「アンナ王女のことを信用していないわけではないけれど、念のため鍵はかけてもいいかな?」途中から侵入者が来ないよう内側から鍵をかけた。カチャリ、と重い音が部屋に響く。アンナ王女は、私と部屋に二人きりという状況に頬をほんのりと赤く染めている。「それで聞きたいことって……。何か困ったことでもあったのかな?」私が問いかけると、照れてオドオドしていたアンナ王女は我に返ったように顔を引き締めた。そして次の瞬間、勢いよく近付いてきた。彼女は、私の手を思いっきり両手で握り締め、そのまま自身の胸元へと持っていく。「ア、アンナ王女?」アンナ王女の表情がコロコロと変わる様と、その大胆な行動に驚きを隠せずにいた。握られた手はアンナ王女の鎖骨に触れており、彼女の熱い息が首筋に吹きかかる。顔がどんどん近付いてくる。見つめ合う瞳の先に、二人の唇は、わずか10センチほどの距離しかないかもしれない。アンナ王女のヘーゼルナッツのような薄茶色の綺麗な瞳が揺らいでいる。 王女の大胆さと突然の勢いに圧倒され、思わず後ずさりした。その時、足元がおぼつかなくなり、王女のネグリジェの裾を踏んでしまう。バランスを崩した私たちは、そのままふわりと柔らかいベッドへと倒れこんだ。「ル……ルシアン様……」「ア
Huling Na-update : 2025-07-13 Magbasa pa