ルシアンが帰った後、エマは宿の建物から出ることなく、ゆっくり過ごした。 自室にある書き物用の机に座り、まずは、王太子宛てに報告書を書く。明日、アズレーヌの街を出発することもしたためた。 「王子のところに上がってきた報告書の内容と、筆頭補佐官の返答と、視察した現場の状況……これだけ書けば大丈夫かな」 おそらく、ルシアンが言ったように、ワイール領では不正が行われている。 エマの報告をきっかけに、王太子が動いてくれるだろう。 「あとは……王子がここにいたことも、書いた方がいいかな」 レオナールのことを考えるだけで、身が縮むような気持ちになる。 (あのとき……目が合った気がしたけど、大丈夫だよね?) 気のせいだと思いたくて、ナタリナにもそのことは言えなかった。ナタリナだって、レオナールたちには散々嫌な思いをさせられているのだ。 明日、平民街の西口の門から出れば、レオナールに見つかることなく王都へ戻れる。 物思いにふけっていると、ナタリナが部屋に入ってきた。 「エマ様。休憩されてはいかがですか?」 「もう少しで終わるから大丈夫だよ。ユリック殿に宛てて出すから、早馬で届けて欲しいんだけど……パトリックに頼んで大丈夫かな?」 「そうですね。パトリックは中隊長ですし、今回の公務では護衛騎士として記録されてますから、不審に思われることもないでしょう」 ナタリナも笑顔で頷いてくれた。 お忍び中なので、伝令を頼む際に、エマやナタリナの名前は使えないのだ。 エマは急いで、レオナールの噂や目撃情報などを綴って、封をした。 ナタリナに呼ばれたパトリックが入室したので、手紙を託す。 「パトリック。これはユリック殿宛ての手紙なんだ。急ぎだから、早馬を手配してもらってね」 「かしこまりました」 パトリックは頷き、手紙を丁重に受け取った。 すぐに下がるかと思ったけど、パトリックは意外なことを提案する。 「エマヌエーレ様。明日の朝に出発と聞いて
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