遥香は買い物を終え、ちょうど店を後にしようとしていた。出入口に差しかかると、少し離れた場所に見覚えのある車が停まっているのが目に入った。するとドアが開き、奈々が車から降りてきた。彼女は今日もセクシーな装いに身を包み、顔には手の込んだ濃い化粧を施していたが、その表情には隠しきれない疲労と嫌悪が滲んでいた。続いて運転席から降りてきたのは、審査員の真成だった。彼は降りるなり奈々の腰に手を回す。奈々は一瞬体をこわばらせたものの、作り笑いを浮かべて応じていた。二人が小声で言葉を交わしたあと、真成は車を走らせて去っていった。奈々はその場に立ち尽くし、車が遠ざかるのを見送っていたが、笑みはたちまち消え去った。彼女はバッグからウェットティッシュを取り出し、真成に触れられた箇所を強く拭った。まるで汚れたものに触れてしまったかのように。遥香は塀の影に身を潜め、その一部始終をはっきりと目に収めていた。すぐにスマホを取り出し、奈々に向けて録画を開始する。車内や他の場所で何をしていたかは映せなかったが、真成の車から降りる奈々の姿、そして今の彼女の表情や仕草だけで十分に想像をかき立てるものだった。奈々は気持ちを整え、深く息を吸い込むと、ハイヒールの音を響かせながら路地を出ていった。だが、その背中にはどう見ても狼狽の影が滲んでいた。遥香はスマホをしまい、映像に映る奈々の歪んだ顔を見つめ、口元に冷ややかな笑みを浮かべた。奈々、勝つためなら本当に何でもするのね。けれどその「努力」が、あなたを押し潰す最後の一押しになるかもしれない。病院の病室には、いまだに強い消毒液の匂いが漂っていた。実穂はようやく昏睡から目を覚まし、顔は紙のように青白く、唇は乾ききっていたが、大きな瞳だけは懸命に焦点を結び、ベッドのそばに付き添う慶介を見つめていた。慶介はほとんど反射的に彼女の動きを察し、血走っていた目が瞬時に輝きを取り戻した。彼は実穂の手をぎゅっと掴み、興奮で声を震わせた。「実穂!目を覚めた!やっと目を覚ました!」遥香と修矢も知らせを受け、すぐに病院へ駆けつけた。彼らが病室のドアを開けると、慶介が実穂の手をしっかり握り、目は真っ赤で涙が止まらずに流れていた。普段はふざけてばかりでまともなところがないように見えるその男が、今は子供
Read more