疲れていた。本当に、心の底から疲れ果てていた。ただ静かにハレ・アンティークを守り、彫刻の修復に専念し、穏やかな暮らしを送りたい――それだけだった。たとえ心の奥に、修矢への想いがまだ完全に消え去っていなくても。しかし、二人はやはり相容れない。いずれまた互いを傷つけ合うくらいなら、今のうちにすべてを断ち切った方がいい。遥香はそっと目を閉じ、もう一度開いたとき、その瞳には疲れきった澄明な決意だけが宿っていた。揺り椅子のそばへ歩み寄ると、修矢は目を閉じて休んでいた。「修矢さん」彼女は小さな声で呼びかけた。修矢は目を開き、彼女を見た。その顔色が優れないのに気づき、胸が締めつけられる思いで問いかけた。「どうした?」遥香は唇を噛み、役所から電話があったことを簡潔に告げた。修矢の体がわずかに強張った。離婚の件――彼自身もほとんど忘れかけていたのだ。遥香は彼をまっすぐに見つめ、小さな声で、しかしはっきりと言った。「30日以内……手続きを済ませましょう」修矢の心は、重く沈み込んでいった。彼が見つめた遥香の顔には、もはや以前のような怨みや未練はなく、すべてを受け入れたかのような疲労と決意だけが浮かんでいた。――彼女は本当に、別れを決意したのだ。たとえ自分を救ったのが彼女だと知っていても、たとえ柚香への私情がないとわかっていても、彼女は離婚を選んだ。それは父・政司のせいなのか。巻き込まれるのが怖いからなのか。それとも――本当に自分に完全に失望したのか。修矢の喉は締めつけられ、声にならない思いが込み上げた。どうしても言いたかった。もう一度だけチャンスをくれないかと。自分は彼女を守れるのだと伝えたかった。「……遥香、俺は――」彼は掠れた声を絞り出し、復縁の言葉を口にしようとした。しかしその瞬間、彼の顔色がさっと白くなり、胸を押さえて眉を深く寄せ、呼吸が荒くなった。「どうしたの?」遥香はその様子に慌てふためき、離婚のことなど忘れて駆け寄り、彼を支えながら問いかけた。「傷が痛むの?それともどこか具合が悪い?」修矢は彼女の肩にもたれかかり、顔は蒼白に染まり、額には細かな冷や汗が浮かんでいた。弱々しい声で答える。「大丈夫……さっき少し風に当たったせいだろう。めまいがして……胸も苦しい……」そう言うや否や、彼は激
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