彼らは最初、遥香が突然チームに加わったことを快く思ってはいなかった。だが、この二日間の接触で、遥香の実力が決して劣らず、むしろ自分たち以上だと知った。さらに、修矢の妻でありながらも、遥香は謙虚で控えめな人柄だった。そのため、彼らも次第に最初の偏見を捨てていったのだ。ただ、まさか遥香がこんなにも気の毒な立場に置かれるとは、誰も思っていなかった。夫は確かに遥香を守っているはずなのに、その隣には別の女がいる。「もういい、余計なことは言うな」どこからともなく現れた淳一が、大輔と和世を睨み、低い声で諭した。「これはあくまで家庭の問題だ。我々外の人間が口を挟むことじゃない」そう言われ、周囲の人々はしぶしぶ散っていった。人だかりを追い払った後、淳一は遥香の方へ歩み寄った。しかし、修矢がもう一人の女の手を握っていないことに気づいた。彼は心の中で毒づいた。この若造どもは目が節穴なのか、目の前の事実すら見抜けないとは。「川崎さん、まだ修復が必要な文化財がありますが、今時間は大丈夫ですか?」遥香は淳一を見やり、ふっと笑みを浮かべた。「時間はあります。今すぐ見に行きましょう」淳一は感心したように頷いた。「ありがとうございます。それじゃあ急ぎましょう。この部分の修復を終わらせたいんです」「遥香……」修矢が呼びかける。遥香は一瞬足を止めたが、振り向くことなく歩み去った。修矢の傍らにいた柚香は、その背を見送りながら、目の奥に得意げで狡猾な光を浮かべた。遥香はむしろ自分を仕事に没頭させることで、修矢と柚香の存在を忘れようとした。気づけば作業は深夜まで続いていた。夜半、巡回に来た淳一が修復室でまだ作業を続けている遥香を見つけ、唇を引き結んで言った。「川崎さん、もう遅いんです。先に戻って休んでください。明日の状態と進行に響いてしまいます」そして、遥香は追い返された。長く働いたせいで腹が減り、遥香は食事を買いに出た。だが戻ってきた時、ちょうど柚香が修矢の部屋に入るところを目にしてしまった。遥香の手にしていた弁当箱が危うく落ちそうになる。疲れ果てた遥香は自室に戻ったが、頭の中にはどうしても柚香が修矢の部屋へ入っていく光景が浮かび、眉間を押さえた。ドアに寄りかかってしばらくぼんやりしていたが、向かいのドアが開く気配は一向
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