「でっち上げておいて謝りもしないなんて、どんだけ性格悪いのよ」「そりゃ彼氏にも大勢の前で見捨てられるわ。あんなイケメンの彼氏を大事にもしないで、トラブルばかり起こして。自分がどれだけわがまま言っても、彼氏がずっと愛してくれるとでも思ってたのかしらね?ヒロイン気取りもいい加減にしてほしいわ」「写真撮ってSNSに晒しちゃおうよ。このかまってちゃんを有名人にしてあげよう」今や、野次馬たちの興味はすっかり清子と雅臣の修羅場へと移っていた。中には、野次馬根性丸出しで、逃げる清子の後を追いかけていく者までいた。騒ぎの中心が去り、人だかりはあっという間に散っていった。清子があんな騒ぎを起こしたせいで、星もすっかり温泉に浸かる気分ではなくなってしまった。彼女は視線を上げ、仁志の様子をちらりと窺った。仁志は先ほどの騒動など全く意に介していない様子で、温泉に浸かりながら気持ちよさそうに目を閉じていた。……結局、清子と雅臣が戻ってくることはなかった。星と仁志が温泉を出る頃には、すっかり日が落ちて、辺りは暗闇に包まれていた。宿への帰り道、仁志がふと尋ねた。「あの小林清子という女性は、どうして君を見るなり、親の仇のように目の敵にして陥れようとしてきたんだい?過去に何か因縁でもあったのか?」星は首を横に振った。「彼女は私と同じA音大出身らしいけど、接点なんてなかったし、顔を合わせたこともないわ。どうしてあそこまで私を敵視するのか、私にもよく分からないの」ふと、星は何かを思い出したように言い淀んだ。「もしかしたら……神谷さんが関係しているのかしら?私、前にレストランで彼と会った時、汚してしまったジャケットを弁償するためにLINEを交換したのよ。もしかして、そのやり取りを彼女に見られたんじゃないかしら?」仁志の足がピタリと止まった。夜の闇に紛れて彼の表情はよく見えなかったが、その声のトーンはどこか冷ややかだった。「君が彼とLINEを交換したって?」星は頷いた。「ええ、服の弁償をするためだけにね」仁志はそれ以上何も言わず、ただ黙々と前へ歩き始めた。しかし、彼が纏う空気は、先ほどよりも明らかに数度冷え込んだような気がした。星もなぜだか分からなかったが、思わず言い訳をするように付け加えた。「弁償したらすぐに削除するつもり
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