All Chapters of 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる: Chapter 71 - Chapter 80

86 Chapters

第70話 女装なんて似合わない

     ルシアンが軽く頭を下げて詫びる。  ナタリナは驚いたように瞬きした。伯爵であるルシアンが侍女に頭を下げるなど、普通はありえないからだ。 「いえ……デイモンド伯爵に頭をお下げいただくようなことではございません。私こそ、出過ぎた真似を致しました」  ナタリナは頭を下げて、エマの後ろに控える。  クロエはエマを見つめて、嬉しそうに微笑んだ。 「ルシアン殿の仰ったとおり、素晴らしい素材ですわ」 「クロエ。言葉を選んで下さい」 「ま、わたくしったら、つい」  クロエはクスクスと笑って、控えていたメイドに合図を送る。  そして、エマの前で深く膝を折った。 「エマヌエーレ様。本日はわたくし、クロエが、着替えをお手伝いさせて頂きます」 「あ、ルシアン様が仰っていた、変装のことですか?」 「さようでございます。エマヌエーレ様には、こちらをご用意いたしました」  そう言ってクロエが指し示した先には、可愛らしいドレスが数着ある。黄色に薄桃色、水色と黄緑と、春らしい色合いのものばかりだ。 「あのっ、これは、女性のドレスでは……?」  エマが戸惑っていると、クロエはにこやかに頷く。 「ええ。このお姿でしたら、外出されてもエマヌエーレ様だとは気付かれませんわ」 「え、でも……!」 (僕がドレスなんて、似合うはずないよね?)  女装をするのだと言われて、エマは及び腰になった。  とっさにナタリナを振り返ると、なぜか感心したような顔をしている。 「たしかに、エマ様によくお似合いかと思いますが」 「ナタリナ!?」 「エマ様は、とてもお美しい方ですから」  ナタリナのうっとりした声を聞いて、エマは援護を諦めた。 (もうっ、ナタリナは僕のこと美化しすぎだよ!) 「あの、僕が女装なんて、おかしいですからっ」  エマは精いっぱいの反論をするが、そこへルシアンが口を挟んだ。 「おかしくありませんよ、エマ」
last updateLast Updated : 2025-08-11
Read more

第71話 髪色が変わる薬

    「このドレスにしましょう!」  二人の意見が一致して選ばれたのは、陽だまりのような、やわらかな色合いのドレスだった。光を受けてきらめく絹の生地は、蜂蜜色から淡い金へと色を変えながら、胸元から裾へと流れるように繊細なレースをまとっている。  胸のあたりまで隠れるデザインで、鎖骨が見える程度だろう。カミラ嬢が着ていたような、艶やかで官能的なデザインではない。露出が少ないことに安心した。 「エマヌエーレ様。コルセットが少しきついかもしれませんが、体型を保つためですので」 「う、うん……」  クロエの言うとおり、コルセットを締めると苦しかった。  女装をすると聞いて心配していた胸の部分は、コルセット自体に胸のふくらみが象られていて、そこに特殊な詰め物をすると、体型に違和感がなくなる。  布製のパニエをつけてドレスを着ると、一気に女性らしくなった。 「可愛らしいですわ、エマ様!」 「ありがとう、ナタリナ」 「次はこちらへ。エマヌエーレ様」  クロエに促されて鏡台の前に座る。台の上には、小瓶に詰められた香油や、粉白粉(こなおしろい)、薄紅、筆道具などが整然と並べられていた。  エマは初めて見るものばかりで、興味深く眺める。 「あぁ、惜しいですわ」  エマの後ろに立ったナタリナが、残念そうに呟く。 「どうしたの、ナタリナ」 「いえ。せっかくエマ様が可愛らしくなりましたのに、御髪(おぐし)の長さが残念で」 「それは仕方ないよ」  男のエマが、髪を伸ばしている方が不自然だ。  それに女性騎士は髪の短い人が多いから、ドレスを着る場面では髪飾り等で工夫していると聞く。  今回の女装も、そうすれば問題ないと思っていたが。 「あら! わたくしったら、うっかりしてましたわ」  クロエが、ポンと手を打った。  そして、エマとナタリナに向かって、ニッコリと微笑む。 「エマヌエーレ様の御髪についても、きちんと用意してありますのよ」  クロ
last updateLast Updated : 2025-08-12
Read more

第72話 見惚れるような美少女

     腰のあたりまで一気に伸びた薄紅色の髪に、唖然として目を見張る。 「す、すごい……」 「まあっ、なんとよくお似合いでしょう!」  ナタリナの感嘆する声に、目を瞬かせた。  鏡には、ふわりと柔らかく波打つ、薄紅色の長い髪が映っている。髪の色と長さが変わっただけで、まるで別人のようだ。 「髪の色、キレイ……」  ぽつりと呟くと、鏡の中の少女も、同じように口を動かす。  瞬きすれば、同様に真似をする。 (……これが、僕?)  驚きのまま鏡を凝視していると、クロエがにこやかに笑いかけた。 「エマヌエーレ様。お化粧を致します」 「あ、はいっ」  令嬢は化粧もするのだと思いだし、鏡の前で身を正した。  化粧も初めてで、クロエに化粧水や乳液を塗りこまれたり、筆でくすぐられたりして、慣れない感触に逃げ出したくなる。目を閉じておくように言われたので、エマは目をつむったまま、化粧が終わるのをひたすら待った。  ようやく化粧が終わると、最後に薄い絹のリボンが喉元に結ばれる。 「終わりました。エマヌエーレ様、どうぞご覧下さい」  クロエの声に、やっと目を開ける。  鏡を見て、また驚いた。 「えっ?」  エマの頬はうっすらと紅潮し、唇は薄く艶を帯びている。  薄桃色の髪は、耳の上から取った髪束を左右で編み込み、後ろでひとつに結い上げられていた。結び目には、ドレスと同じ蜂蜜色のリボンが結ばれ、小さな白い花の飾りが添えられている。  残る髪は肩から背にかけて流れ落ち、光を受けてやさしく輝く。  妖精のように可憐な少女が、鏡の奥から驚いた顔で見つめていた。 「なんとお美しいっ!!」  ナタリナの感激した声が聞こえる。  クロエも満足そうな顔で頷いた。 「ええ。春の女神のようです。このように素晴らしい機会を与えて頂けて、誠に光栄ですわ」  二人からの賞賛も、エマの耳を通り抜ける。 (この少女が、僕?)
last updateLast Updated : 2025-08-13
Read more

第73話 春の女神も嫉妬する

    「ぇっ?」 「エマ」  あっけにとられているうちに、ルシアンはそっとエマの左手を取り、甲に柔らかく唇を落とした。 「っ……ル、ルシアン様……!?」  息を呑んだエマに、ルシアンは真剣な眼差しを向ける。 「春の女神も、きっと嫉妬するでしょう。あなたの美しさを表す言葉が、見つからないのです」  そう賛美するルシアンの赤い瞳には、真摯な光が宿っている。冗談や戯れではないようだ。 「えっ……あ、あの……?」  うまく返せず、エマは戸惑った。  ルシアンはひとつ息をつき、声を落として囁いた。 「春の薔薇よりも可憐な貴方を、エスコートする栄誉を、どうか私にお与えください」 「……は、はいっ」  エマはコクリと頷く。  まさか、ナタリナやクロエが見ている前で、ルシアンがこんなふうに言ってくれるなんて。  胸の奥で、何かがふわりと弾けるような感覚がした。 (今までのも……全部が戯れの言葉じゃなかったのかな?)  ルシアンは色事に慣れているから、甘い言葉を本気にしないようにと、自分を戒めてきた。  でも、ルシアンは甘い眼差しで、エマを見つめている。 「ありがとうございます。エマ」 「ぁ……っ」  嬉しそうに笑う顔に、鼓動が跳ねる。  心臓がドキドキと早鐘を打って、体が熱くなってきた。 (そんな目で見つめられたら……また好きになっちゃう)  今朝は抑制剤を飲んできたのに、腰の辺りがズクンと疼き出す。蕾に入れた静香石も、クルンと回った。 「んッ……」  ビク、と震えると、ルシアンがそっと手を離した。  ゆっくりと立ち上がり、エマを見つめる。 「エマ、こちらを」  ルシアンはクロエから小さな箱を受け取り、それをエマに差し出した。  淡い桜色のリボンがかけられたジュエリーボックスは、それだけでひとつの宝飾品のようだった。艶やかな漆黒の木肌には繊細な彫刻が施され、蓋には小粒のダイヤモンドが星の
last updateLast Updated : 2025-08-14
Read more

第74話 伯爵の恋人

 それ以外の男性からの贈り物は、丁重に辞退するのがむしろ礼儀だと教えられたはずだった。 「でも、ナタリナ。それは……」  エマが口を開きかけたその時、ナタリナがやんわりと遮った。 「本日、エマ様はデイモンド伯爵の恋人として同行されるのでしょう? でしたら、何も問題はありませんわ」  そう言って、にこりと笑う。  言葉はやさしいが、否を許さぬ強さが滲んでいた。 「え? 恋人っ?」  突拍子もない言葉に、エマは目をぱちぱちさせる。  すると、ルシアンがすかさず口を挟んだ。 「エマ。今日の視察は、帝国からやってきた恋人と共に王都を見て回るという筋書きにしてあります」  落ち着いた声で、まるで当たり前のことのように告げられる。 「レディーを同伴するには、恋人の立場がいちばん自然です」 「そう、ですね……」 「ええ。レディーは、必ず宝石を身につけるものです。お芝居とはいえ、貴方は私の恋人になるのですから、贈り物をするのは当然のことです」  ルシアンに、恋人と呼ばれて、エマはドキドキしてきた。 (恋人だから……断ったらダメってことだよね?)  ナタリナの言葉を思い出し、エマの鼓動が早くなる。  例えお芝居でも、ルシアンの恋人役だから、贈り物を受け取らなくてはいけない。  そう諭されて、エマの心が揺れた。 「エマ。貴方を想いながら、いちばん似合うものを、私なりに選びました」  ルシアンの甘い言葉に、ドクン、と鼓動が跳ねた。 (ルシアン様が、選んでくださったなんて)  お世辞かと思ったが、ルシアンの優しい笑顔はきっと本心だろう。  エマは不相応だと知りながらも、とうとう頷いた。 「わ、分かりましたっ……」  その言葉に、ルシアンはほっと息をつき、ナタリナは嬉しそうに頷いた。  クロエも温かな眼差しでエマを見つめている。 (……本当に、いいのかな)  胸の奥でまだ少し迷いはあった。けど、宝石箱の中で輝くピンクサファイアを見ると、胸が高鳴る。  エマが前を向くと、ルシアンがネックレスを手に取り、そっと首にかける。  ひやりとした鎖が、うなじに落ちた瞬間、思わず息を止めてしまった。 「動かないで下さい。すぐに済みますから」  落ち着いた手つきで留め具を留める
last updateLast Updated : 2025-08-15
Read more

第75話 胸の悪戯

    ルシアンが用意した馬車は、天耀宮(てんようきゅう)専属の立派な馬車だった。 この天耀宮に滞在するのは、皇族や王族ばかりなので、見た目も馬車の内装も豪華だ。座り心地の良い座席に、小窓とカーテンが付いていて、外の景色を眺められるようになっていた。 エマはやや緊張しながら、馬車に乗り込んだ。 慣れないドレスに、かかとの高い靴なので、ゆっくりしか歩けない。座るときも、ドレスの裾を気にして腰掛ける。女装するのは初めてなので、戸惑うことばかりだ。 常にルシアンが側でエスコートしてくれたので、ぎこちないながらも、貴族令嬢らしく振る舞うことができた。「ルシアン様。ありがとうございます」「恋人として、当然のことをしているだけです。礼には及びません」 馬車の中で礼を言うと、ルシアンが優しく微笑む。 だけど、向かい合わせではなく、隣にぴったりとくっついて座っている。(こ、恋人だと、この座り方が普通なのかなっ?)「あの、ルシアン様」「何ですか?」「行き先は……王立美術館でよろしいのですか?」「もちろんです。ようやく、貴方に案内して頂けますね」 ルシアンが嬉しそうな声で答える。 今までに何度か機会はあったが、エマが体調を崩したせいで叶わなかったのだ。 エマも、ルシアンを案内できることが嬉しかった。 馬車の中は二人きりで、仮とは言え、恋人役である。 こんなに距離が近いと、ドキドキしてしまう。「エマ。大丈夫ですか?」 ルシアンが腰に手を回して覗き込んでくる。 顔の近さに、思わずのけぞった。「だ、大丈夫ですっ!」「ドレスは、きつくありませんか?」「はい……コルセットは初めてなので、まだ慣れませんが」 体を細く見せるために、女性はみな努力をしているのだ。 エマも、ルシアンの恋人としてここにいるのだから、弱音は吐けない。「ルシ
last updateLast Updated : 2026-01-01
Read more

第76話 恋人の距離

    貴族令嬢に必須の持ち物だが、ルシアンに渡されるまで、思いつきもしなかった。 「お借りしてもよろしいのですか?」 「貸すのではありません。貴方に差し上げる物です」 「えっ、でも、こんな高価なものまで……」 「レディーは、喜んで受け取るものですよ」  ルシアンが優しく微笑む。  エマは、おそるおそる両手で受け取り、そっと開いてみた。  布地は白地に金糸で花が刺繍され、まるで花びらを閉じたまま抱えたように気品がある。 「うわぁっ、素敵な扇子ですね」  気をつけて扱わないと、すぐに壊れてしまいそうな繊細さだ。 「気に入ったようで良かったです。これは、顔を隠したい時や、侍女と話す時に使って下さい。手が塞がるときは、侍女に持たせるといいですよ」  ルシアンが、扇子の使い方まで教えてくれる。  エマは頬を紅く染め、扇子をぎゅっと握りしめた。 「ありがとうございます。ルシアン様」 (ルシアン様から、たくさん頂いてしまった)  変装のためとはいえ、ここまでエマによくしてくれるなんて、感謝しかない。 「エマ」 「はい」  ルシアンに呼ばれて、顔を上げた。  赤い瞳が柔らかく細められ、微笑みを浮かべている。 「貴方とこうして出かけられることに、感謝します」 「そんなっ! 私の方こそ、こんなによくして頂いてっ!」  本当なら、接待役のエマが、ルシアンに気を遣わないといけないのだ。  だけどルシアンは、エマの事情を汲んで、こうして手間を掛けて王都へ連れ出してくれる。 「私のために手を貸してくださって、ありがとうございます」  エマは心から、ルシアンに感謝を伝えた。  ルシアンが手を伸ばして、エマの髪をなでる。 「……エマ」 「はい」  ルシアンが手を伸ばして、エマを抱きしめた。 「ぇ……る、ルシアン様!?」 「貴方が美しすぎて、動悸がします」 「えっ?」 「到着するまで、このま
last updateLast Updated : 2026-01-01
Read more

第77話 帝国の高貴な令嬢

    胸元に王立美術館の徽章をつけた彼は、三十代半ばほどの男性だ。穏やかな雰囲気で、笑みを浮かべている。 「帝国よりの貴賓、デイモンド伯爵にお目にかかれて光栄です」  文官は丁寧に一礼したのち、ルシアンの隣に控えるエマを見て、驚きに目を見張った。 (ぇ……もしかして、気付かれた!?)  エマはとっさに扇子で顔を隠した。  身を強ばらせて、ルシアンの腕に身を寄せる。 (どうしようっ……女装してるって思われたのかも)  怯えるエマの前で、文官が上ずった声で問いかける。 「は、伯爵っ。こちらのご令嬢は?」 「私の婚約者だ」 (えっ!?)  エマは思わずルシアンを見あげた。  ルシアンは唇に笑みを浮かべて、エマを振り向く。 「ぁッ……」 「帝国で最も高貴な御方に縁(ゆかり)のあるご令嬢だ。彼女の美しさに見惚れるのは仕方ないが、くれぐれも失礼のないように」 (えぇっ!?)  エマが戸惑っていると、文官はピシッと姿勢を正す。 「はっ! かしこまりました!」  文官はエマに向かって、最敬礼する。 (こ、婚約者って……それより、帝国の高貴な方ってどういうこと?)  エマは扇子を傾けたまま、ルシアンを見つめる。 「レディー。何も心配はいりませんよ」  ルシアンは甘い声と眼差しで、エマに微笑む。  まるで、そこにいる文官に見せつけるように、エマの耳元で囁いた。 「正体を隠すためですから、許してください」 「ルシアン様……」  エマは変装だけでなく、実際に会う相手にも、気付かれないようにしなくてはいけない。 (僕が『聖樹』だって……王子の婚約者だって気付かれたら、大変なことになるから)  エマのために演技をしてくれる、ルシアンの気遣いが嬉しかった。  でも、それにしては、エマを褒めすぎだと思うけど。 「あの……そんなに褒めなくても、大丈夫ですからっ」  小声で囁くと、ルシアンは不思議そうに首をかしげ
last updateLast Updated : 2026-01-02
Read more

第78話 ルシアン様の香り

    端麗な容姿と幻想的な髪色が、ルシアンの麗しい雰囲気に似ていた。  ルシアンは目を細めて、エマに囁く。 「それなら、隣にいる恋人のオメガは、貴方ですね」 「えっ?」 「いつか、この絵のように、愛する人を番(つがい)にできたらと願います」  ルシアンの眼差しが、ひたすら甘く注がれる。  エマはカァッと頬を赤くして、目をそらした。 (ルシアン様が、僕を……?)  喜びに胸が高鳴るが、エマの理性はすぐにそれを打ち消した。  自分の立場を考えれば、ルシアンと結ばれるはずがない。 (僕は、王子の婚約者なんだから……)  たとえ半年後にその立場を失うとしても。  帝国の貴族であるルシアンとは、彼が帰国するまでの付き合いだ。 「……っ、ルシアン様なら、きっと、素敵な番を見つけられると思います」  エマは視線を逸らしたまま、小さく答えた。  そんなこと、望んでもいないのに。 「エマは優しいのですね」  ルシアンが囁く声が低くなる。  気がつくと、背後からそっと抱き寄せられていた。 「ぇ……ルシアン様?」 「エマ……貴方ほど魅力的なオメガは、他にいませんよ」  耳元で囁かれ、ぞくりと躰が震える。  ルシアンの指先がコルセット越しにくびれをなぞり、腰のあたりが熱くなる。 (ぁっ、香りが……刺激的で……んっ、しびれそう……ッ)  ルシアンのフェロモンが、エマの躰を包み、欲を煽ってきた。  蕾がひくついて、静香石をきゅっと締めつける。 「んぁっ……ぁっ」 「貴賓室で休めますから、もう少し我慢してください」 「っ、はい……」  エマはルシアンの声に頷き、腰を支えられながら、ゆっくり歩き出した。         貴賓室は、回廊を抜けた先の奥まった場所にあった。  一休みするには十分な広さで、壁には有名な絵画が飾られている。  窓際
last updateLast Updated : 2026-01-02
Read more

第79話 ドレスの中

   「痛くありませんか?」 問いかけるルシアンの声は、穏やかだ。 だが、見上げてくる瞳の奥に、熱が宿っている。 ルビーのような赤い色が、獲物を狙うように細められた。興奮を滲ませた表情に、心臓がドクンドクンと鼓動を打つ。「やっ……んんっ、だめっ……!」 胸の奥から湧きあがる熱に、思わず声が漏れる。 恋い慕うアルファの視線だけで、躰が火照っていく。(ぁぁっ、どうしようっ……勃っちゃうッ) エマの昂ぶりが、むくりと頭をもたげる。 蕾の奥、埋め込まれた静香石が熱に反応し、クルンと回り始めた。「ひゃぁぁっ、ぁん、……ゃぁっ」「エマ……また、静香石が動いているのですね?」 囁く声が、熱を帯びて耳に触れた。「んっ……は、はい……ルシアンさまの、その手が……っ」 言葉の端が、甘く震える。 まともに答えられないほど、もう躰は敏感に反応していた。「私の……これ、ですね?」 くすりと微笑むルシアンの指が、もう一度、エマの足に触れる。 布越しに、包みこむように優しく揉み上げながら、撫でる手がじわじわと上に向かっていく。(ぁっ、ドレスの中に……!?) 驚きと期待に、どうしようもなく興奮する。 ルシアンの指は、ドレスの裾を押し上げるようにして、膝の内側へ辿り着いた。「ふぁ……や、ぁっ……」 両脚の太ももを、交互になぞるように触れてくる。そのたびに、ゾクゾクと震えが走った。「んぁぁっ、だ、ダメですっ!」「手当をしているだけです。こうして揉んでおくと、後で楽になりますから」「ン
last updateLast Updated : 2026-01-03
Read more
PREV
1
...
456789
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status