品田は安堵の息をつき、遥香に感謝の眼差しを向けた。「遥香様、本当にありがとうございます。あいつらはただのごろつきですから」彼はため息をついた。「社長はこのプロジェクトで大きな損失と重圧を背負っています。株価は下がり続け、取締役会からも不満の声が上がっています」遥香の胸はざわついた。修矢は考古作業に協力するために、確かに多くを犠牲にしていた。あの冷たい株価の数字の背後には、莫大な資金の蒸発があった。口では「好きにやれ」と言っていたが、その犠牲は重く心にのしかかっていた。彼女は品田にうなずいた。「わかった。先に帰って。ここは私たちに任せて」品田は返事をして立ち去った。遥香は和世を連れて仮設の作業小屋に入った。中は明るく照らされ、大輔が既に到着しており、山積みの破片を前に頭を抱えていた。遥香の姿を見ると、彼は救世主でも見たかのように表情を緩めた。「遥香、やっと来てくれた!隊長から最後通告だよ。明朝までに初歩的な整理と分類を終わらせなきゃならないんだ!」遥香は気持ちを落ち着かせ、脆い彫刻の破片に視線を落とした。それらは千年の眠りから目を覚まし、再び陽の光を浴びたが、現実の世界に大きな波乱をもたらしていた。修矢の苦境、考古作業の切迫、そして労働者たちの醜い顔。暗闇を裂く稲妻のように、大胆な考えが突然彼女の脳裏に形を成した。彼女は振り返り、別の場所で作業を指導している隊長の淳一を見つけた。「隊長」遥香は口を開いた。「相談したいことがあります」淳一は顔を上げ、眼鏡を直した。「川崎さん、どうしたんですか?」「彫刻修復の過程をライブ配信したいんです」淳一は一瞬固まった。「ライブ配信?それは適切でしょうか。文化財修復には絶対的な静寂と集中が必要ですし、多くの技術的な細部は機密です。現場の状況も複雑ですし、もしものことがあれば……」「隊長の懸念はわかっています」遥香は早口ながらも明晰な思考で彼の言葉を遮った。「配信内容は選別できます。公開に適した修復の手順を中心にし、一般向けに彫刻の知識を広め、文化財の脆さや修復の困難さを示すことに重点を置くんです。さらに重要なのは……」彼女は一呼吸置いて強調した。「今、工事中止の件で尾田グループに多くのネガティブな憶測が渦巻いています。古墳の価値に疑問を投げかけ、これほどの
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