綾羽が一番嫌いなのは、明日香のこの上から目線だった。怒りで頭が真っ白になった綾羽は、お嬢様らしさなんてどこかへ吹き飛んで、明日香に飛びかかった。爪を立てて顔を引っ掻き、髪を掴んで引っ張る。明日香も反射的に抵抗した。ふたりは病院の入口で取っ組み合いを始めた。野次馬が集まってきた。中には携帯を取り出して撮影を始める人もいた。病院のある病室では、仁志がバルコニーに立ち、入口で起きている騒ぎを静かに眺めていた。……星が仁志のお見舞いに来たのは、様子を探る目的もあった。しかし明日香と綾羽がいる前では、仁志と何かを話せるはずもない。星はそのまま引き返すことにした。怜央の事故は命に別状はなかったものの、意識が戻らない状態が続いていた。怜央が昏睡している間、司馬グループの株主たちは次々と動き始めた。星に株式を返還させようと圧力をかけてくる者まで現れた。しかし今の星は、圧力や脅しで屈するような立場にはなかった。雲井グループでは誰も逆らえない発言力を持ち、盟友には各大家族の当主たちが名を連ねている。今や星の基盤は、怜央よりも盤石だった。だからこそ、司馬グループの株主たちや司馬家の人間は、どうしても星を追い出したかった。星が本気で司馬グループの実権を狙えば、当主が変わるのは時間の問題だとわかっていたから。怜央が昏睡している隙に一泡吹かせようとしたのだが、結局、怜央なしでも星にはまったく手が届かないと思い知らされた。星は司馬グループの力を使って、海瑟の権力奪取を後押しして当主の座に就かせた。そして今度はヘイザー家を使って司馬グループを牽制し、自分の立場を固めている。さらに手持ちの株式も加わって、対処することがほぼ不可能な状態になっていた。一週間後、怜央がついに意識を取り戻した。その知らせを受けて、星は病院へ向かった。怜央が昏睡していた間に、悠真は事故の経緯を調査しており、司馬グループの株主グループが関与している疑いが浮上していた。悠真は今、意識を取り戻したばかりの怜央に状況を報告していた。「怜央さん、昏睡中および治療期間中の身辺警護は、星さんが全て担ってくださいました。その間、暗殺者と思われる集団を三度にわたって阻止しています」それを聞いて、怜央の目がかすかに動いた。「星が……俺を守ってたのか?」怜央の星への気持ちを知っている悠真
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