「ましてや、あのワーナー先生の弟子の名義で手に入れたあのスタジオや、彼女が書いた曲まであるのよ」清子の顔に浮かんでいた笑みが、ぴたりと消えた。雅臣のその言葉には、星に対するわずかな負い目が滲んでいるように感じられた。一度でも彼が彼女に対して負い目を抱けば、その天秤は星の側に傾いていく。こうしたことを、雅臣がまったく分かっていないわけではない。自分のやり方が間違っていることなど、とうに承知の上だ。それでも、清子の最後の音楽会が成功するまでは、何もかも彼女に譲らなければならない。もし雅臣が、自分の病が嘘だと知ってしまったら――今手にしているものは、すべて容赦なく奪われるに違いない。そんなことは絶対にさせない。そう思うと、清子の瞳に冷ややかな光がよぎった。――数日後星の携帯に、清子から電話が入った。「星野さん、ワーナー先生にあなたの演奏会をお願いしてみたけど......ワーナー先生、あなたにあまり良い印象を持っていないようで、協力は難しいそうよ」そこで彼女はいったん言葉を切り、柔らかく続けた。「でも、いったん約束した以上、必ず実現させるわ。そこで、雅臣と勇に頼んで、私たちでコンサートをスポンサーすることにしたの。星野さん、もし興味があればどう?」星は即座に答えた。「ええ、喜んで」電話口の清子が、一瞬だけ言葉を飲み込んだのが分かった。「分かったわ。明日は宣伝用の撮影があるから。もし興味があれば、そのときにいらして」「じゃあ、会場の住所を送っていただける?」電話を切ったあと、清子の瞳に氷のような冷たい光が宿った。ここまで言っても、まだ彼女は自分の側に近づこうとする。その目的が演奏ではなく、雅臣だとしたら――最近、勇と自分は、ことごとく星の前で煮え湯を飲まされている。雅臣は助けてくれるけれど、その彼でさえ、最近は星の肩を持ち始めた。そうでなければ、星が彼を刺したというのに、今ものうのうと目の前に現れているはずがない。ノックの音がして、勇が渋い顔で入ってきた。「清子、あの先輩たち本当に手強い。お前がワーナー先生の弟子だってことまで持ち出したのに、全然取り合ってくれないんだ。いっそ、ああいう人たちを特別ゲストに呼ぶのはやめて、同門の兄弟弟子を呼んだ
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