではない」声は冷静だった。「彼は病んでいるの。もう変わってしまったわ。彼の言
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