エマはナタリナを慰めるように答える。 平民嫌いのレオナールが、平民も出入りする店に足を運ぶなんて、誰が予想できただろう。エマも実際にこの目で見なければ、今でも信じられずにいたはずだ。 「あっちも、お忍びなんだよね?」 レオナールは、令嬢達に「レオン様」と呼ばれていた。エマ達と同じように身分を隠して行動しているはずだ。 ナタリナは苦々しい顔で答える。 「謹慎中にもかかわらず、脱走してここへ来たのでしょう。担当している直轄領ですから、融通が利くでしょうし」 「それに、ワイール伯爵夫人は、側妃の妹だもんね」 「侯爵の後ろ盾と身分を笠に着て、やりたい放題しているようです。罰から逃れ、平然と遊び回るなど、何の反省もしていない証拠ですわ」 ナタリナは憤慨しながら、さらに言い募ろうとする。 しかし、ルシアンが口を挟んで止めた。 「その件は、ひとまずおいておこう。今日はもう宿に戻りましょうか?」 ルシアンが穏やかな笑顔で、エマを覗きこんだ。 背中を撫でる手が優しくて、強ばっていた体から力が抜けていく。 ひどく緊張していたことに気付き、また息を吐き出した。顔を上げると、ナタリナや双子、護衛たちが心配そうな顔でエマを見ている。 せっかく街に出て、今から観光しようと思っていたけど、続きを楽しむ気分にはなれなかった。 (みんなには申し訳ないけど……安心できるところに行きたい) レオナールと遭遇した衝撃はあまりに大きく、エマは無意識にルシアンの外套を掴んだ。 ルシアンは優しく微笑み、エマの頭を撫でる。 「では、今日は戻りましょう。温泉に浸かれば、気持ちも落ち着きますよ」 「温泉?」 「ええ。後で一緒に入りましょう」 そっと囁かれ、ドキッとした。 (ルシアン様と、湯浴み……?) 浴槽が広いとナタリナが話していたことを思い出し、エマは頬を染めた。 ルシアンはニコリと笑みを浮かべ、それからナタリナたちに指示を出す。
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